人と一緒にいるとき、つい「いい人」を演じてしまうことはありませんか。
相手が求めているであろう言葉を選び、場を和ませるために笑い、自分の繊細な心にふたをして平気なフリをする。
そうやって過ごしたあと、ふとした瞬間に鏡の中の自分を見たり、静かな部屋に一人でいたりすると、「あれ、今の私ってどこにいるんだろう」と、自分自身が透明になって消えてしまいそうな感覚に襲われることがあるかもしれません。
まるで、何層にも塗り重ねた「仮面」の下にあるはずの素顔が、誰にも見られなかったせいで薄くなってしまったような、そんな心細さです。
心理カウンセラーとして、そうした感覚を抱える方々の心に触れてきました。
「自分を殺してまで、周りに合わせようとしてしまう」という悩みは、決してあなたが弱いからではなく、あなたの優しさと感受性が強すぎるからこそ起きることなのです。
周りの空気の変化に敏感に気づけるあなたは、きっと誰よりも繊細で、思慮深い人です。
だからこそ、周囲の感情を波立たせないようにと、自分自身の輪郭を少しずつ削って、相手のスペースに馴染ませようとしてきたのでしょう。
でもね、どうか忘れないでほしいのです。
あなたが誰かのために見せているその優しい笑顔は、決して「偽物」ではありません。
ただ、あなたの心のキャパシティに対して、少しだけ「外側への配慮」が多すぎただけかもしれません。
透明感を感じて怖いと思うのは、それだけあなたが「ありのままの自分」として生きたいと、心の底で叫んでいる証拠です。
自分のことが分からなくなるのは、これまで自分の本音を後回しにして、他人の感情を優先させるという「訓練」を一生懸命続けてきた証でもあります。
もし「自分が行方不明だな」と感じたら、まずは「今、何を感じているか」を小さな言葉にして、自分にだけ教えてあげてください。
「今の言葉、少しだけチクッとしたな」とか「本当はもう少しゆっくりしたかったな」とか、そんなささやかな本音で大丈夫です。
その声を自分自身が拾い上げて、「そうだよね、そう感じたんだね」と認めてあげるだけで、透明になりかけていた輪郭が、少しずつ自分の中に戻ってきます。
あなたは、誰かのために存在する道具ではありません。
そこには、あなただけの柔らかくて、温かくて、とても尊い感情が存在しています。
たとえ、誰かの前で完璧に笑えなくても大丈夫です。
たまには、「今日は少し疲れているんだ」と小さく深呼吸をして、自分の内側にある優しい色を、あなた自身が大切にしてあげてください。
あなたがあなたであることを諦めないで。
ほんの少しの勇気で、失くしかけた自分は、いつだって必ず見つかるはずですよ。