ふと街中で流れたメロディに、思わず足が止まってしまうことってありませんか?
それは何年も前に流行ったポップスだったり、学生時代に擦り切れるほど聴いたアルバムの1曲だったり。
そんな懐かしい音楽が耳に飛び込んできた瞬間、私たちの心の中には、まるでお天気カメラが過去を映し出すかのような不思議な現象が起こります。
ただ「懐かしいな」と思い出すだけではないんですよね。
あの時に肌で感じていた夕暮れの肌寒い空気の温度や、西日が差し込む自分の部屋のちょっと埃っぽい匂い、あるいは当時の恋人がつけていた香水の香りまでが、まるで今そこに広まっているかのように、セットで鮮やかに蘇ってくるのです。
人間の記憶って、本当に愛おしくて不思議な仕組みをしています。
実は、脳の中で音を感じる部分と、記憶や感情、そして匂いを感じる部分は、とても近い場所で手をつなぎ合っています。
だからこそ、音楽というスイッチが押された瞬間に、引き出しの奥に眠っていた「あの頃の空気感」までが、いっぺんに溢れ出してしまうわけです。
僕は、こうした現象は心にとって、とても温かい「ご褒美」のようなものだと思っています。
毎日を一生懸命に生きていると、どうしても目の前の忙しさや、人間関係のモヤモヤに心が引っ張られてしまいがちですよね。
なんだか心がトゲトゲしてしまったり、自分がすり減ってしまったりすることもあるはずです。
そんなとき、懐かしい音楽が連れてきてくれる「過去の空気や匂い」は、当時のピュアだった自分や、誰かを一途に想っていた優しい気持ちを、そっと思い出させてくれます。
「ああ、あの頃の僕も、色々なことに悩みながら一生懸命生きていたな」
そうやって過去の空気感に浸ることは、決して後ろ向きなことではありません。
むしろ、今のあなたを優しく包み込み、凝り固まった心をふんわりとほぐしてくれる、心のセルフケアの時間になるのです。
もし今、少し心が疲れているなと感じたら、今夜はスマートフォンのプレイリストを少し巻き戻して、昔大好きだった曲を聴いてみませんか?
目を閉じて、耳をすませば、あの日の心地よい温度の風が、きっとあなたの元へ吹いてくるはずです。
今のあなたがどんな状況にあっても、あの頃の純粋なエッセンスは、あなたの中にちゃんと眠っています。
音楽という名のタイムマシンに乗って、いつでもあの愛おしい記憶の部屋へ、一息つきに帰ってみてくださいね。