不動産の広告で「※告知事項あり」と小さく書いてあるのを見たことはありませんか?
これは、その物件に
・事故があった
・法律的な問題がある
・周辺環境にマイナス要素がある
など、「きちんと伝えておかないとトラブルになりかねない事情」があるというサインです。
ここでは、とくに多くの方が気にされる
・心理的瑕疵(いわゆる事故物件)
・告知義務はどこまで必要か
・「瑕疵物件(訳あり物件)」の種類
・買う側・借りる側として気をつけたいポイント
を、できるだけ分かりやすく解説します。
1. 心理的瑕疵(しんりてきかし)とは?
まず、「瑕疵(かし)」という言葉は「その物件が本来あるべき状態からの欠陥・マイナス要素」という意味です。
● 心理的瑕疵=“気持ち悪い”事情がある状態
心理的瑕疵とは、
住む・使ううえで物理的な問題はないけれど、多くの人が“気持ち悪い・嫌だ”と感じる事情がある物件
のことを指します。代表的なのは、いわゆる「事故物件」です。
・室内での自殺
・殺人事件
・不審死、変死
・長期間放置された孤独死(腐乱・特殊清掃が必要なレベル など)
こういった出来事があった部屋・建物は、性能的には普通に住めたとしても「知っていたら借りなかった・買わなかった」という人が多いので、心理的瑕疵あり=告知事項ありの物件として扱われます。
2. 告知義務とは?どこまで伝えないとダメ?
● 告知義務の基本
心理的瑕疵がある物件を
・貸すとき(賃貸)
・売るとき(売買)
には、貸主・売主・仲介業者には「告知義務」があります。具体的には、
・重要事項説明書に「事故があった」などの内容を記載して説明する
・売買契約書・賃貸借契約書に条項として盛り込む
など、「あとから言った・言わない」のトラブルにならないよう、書面で説明するのが原則です。これを故意に隠すと、
・契約解除
・損害賠償請求(慰謝料・引っ越し費用など)
の対象になる可能性があります。
3. どこまでが心理的瑕疵?告知が必要なケース・不要なケース
実は、「ここからここまでが心理的瑕疵」と法律で細かく決まっているわけではありません。そのため、過去の裁判例や、国土交通省のガイドラインを参考にしながら判断します。
● 告知が必要と考えられるケース
一般的に、次のようなケースには告知義務があるとされています。
・室内での自殺・他殺
・室内での事故死・不審死・変死
・長期間発見されなかった孤独死(腐乱・特殊清掃が必要など)
・火災・事件などで、部屋に強いイメージダウン要因が残る場合
ポイントは、
「聞いたら多くの人が“住みたくない”と感じるかどうか」
という点です。
● 告知義務がないとされることが多いケース
一方で、次のようなケースは、原則として告知義務はないとされています。
・室内で体調を崩して、その後病院で死亡した
・老衰や病気による自然死(すぐ発見され、腐敗などがない)
・勤務中の事故での死亡
・マンション屋上や外階段からの飛び降り自殺(部屋の中でない場合)
ただし「自然死」であっても、
・長期間発見されず腐敗していた
・特殊清掃が必要なレベル
・匂いやシミが残り大規模リフォームが必要になった
といった場合は、心理的瑕疵として告知が必要と考えた方が安全です。
4. 告知は「いつまで」必要なのか?
● 賃貸の場合:原則「3年間」が目安
国土交通省が公表した「人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年) では、
賃貸物件の心理的瑕疵は、発生から概ね「3年」が告知の目安
とされています。ただしこれはあくまで目安であり、内容やインパクトによって個別判断される場合もあります。
● 売買の場合:期間に関係なく告知が必要なケースが多い
売買契約の場合は、賃貸よりも金額が大きく、一度買ってしまうと簡単に住み替えができません。そのため裁判例では、
20年前に自殺があった物件でも、告知義務違反が認められ、慰謝料支払いが命じられたケース
などがあり、売買の告知についてはかなり厳しめです。「時間が経ったからもう言わなくていい」とは限らないのが現状です。
● 建物を壊して更地にしても、心理的瑕疵はゼロにならない
よくある勘違いが、
建物を解体して更地にすれば、事故物件じゃなくなるのでは?
というものです。
しかし、裁判例では「建物を壊して土地だけになっても、心理的瑕疵は残る」と判断されたケースがあります。
以前その土地に建っていた建物で事件・事故があった
近隣住民が皆それを知っている
こういった場合、買主が知らずに購入すると、後で近所の人から聞いてトラブルになるリスクが高いため、売主側にはやはり説明義務があると考えるべきです。
5. 心理的瑕疵があると、どれくらい価格に影響する?
