第1〜5回では、論文式試験を中心に説明してきました。
今回は、短答式試験を中心にお話しします
もっとも、短答式試験と論文式試験を別物として捉えることはNGです。後述しますが、今回取り扱う内容は、論文式試験でも同様に考えるものと位置づけてください。
短答式試験の勉強法は、基本的には、過去問を中心とした問題演習を地道に積み重ねて知識を定着させる方法が、昔から王道とされています。
パーフェクト(辰巳)のようなテーマ別の問題集や、肢別本やアプリなど、手段に違いはあれど、基本的には私も問題演習の積み重ねの勉強で良いと考えます。
一方で、短答式試験は「やれば(誰でも)合格できる」といった風潮もありますが、勉強を積み重ねていても苦手な受験生はいますし、私も最後まで苦手意識がありました。
そこで、上記の勉強法がセオリーであり、絶対的な演習量が必要であることは前提としつつも、演習量だけで全てが解決するとは限らず、根性論ではなく、「自分に合った」合理的な勉強法を検討する必要があることについて、様々な角度から掘り下げます。
1:演習を積み重ねれば、その分短答の成績は上がるのか
「(演習)量をこなせば点数は上がる」という趣旨のことを、合格者や短答式が得意な人から言われたことがある受験生もいるかと思いますが、問題演習を積み重ねても、その効果がなかなか現れずに焦っている受験生もいるのではないでしょうか。
実際、演習量と点数は単純な比例関係にはないと思います。それは、私自身の経験としてもそうですし、他の受験生を見ていてもそう感じます。
コツコツ勉強していても、なかなか結果が付いてこない日々が長く続き、点数がなかなか伸びないことに焦りを感じ始めた頃になって、初めてスッと点数が上がったりします。また、点数が伸びる時期も人それぞれです。
イメージ的には、y=arctanX型のグラフのような伸び方になると思われます。したがって、点数が伸び悩んでいるとしても、根気強く続けていくことが重要です。
横軸:時間
縦軸:点数
グラフの出典は省略
一方で、上記のグラフの通り、短答式試験はある程度まで伸びて以降は頭打ちになりやすいため、確実に合格ラインを超えられる目途がついたなら、それ以上短答の勉強を過度に行うことはコストパフォーマンスが悪いともいえます。以下、説明します。
2:短答式試験の目標の立て方
皆さんは、短答式試験について具体的にどういう目標を立てていますか?
多くの受験生は、「合計で〇〇点を取る」などと考えていると思います。
ただ、この「〇〇点」は、自分にとってどういう点数の位置づけでしょうか?
もし「自己最高点」をイメージしているのであれば、それは戦略ではなく、ただの願望であって意味をなさない目標です。
第2回でも述べましたが、司法試験は絶対に落ちてはならない試験です。想定外は一切許されないのです。
そうであれば、戦略として、「どんなに想定外の出来事が起きたとしても、絶対に合格できる戦略」を立てる必要があります。そうでなければ、想定外の事態が起きた時に対応出来ません。
そうすると、最も合理的かつ有効な戦略は、「自分が想定する最も低い点数を3科目とも取ってしまったとしても、合格できる用意をしておくこと」だといえます。すなわち、「自分の取り得る点数のブレ幅を見極め、その下限の点数を知ること」が最も重要であることになります。
3:自分の取り得る点数のブレ幅を知ろう
このようなことを言うと、「自分は、短答式で足切りギリギリを通過するような目標は立てない」という人もいるかもしれません。
「足切りギリギリを通過しろ」とは言っていません。ブレ幅の下限で戦略を立てることは、下位合格を狙うための方法論ではなく、合理的かつ効率的に点数を積み重ねるための最良の方法論です。
先ほど確認した通り、短答式試験は、問題演習の量と点数の伸びは単純な比例関係にはなく、ある程度伸びて以降は頭打ちになりやすくなります。
加えて、短答式試験と論文式試験との点数比率(約1:8)からして、短答式試験トップの成績の受験生であっても、論文式試験1、2科目で簡単にひっくり返されてしまいます。
