前回は、短答式試験にスポットを当て、点数のブレ幅から戦略を立てる必要性と、論文式試験も同様に分析すべきであることをお話ししました。
今回も、短答式試験にスポットを当て、前回とは違った角度で戦略を立てる方法論をお話しします。
大前提:正答率80%以上の問題だけを解く
文字通りの意味です。予備校が出版する問題集には正答率が記載されていますが、その正答率の情報で構いません。正答率が80%以下の問題はやらなくて構いません。その代わり、「正答率80%以上の問題は絶対に間違ってはならない」という意識を強く持ちましょう。
このようなことを言うと、「正答率の低い問題が気になる」、「それだけでは合格しない(気がする)」と言われるかもしれませんが、これには具体的な裏付けの数字があります。
『正答率80%以上に相当する問題を仮に全問正解した場合,短答合格点は優に超える』(「伊藤真の速習短答過去問」参照、現在は「伊藤塾 合格セレクション 司法試験・予備試験 短答式過去問題集」とタイトルが変わっている。)
とされており、「誰でも解ける当たり前の問題を、当たり前に正解する」ことが一番重要であることがわかります。
そして、自身でチェックしてみるとわかりますが、思っている以上に、正答率80%以上の問題を確実に正解出来ていないことに気が付くはずです。
パレートの法則というのを聞いたことがあるでしょうか。「顧客の全体の2割である優良顧客が売り上げの8割を上げている」という法則のことです。司法試験も同様です。出題範囲やテーマは限られています。
正答率の低い問題に手を出すのは、優先順位を意識できておらず、正答率の高い問題への学習時間を減らしており、非合理的な勉強になっています。特に、民法のような理解が難解かつ範囲が広い科目は、より一層「2割部分」を重視すべきです。
優先順位の高い正答率80%以上の問題に絞り、正答率の低い問題に手を出すのはやめましょう。
「vs受験生」ではなく、「vs自分」と比較・分析する、『実力発揮率』という考え方
前提を確認したところで、分析方法に移ります。
タイトルにもある通り、模試や答練を受けて、点数・偏差値・平均点のみで自分を分析するのは非常にもったいないです。
なぜなら、平均点や偏差値は、現在の自分の立ち位置は確認できるものの、これらの数値は相対的な位置づけであり、受験生との関係で決まるものなので、自分の頑張りだけで変えられるものではないからです。
そこで、発想を変えて、自分自身と比較・分析する方法をお話しします。
模試や答練など、本番形式の演習を行った際には、以下の診断を行ってみましょう。
ステップ1:
各問題の肢ごとにチェックし、重要度の高い肢(受験生の正答率が80%以上になると思われる肢)に☆をつける
⇒この判断は主観的で構わないが、普段から正答率80%以上の問題を学習
するという意識がなければ判断が出来ない。
ステップ2:
☆を付けた肢の習熟度(〇×△)を、以下のように記録する。
・〇:正解への道筋を正しく認識したうえで正解できた場合
・△:正解したものの、その理由が正確でなかったり、迷いがあった場合
間違えた場合は×とするが、×は更に以下に細分化してチェックする。
・「×-知」:その肢の知識自体を知らなった
⇒解説を読んだ際に、「今の自分では正しく回答することは難しい」、「今回は間違えても仕方がなかった」と感じた場合には、こちらの印を付ける
・「×-引」:その肢の知識はあったが、正解のように見えてしまい迷った結果間違えた
ステップ3:
更に以下の4値を計算する。
㋐:☆の肢が設問中に3つ以上付いた設問の合計点数(合格レベルの受験 生が獲得し得る最高点)
⇒☆が2つ以下の肢の設問については、選択肢が1つに絞り切れず運が絡むことがあり、正答率80%以上の問題ではない可能性が高いため、㋐の点数には加算しない。
㋑:〇・△・「×-引」が合わせて3つ以上付いた問題の合計点(現時点で自分が100%力を発揮できたときに取れる最高点)
⇒これらの印が2つ以下しか付かないなど、選択肢が1つに絞り切れず運が絡む可能性がある問題については除外する
㋒:〇が3つ以上付いた問題の合計点(運に頼らずに自力で得た点数)