心理的瑕疵がある物件は、普通の物件に比べて、どうしても借り手・買い手が見つかりにくくなります。そこで現実的には、
・賃貸なら「家賃を下げる」
・売買なら「相場より安く売りに出す」
という調整をすることが多いです。どれくらい下げるかは、
・事故・事件の内容(自殺か、他殺か、孤独死か など)
・発生からの経過年数
・特殊清掃やリフォームの有無
・周辺にどれくらい情報が知れ渡っているか
などによって大きく変わります。一律に「○%下げればOK」とは言い切れませんが、売却・賃貸を成功させるには、
「告知したうえで、納得して選んでもらえる価格設定」
が現実的な落としどころになります。
6. そもそも「瑕疵物件(訳あり物件)」には4種類ある
「告知事項あり=全部事故物件」というイメージを持たれがちですが、実際には、「瑕疵物件(訳あり物件)」には大きく4種類 あります。
① 物理的瑕疵物件
建物や土地そのものに欠陥があるケースです。
・雨漏り・配管の故障・シロアリ被害
・耐震不足・構造上の欠陥
・地盤沈下・土壌汚染・地中埋設物
・床下浸水などの災害による損傷
などが典型例です。これは専門家の調査をすれば比較的把握しやすい瑕疵です。
② 法的瑕疵(法律的瑕疵)物件
法律上のルールに反している・問題を抱えている物件です。
・接道義務を満たしておらず「再建築不可」
・建ぺい率・容積率オーバー
・消防設備・防火設備などが基準を満たしていない
・本来建ててはいけない「市街化調整区域」に建っている など
昔に建てられた古家などで見つかることが多く、建て替えや増改築ができない、銀行融資がつきにくい、といった問題につながります。
③ 心理的瑕疵物件(事故物件)
先ほど説明したとおり、事故・事件・自殺・長期の孤独死などがあった物件です。
・実害はないが、人によって強い嫌悪感や不安を感じる
・告知の仕方を誤ると、大きなトラブルになりやすい
という特徴があります。
④ 環境的瑕疵物件
周辺環境が理由で、住んでみると不快・不便を感じるケースです。
・近所に火葬場・葬儀場・墓地・風俗店・工場などがある
・鉄道・高速道路が近く騒音や振動が大きい
・工場などからの悪臭・煙
・近隣トラブル・ゴミ屋敷など
必ずしも「違法」ではないものの、住む人の快適さを損なう要因なので、これも告知事項になる場合があります。
7. 瑕疵と「告知義務」「契約不適合責任」
● 告知義務(宅地建物取引業法上の義務)
宅建業者(不動産会社)には、売買・賃貸の相手に対して
その物件に重要な瑕疵がある場合、事前に説明する義務
があります。広告や重要事項説明書、契約書などに
「告知事項あり」
「過去に事故履歴あり」
と記載し、その内容をきちんと説明しなければなりません。知っていながら隠した場合は業法違反となり、行政処分や賠償問題に発展する可能性があります。
● 契約不適合責任(民法)
2020年4月の民法改正で、従来の「瑕疵担保責任」は廃止され、代わりに
「契約の内容に適合しない場合の売主の責任」= 契約不適合責任
が導入されました。ポイントは、隠れた瑕疵かどうかに限らず、契約で約束した内容と違う状態なら、買主は
・修補(直すこと)の請求
・代金減額請求
・損害賠償
・解除
などを求めることができる、という点です。ただし、契約不適合に気付いてから1年以内に通知しなければならない というルールもあります。
8. 買う側・借りる側ができる自衛策
心理的瑕疵・告知事項について、トラブルを避けるために、エンドユーザーとしてできることをまとめます。
● ① 不安なら最初から「告知事項ありはNG」と伝える
賃貸・売買いずれも、
「事故物件や告知事項ありの物件は紹介しないでほしい」
と、不動産会社にあらかじめ伝えておくと、そもそも候補から外してもらえます。時間の無駄な内見を減らすことにもつながります。
● ② 逆に「事情があれば教えてほしい」というスタンスもあり
一方で、
・条件が良ければ心理的瑕疵でも検討したい
・どんな事情があったのか聞いたうえで判断したい
という方は、
「告知事項がある場合は、必ず内容を教えてください」
と、必ず口頭+メールなどで確認しておくと安心です。
● ③ 不安な場合は「事故物件サイト」なども参考に
インターネット上には、過去の事故物件情報を集めたサイトもあります。すべてが正確とは限りませんが、どうしても気になる場合は、参考情報として調べるのも一つの方法です。
● ④ 孤独死リスクのある賃貸オーナーは「予防」が大事
オーナー側の立場であれば、
・高齢者の入居者と定期的に連絡をとる
・緊急連絡先の家族と密に連携する
・見守りサービス・見守りセンサーの導入を検討する
など、「孤独死の長期放置」を防ぐ工夫がとても重要です。亡くなること自体は避けられないとしても、早期発見ができれば、心理的瑕疵扱いにならずに済む可能性が高くなります。
まとめ
「告知事項」とは、その物件にとってマイナスになる事情で、契約の前に説明しなければならない内容のこと。
とくに「心理的瑕疵(事故物件)」は、自殺・他殺・不審死・長期放置の孤独死などが代表例。
賃貸の告知は原則「3年」が目安だが、売買では経過年数に関係なく告知義務が認められる裁判例も多い。
建物を壊して更地にしても、心理的瑕疵が消えるわけではない。
「瑕疵物件」には物理的・法的・心理的・環境的の4種類がある。
2020年以降は「契約不適合責任」により、売主の責任範囲は広くなっている。
借りる側・買う側は、「告知事項ありはNG」あるいは「事情があれば必ず教えてほしい」と事前に伝えることで、トラブルを減らせる。
ではまた。