先日、「職場の人たちが気軽に話せるミーティングをやりたい」ということでご相談をいただきました。相談者からは、職場でのコミュニケーションに問題を感じていて、もっと何でも話せる場をつくる必要があるのではないか、でもどのように進めたらよいのか、やったことがないので分からない、とのことでした
仕事の個業化が進んで、周囲とのコミュニケーションが最小限になっている、あるいは全く取らなくなってしまっている、ということは多くの職場で抱えている問題ではないかと思います。コロナ禍で一気にオンライン化が進んだ今日では、なおさらではないでしょうか。
今回ご相談いただいたケースはオンラインではなく日々出勤しているリアル職場での話で、コミュニケーションが疎であることが会社全体の活気が上がらない、活き活きとした仕事につながっていない、ということのようです。日々顔は合わせているけれどコミュニケーションが疎であるのは、捉えようによってはオンライン化によって起こる疎よりも深刻なのではないか?と思いました。人と人が同じ空間にいるだけに…。
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さて、「職場の人たちが気軽に話せるミーティング」について、相談者の話を伺いながら、こんな場にできるといいですね、といった助言をさせていただきました。
まずは、話したこと・声を上げたことについて否定されない場であること。そのような場であることが保障されることで、「ここでは思ったことを言っても大丈夫なんだ、それなら思い切って言ってみよう」というノーム(規範)が生まれます。具体的な行動としては、人が話している間は途中で割り込んだりせず最後まで聴くことに徹することです。「この場では、聴いてもらえる。」という実感を皆が得られることが大切です。
相談者から「愚痴大会になってしまうのはまずい。それは押さえたい」という要望もありました。しかし、発言を押さえてしまうと、「言ってはいけない」ノームが出来てしまいます。一度そのノームが立ち上がってしまうと、その場での修正は非常に難しくなります。ですので、私からは、「愚痴もいいと思います。思い切って言ってくれた人に対して、そうなんだね、そんなことがあるんだね、とまずは皆で受け止めることが大事です。受け止めた上で、もしその場の主題(例えば、“最近、仕事をしている中で気になったこと”など)から外れていきそうな内容であれば、例えば、ホワイトボードの脇に“駐車場”というスペースを設けて記しておくとか、そのように扱ってみませんか。」と提案しました。もし愚痴大会が盛り上がってしまうようなら、「みんな、言いたいことがだいぶ溜まってるようだから、今から10分は出し切る時間にしようか。」という仕切り方もありです。
つい、場に対する怖れの気持ちから「コントロール(統制)」をしたくなってしまうものですが、すべきは場の「ファシリテート(やりやすくすること)」です。思ったことを誰もが言えるくらい場があたたまってくると、次第に、自然発生的に、双方向のやりとりが始まるものです。ファシリテーターはそのようなことが起こるように場を保持または促進し、時が来るのを信じて待つ忍耐強さをも発揮するのです。
相談者からは、上役が場を仕切るよりは、できるだけ職場のメンバーにその場を任せたい、と要望がありました。それが実現すれば参加者の自発的な発言が促進される場となる可能性が高まり素晴らしいことですので、そのような場づくりの助けになるように、「グラウンド・ルール」を予め設定しておくのが望ましいことを伝えました。「グラウンド・ルール」はその場で皆が大事にするお作法です。例えば、以下のようなものです。
・気軽に、自由な発想で、お互いが思ったことを出せる場にしましょう。
・誰かが話しているときは静かに最後まで聴きましょう。
・相手が話したことについて、まずは一呼吸おいて受け止めましょう。
・反射的感情的に相手を否定したり非難することは控えましょう。
・限られた時間を大切に。皆が話せるように譲り合いの気持ちを持ちましょう。
・この場で話されることは、この場だけの話として守秘を徹底しましょう。
・ミーティングの間は、スマホは留守録対応にしましょう。
このような「グラウンド・ルール」を場の目的に応じて主催者が用意し、会の始めに参加者に趣旨説明し同意をしてもらいます。「みんなが気軽に話せるミーティングはみんなで進めてもらいたいと思っています。誰か進行役をやってくれる人はいますか。」という問いかけも、同じく参加者の同意をとりながら丁寧にやるとよいと思います。無理矢理、誰かに進行役を押し付けるような形は自発的な場が損なわれますので避けるべきです。仮に、参加者の選択の結果として上司が進行役をやることに落ち着いたとしても、参加者の同意がとれているのでグラウンド・ルールに従って進めれば問題はありません。
お互いを尊重する「グラウンド・ルール」に則った場を過ごした経験、丁寧な合意形成の経験は、必ず普段のコミュニケーション向上にも効果を発揮します。これまで知らず知らずのうちにやっていたミスコミュニケーションに違和感を感じて気づく「感受性」が「職場の人たちが気軽に話せるミーティング」経験を通じて育まれ、身に付くのです。
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今回お受けした相談は、上司の中の上司である役員の方からでした。何より、社員が活き活きと働いてほしいと願う気持ちで行動を起こすことが、役員クラスの方からであることが心強いと思いました。何故かというと、「職場の人たちが気軽に話せるミーティング」というはたらきかけを通じて、社員1人ひとりがどのような思い、言いたいことを抱えているのかを知ることにより、ご自身が役員として何をしていないのか、何をしなければならないか、という問いにいずれ向き合うことになるからです。
その問いに向き合った時に、もっと奥深い、真の課題に近づくことができるはずです。自らきっかけとなる行動(今回は職場のミーティング)を起こし、そこで起こったことから気づきを得、真の課題解決に向けた次の行動につなげ、さらに学習を深める、といった持続的な成長サイクルが生まれ、会社全体にそれが伝播するように、私も微力ながらこれまでの実践を活かしてお手伝いしたいと思います。
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今回は、職場のコミュニケーション向上に欠かせないこと、についてお話しました。私は会社勤めとの複業でライフキャリアデザインカウンセラーとして個人や世帯の職業生活設計や資産設計のお手伝いを志しております。保持資格としては国家資格キャリアコンサルタントとAFP(日本FP協会会員)をコアスキルとして、これまでの会社生活や人生経験で学んできたことを活かして会社内や地域社会に向けた価値創造につなげてまいります。ご関心を持っていただいた方、ご相談事がある方は、どうぞお声がけください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。