⇒〇が2つ以下しか付かないなど、選択肢が1つに絞り切れず運が絡む可能性がある問題については除外する。
㋓(㋒÷㋑×100):現在の自分が、試験で自分の力を発揮できた率
=『実力発揮率』
分析方法
上記の㋐~㋓を算出する目的は、「今の自分の限界値」、「短答合格者相当の実力と自分の限界値との差」、「試験本番で、現在の自分はどの程度力を発揮することが出来たのか」を把握する点にあります。
例えば、仮に憲法で☆3つ以上の肢の設問の合計点が45点(㋐)、今自分が獲得できる最高点数が30点(㋑)、自力で獲得した点数が28点(㋒)だった場合、実力発揮率(㋓)は93.3%(28÷30×100)となります。
これは、自力獲得点数(㋒)は6割程度に留まるという点で、一般的には良い成績とは言えないかもしれませんが、しかし、今自分が発揮できるMaxの実力のうちの約93%(㋓)もの力を試験で発揮出来たことを意味します(これは私の経験則的には相当高い数値です)。
分析の評価としては、学習した知識が正しく身についており、かつ試験場でも力を十分に発揮出来たことを意味します。
そうすると、この人にとっての次の対策は、今の学習方法に大きな問題はないと思われるため(学習したことが、そのまま力として反映されていると思われるため)、㋐と㋑の点数のギャップを埋める作業を行う、すなわち自力の底上げ(点数のブレ幅の下限点を上げる)を図ることが必要ということになります。
一方で、憲法で、㋐が45点,㋑が44点,㋒が35点の人がいたとすると、上記の人とは評価や対策が全く異なります。
なぜなら、自力獲得点数(㋒)自体は上記の受験生より高いものの、試験現場で発揮できた力(㋓)は79.5%にとどまっており、試験場での「実力発揮率」では上記の受験生に負けているからです。
この場合は更なる分析が必要となります。例えば、㋐と㋓の点数差が大きい場合には、「知識は有しているものの、試験本番で正しい選択ができていなかった」といえ、学習方法やその過程に問題がないかも含めて分析する必要があります。
例えば、ステップ2の×に着目して分析するのも1つです。知識があやふやであった(「×-引」が多い)ということであれば、「知っているはずなのに、なぜ間違えたのか」、その理由を自分なりに分析する必要があります(その方法については、次回紹介します)。
また、上記の㋐~㋓の点数は、各分野別、項目別ごとに算出することもできます。例えば、民法であれば、総論、物権、債権総論、債権各論、家族法というように、それぞれ分野ごとに、㋐~㋓の数値を出してみましょう。そうすると、単なる点数だけではなく、自分の弱点や、どういう間違いを良くしているのかが見えてきますので、それにより、取るべき対策も異なります。
このように、単純に問題集を1ページ目から順番に解くのではなく、正答率80%以上の問題に絞り、更に、上記のような客観的な分析を踏まえて、優先順位をつけながら勉強することが重要です。
🌸 今回のポイント
①:正答率80%以上の問題だけを解く
②:「vs受験生」ではなく、「vs自分」と比
較・分析する
③:「実力発揮率」を踏まえて分析する
④:漠然と問題集を前から順番にやらない。
②、③の分析に基づいて、優先順位をつけ
る
今回は以上です。
次回も引き続き短答式試験にスポットを当てつつ、論文式試験とセットで考える戦略について説明します。
以上を踏まえて、
例えば、この記事の㋐〜㋓を自分の成績で出してみたものの、『自分はどのパターンに当てはまるのか』『次に何をすべきか』の判断に迷う方へ。
個別相談を受け付けておりますので、検討していただければと思います。
上記の内容に限りませんが、現在の学習状況や悩みをお聞きして、どういう特徴があり問題があるのかを分析し、具体的にどういう方法で勉強を進めるべきか、 何を優先すべきかを一緒に整理します。
司法試験まで残り60日を切りましたが、方法論や考え方を変えれば、ここからでも合格ラインは超えられます。
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答案をご提供いただければ、それも踏まえて分析いたします。