すなわち、合格最低点(足切りライン)を1点超えることを「確実にする」ための戦略さえ立てることが出来れば、十分最終合格を果たすことが出来るうえ、上位合格することも十分可能といえます。
更に言うと、自分が最高点数を試験本番で取ることが出来る確率は何%あるのでしょうか。確率論的に考えて、緊張していて何が起きるかわからない普段とは異なる環境下で、自己最高点数が、しかも3科目揃って出る確率なんて、おそらく1%もないのではないでしょうか。
むしろ統計的に考えると、試験本番で取る点数は、過去に取ったことのある点数のうちの、Maxの点数とminの点数の間のどこかに収束する可能性の方がはるかに高いはずです。
そうであれば、点数の上限で考えるよりも、自分が取る可能性のある点数の範囲を予測し、その中で最も悪い点数を取ってしまったとしても、足切りラインを越えられるための戦略を立てるほうが、はるかに合理的です。
よって、自分が取り得る点数の下限を知ることは非常に重要であり、ここを見誤ると、致命的な想定外の結果を生みかねないので、厳格に見積もる必要があります。
したがって、これまでに自分が受けてきた模試や答練などから、自分が取り得る最低点を割り出しましょう。もし、過去最低点を更新する可能性が少しでもあると感じている場合には、自分の想像する最低点を下限点として設定しましょう(その場合は、本番で想定外が起きないように、低めに見積もりましょう)。
4:点数のブレ幅を踏まえた分析の仕方
上記の方法により、各科目の取り得る最低点を確定させた後は、最低点の3科目の合計点数が、近年の足切りラインを超えるかどうかを見ます。
足切りラインを超えない場合には、各科目の下限点の底上げを図る必要があり、現実的に、「どの科目を何点あげる必要があるのか?」、更に詳細な分析を行う必要があります。
3科目を満遍なく上げる必要はありません。自分にとって一番合理的な戦略を立てるために、「ブレ幅」を知る必要があるのです。
例えば憲法で、最高点が40点、下限点が35点と分析したとします。この場合は、他の科目の点数を上げることを優先した方が良いでしょう。
点数のブレ幅が小さいということは、最低でも安定して35点が確保出来るということであり、試験本番の得点が予想しやすいということです。試験を受ける前から点数が予測できるというのは、大変美味しいです。
一方で、最高点が50点、最低点が20点というような科目の方が危険です。ブレ幅が大きいため、試験本番の獲得点数の予測がしにくいからです。
こういう科目は、下限の点数の底上げを図りつつ、ブレ幅の低い方の点数を取る確率を下げるための方法論を考える必要があります。
このように、単に数字だけを眺めて漠然と目標を立てるのではなく、「確率的に試験本番でどういうことが起きる可能性が高いのか」を分析したうえで、「最も起こってほしくない事象の確率を低くしていくための戦略を立てる」ことを考えるべきです。
📌 ちなみに、私の3回目の受験時の分析と戦略についてお話します。
憲法は、最低でも35点以上は確実に取れる自信がありました。一方で、勉強をしてもしなくとも、そこまで大きく点数は変わらない印象を持っていました。つまり、点数のブレ幅が小さく、勉強のコスパが悪いのです。ですので、憲法はほぼやりませんでした。試験を受ける前から35点は確実に取れることが分かっており、35点取れれば良いと割り切っていたからです。
なお、憲法に関しては、論文式の勉強が、そのまま短答式の対策にもなると位置づけていました。
民法については、50点以上65点以下という分析で、だいたい60点前後に収束し、比較的安定していました。ただ、憲法よりは勉強のコスパが良く、下限点を55点くらいまで底上げすることが出来れば、多少刑法が悪くても、憲法と民法で、ある程度足切りラインをカバーできると分析していたため、「万が一が起きないように」という意識で勉強していました。
