画像切り抜き作業 2022

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AIという言葉は何にでも使われていて、とりあえず「AIを活用した」とか言っておけばOKみたいな状況については思う所があるんですが、そうゆう愚痴を書こうとしているわけじゃないです。ここ数年で一番AIの恩恵を感じているのはあれですね、画像を切り取る時のAIですね。この場合のAIはマジAIで、そこんじょそこらの「これただのif/elseスクリプトじゃね?」的なインチキAIじゃなくて、英語でObjective Awarenessっていうんですけど、これの進化が素晴らしい。

「あーこれ人物やろ、わかるわ。そんでこっからここまでが髪の毛で、後ろの似た色は、ただの壁やろ。」

ってな具合にソフトがオブジェクトを認識してくれて、ピクセル単位でよしなに処理してくれるというAI。僕もそうだけど、全世界の画像切り取り職人の処理速度が爆上げされた事は間違いないと思います。

今年寅年じゃないですか。

ちょうど12年前、仲良かったデザイン会社の事務所にお邪魔してダラダラしてた時、社員の人がパソコンのディスプレイを睨めつけるように凝視してカチカチカチカチやってたんですよ。ちょっとその画面ガン見っぷりが超ヤベえ人みたいだったので、気になって、何してるのか覗いてみたんですよ。

で、何やってたかっていうと、トラの写真の切り抜きをしてたんですね。で、そのモデルのトラさんが赤ちゃんトラさんで、毛がふわっふわで、可愛いんですよ。可愛いんですけど、毛がふわっふわなので、ペンツール🖌っていうトラディッショナルなツールを使って、カチカチカチカチとトラさんの毛の輪郭をなぞるっていう作業をやっていた、と。デパートの正月セールに使うらしいんですけど、外壁に貼るデカめなポスターなんかにも使われちゃったりするんで、ちょっとでも不自然な切り抜きがあるとクレーム必須みたいな、そうゆう作業だったみたいです。

で、人間の髪の毛とかでも同じような事が起こったりするので大変です。すっげー時間かかるので、世界のフォトショ職人達はクリエイティブな作業にリソースを割けず、替わりにカチカチカチカチとAPM向上訓練を日々行っていた訳です。おれは、こんな事がやりたくてグラフィックデザイナーになったんじゃねーーー。

当時から「自動選択」という機能はあったのですが、その「自動」のレベルが「同じっぽい色が同じっぽい座標で並んでれば選択」くらいのレベルで、精密なクオリティを求められるものは、結局人間様が手動でカチカチカチカチやらなくてはいけなかったのです。

ちなみに今でもピクセル単位での精密さが求められる切り抜き現場では、ペンツールが使われていると思われます。僕もピンポイントに「ここだけどうしても」っていう所は手作業でやってますが、ほぼ9割はAIに任せます。そんでそのAIの仕事が気に入らない時はcmd+Zで作業を戻らせ、もう一度やらせます。残酷ですね。

で、そのAIを活用した画像切り抜き作業とやらが、ぼく割と好きなんですよ。これやった事ある人にしか伝わらないかもしれないのですが、この作業って、「AIとの対話を試みてる感」があるんですよね。

「ここだよ、ここがダメなの。もう一回やって」
「じゃなくて、もうちょっとふわっと、この辺を」
「さっきより良くなった、まだこの辺が甘い、もう一回。」

ペンタブを使って「この辺」とこつこつ何度も命令して、徐々にアウトプットを最適化していくみたいな。これにはコツがあるっぽくて、毎日やってるとAIのツボみたいなのがわかってきます。カリスマインストラクターです。「ここを褒めればこの人は伸びる!オレ知ってる!」みたいな。そんで作業が早くなるんですが、ソフト自体に日進月歩なアップデートがあるので、極めてもあまり将来性はないと思われます。

僕、Affinity Photoっていうソフトを使っているんですけど、このObjective Awarenessに関してはフォトショップに勝ってますね。やや、たぶん正確さという点ではそんなに変わらないと思うし、多機能さという事ではフォトショに軍配が上がりますが、なによりAffinity Photoの方が圧倒的に軽いんですよね。その軽さを利用する事で、AIとの対話施行/毎分が上がるので、結局いいものが出来ると。

yasai.jpg

で、なんとなく野菜を切り取ってみたのが↑となります。1分で切り取れます。

でも分かる人にはバレちゃうんですが、↑の野菜の光の当たり方が不自然なんですよね。キャベツには右上から光が差し込んでるのに、隣のアーティチョークみたいな野菜には右下から当たってる、みたいな。適当に配置してるとこうなります。

なんでこんな風にしちゃったかっていう話なんですが、「画像切り抜き2022」ですが、今の所やっぱり最後は人間がちゃんとしなくちゃダメですって事が言いたかったんです。今の所。
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