なお、民法に関しては短答の勉強で、ほぼ論文式の勉強をカバーする戦略を立てていました。
刑法は、最も危険と位置づけていました。50点も取る一方で、過去に模試で25点を取ったことがあり、刑法自体への苦手意識もあったため、ブレ幅の中でも低い点数を取る確率が、3科目の中で最も高いと分析していました。
したがって、刑法に関しては、「ブレ幅の低い点数を取る確率を少しでも下げよう」という意識で取り組んでいました。なお、刑法に関しては、論文式と短答式の勉強をそれぞれ行って対策をしていました。
そして、第2回にお話した通り、コロナ禍のなか試験最終日に熱を出してしまい、時間と共に体調も悪化していきました。最後の刑法の時は本当に地獄で、まともに考える余裕もなかった記憶があります(なお、コロナに感染はしていませんでした)。
結果的に刑法は25点でした。これは、過去3回の受験の中でも最低点です。なお、憲法は37点、民法は53点と、どれも決して良い点数ではなかったものの、ブレ幅の範囲内であり、「想定内の点数」を取ることができました。
熱が出たことは最悪のハプニングではあったものの、見事に戦略がはまり、「想定内の出来事」として対応出来たため、短答式試験の発表の時点で、「このまま合格するな」という感触が不思議とありました。
このブレ幅を把握して下限から分析する戦略は、論文式試験についても同様です。
論文式試験の場合は、短答式試験ほど明確な点数を把握しにくい側面はあるものの、模試や答練などを利用して、おおよその点数・評価のブレ幅や傾向を知ることは出来ると思います(模試は自分の出来や弱点を把握するために受けるのではなく、自分の想定していない事象を知るために受けるのです)。
短答式と同様で、各科目で自分が想定する最低点数・最低評価を全ての科目で取った場合に合格ラインを超えるか否かを分析し、最悪の事象が起きたとしても合格ラインを1点超える確率を高めるためにはどうすれば良いかを分析し、自分に合った戦略を立てるのです。
したがって、同じような成績であったとしても、人によって戦略の立て方は異なります。
例えば、憲法の成績が安定して低く、時間をかけても点数が全然伸びない一方で、コンスタントに良い成績を出している科目や、まだ発展途上ではあるものの成績が上がりつつある科目があったとします。
その場合、憲法の点数を上げる戦略も良いですが、点数の伸びない憲法を上げることに時間を費やすよりも、その他の科目でカバー出来る見込みが立ち、他の科目に時間を費やす方が確実性が高いと分析した場合には、「別に憲法は低い点数でも構わない」と、割り切った戦略を立てることも全然あり得ると思います。
すなわち、「攻めのE答案、守りのA答案」という戦略もあり得るということです(なお、私もそのような戦略は立てていました)。
🌸 今回のポイント
①:短答式試験の点数は、演習量と比例関係にはないため根気強く続ける必要があるが、頭打ちもしやすい。
②:最も合理的かつ有効な戦略は、「自分が想定する最も低い点数を3科目とも取ってしまったとしても、合格できる用意をしておくこと」である
③:自分の取り得る点数のブレ幅を明確に把握しよう
④:論文式試験についても同様に分析して戦略を立てる
⑤:「攻めのE答案、守りのA答案」という戦略もあり得る
今回は以上です。
次回も引き続き、短答式試験の戦略の立て方を中心としつつ、論文式試験にも通ずる分析法について説明します。
以上の話を踏まえて、
例えば、自分の得点の下限点を具体的に把握したい人、短答の戦略をどのように立てるのが良いか検討したい人には、個別相談を受け付けていますので、検討していただければと思います。
上記の内容に限りませんが、現在の学習状況や悩みをお聞きして、何を優先すべきかを一緒に整理します。司法試験まで残り60日を切りましたが、方法論や考え方を変えれば、ここからでも合格ラインは超えられます。
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