英語教師なのに英語を話せなかった暗黒時代の追想です。
当時、受験英語なるものに対しての一定の知識はあるものの、英語は聞き取れず、話せず、二重苦三重苦に苛まれていました。
授業は全て日本語で行なっていましたが、Reading part が来るとドキドキです。発音にも自信がなかったので。
ALTとは極力話さないようにしていました。何言っているか分からないし、英語話せないのバレちゃうし。
ある日、教育実習生が来たんですね。もちろん私の担当じゃなかったんですけど。
授業で使うプリントを印刷するために、印刷室へ向かったら、中からめちゃくちゃ流暢な英語の会話が聞こえてきたんですよ。
「ファ!?」ってなった私は、こっそり「誰が話してんねん」と覗き込んだんですね。
そしたら、その教育実習生が印刷室でALTと楽しそうに会話していたんですね。
「ワイはまだ英語教師にもなっていない後輩にも負けているんか…」とすごく落ち込みました。
そんな中で私が漠然と考えていたことは、
「Speaking や Listening を伸ばすにはどうすればいいんだろうなー」
ということでした。
でも一応プライドがあったので、その後輩に
「ねえ、どうやったらSpeaking, Listening ができるようになるんだい?」
なんて聞けないわけですよ。
だから「これをやればあなたもペラペラ!」「ネイティブの英語が驚くほど聞こえてくる!」みたいな煽り文句の本を片っ端から読み漁りました。
そこでお勧めされている勉強方法も一通り試しました。
でも続きませんでした。
そしてさらに自己嫌悪。
「自分には無理なんだ…才能ないんだ」
今でこそ、この思考方法の「落とし穴」に気付けますが、当時は本当に分からなかったんですね。
というわけで本日は、私のそんな苦ーい経験から、「Speaking や Listening ってどうやったら伸びるんですか?」思考の落とし穴について書いていこうと思います。
レッツゴー!
まずは問題分析
お医者さん行くじゃないですか。
医者:「次の方どうぞー」
患者:「どうやったら元気になりますかねえ?」
医者:「ちょちょちょちょっと待って、まずはどこが悪いの?」
ってなりますよね。
ある問題を解決するためには、何が問題なのかを突き止めなければいけないのが当たり前です。
何が問題なのか分からないのに、その問題を解決することはできません。
英語でも一緒で、「Speaking ってどうやったらできるようになるんですか?」「Listening ってどうやったら伸びるんですか?」っていうのは、もうすでにアウトなんですね。
一体、何が問題なんですか?
ここから考えていかなきゃいけないわけです。
Issue Driven ですね。
問題分析の方法
問題分析から始めろと言っても、普通の人が「はい、そうですか」とできるものでもありません。
英語を学び始めた状態って、英語に関しては子どもと同じ状態なので
医者:「どこが悪いんですか?」
患者:「うえーん、うえーん、痛いよー!」
みたいな状況で、とにかく
問題を抱えているけど、何が問題なのかが分からない
わけですよね。
一番いいのは「医者に行って検査を受けるように、プロにお願いして弱点を診断してもらう」ことだと思います。
さてさて、自己診断していく場合には、まずSpeaking、Listening がそれぞれどんな認知プロセスを経ているのかを理解しておく必要があります。
お医者さんが体の部位や関連性を熟知しているから、ある「症状」から「問題」を特定できるように、Spraking, Listening に関して、
「どんな流れで英語を発話するんだろう」
「どんな流れで英語を聞き取って理解しているんだろう」
ってことを理解しておくことが大切です。
岡田祥吾氏(PROGRIT) の『英語学習2.0』という中でめちゃくちゃ分かりやすく説明されていたので、そちらを使って説明していきますね。
※画像:岡田祥吾『英語学習2.0』角川書店
まず、ある英語を聞いたときに、耳が英語を「音」としてキャッチします。
そしてその「音」が自分の「知識」として保存されているか確認します。
脳(音担当):「あのさ、アッポゥって音、データにある?」
脳(DB担当):「えーっと…あるね!appleのことやね!」
そして音が「言葉」として認識されたら、今度はその「意味」がデータベースにあるか確認します。
脳(意味担当):「appleってどんな意味かデータにある?」
脳(DB担当):「ちょいお待ちを…これか!りんごやね!」
ここまでがListeningのざっくりとしたプロセス。
で、次にSpeaking。まず、apple を見て、「言いたいこと」を考えるのが「概念化」。
脳(概念担当):「りんご…うまそうやな、食べたいな」
そしたら今度は、「食べたい」というのを英語で文章(単語)にしなければいけませんが、これはデータベースの中に「食べたい」を表現するための知識が備わっているか確認しなければいけません。
脳(文章担当):「あのさ、うまそうって言いたいんだけど、英語のデータある?」
脳(DB担当):「ほいほーい、えーっとね… I want to eat it. って言えそうね」
実はこの文章化にも2パターンあって、
①決まりきった「フレーズ」のデータを引っ張り出してくる
②単語を文法というルールに沿って並び替える
という方法がありますが、圧倒的に多いのは②のパターンです。
上の例では②のパターンで「並び替えをした」というプロセスを含んでいることにしておきますね。
で、最後にそれを「音」として発するわけです。
脳(音声担当):「I want to eat it. ってどういう音になるかデータある?」
脳(DB担当):「んーとね、アイウォントゥイーリッやね」
このように、知識のデータベースとなんどもやり取りしながら、ようやく発話に至る複雑なプロセスを踏んでいることを頭に入れておきながら、次の課題発見を読み進めてください。
Listening課題発見
ここまでの流れが分かったら、「自分がどこのプロセスに問題を抱えているのか」を突き止めなければいけません。
例えば、先ほどの最後の英文で
I want to ——- . の部分が聞き取れなかったとしたら、eat it というそれぞれの単語の意味は知っているにも関わらず、それらがくっついて「イーリッ」となることが理解できなかったと考えられるので、「英音法」に関わる知識の不足という課題を抱えていることになります。
I want to —- it. の部分が聞き取れず、「イートみたいな音の単語とit がくっついているのは分かってるけど、イートって何よ?」となれば、単純に「単語の知識が不足している」という課題を抱えていることになります。
I want to eat it. っていう音ははっきり聞こえたけど意味理解をする前に次の音が流れてきちゃってあわわわ、みたいになっていれば「知識データベースから引っ張ってくるまでのスピードが遅い」ということが課題であるといえます。
Speaking課題発見
まず、概念化ですが、これは「言いたいことが頭に浮かぶかどうか」なので、「別に言いたいことは何もないよ」ということに関しては「じゃあこのタイミングで英語話す必要ないじゃん」ってことになりますので、ニコニコしてやり過ごせばOK!
次に文章化ですが、ここでは前述した「単語を文法というルールに沿って並び替える」という作業を行なっていると仮定しましょう。
このときに、最初のうちは「日本語」が思い浮かんでくると思うのですが、これは仕方のないことです。
「日本語で考えちゃダメ!英語で考えるようにしなきゃ!」という意見もよく聞きますが、これはめちゃくちゃ英語ができるようになった人たちが、「現時点で頭の中で起こっていることを言語化してみたらそうなった」だけなので、「最終的には日本語を介さずに英語で話せるようになれるといいと思うよ!」というアドバイスだと考えるといいと思います。
で、「日本語で言いたいことは思い浮かんでいるんだけど英語にできない…」という人は、この「文章化」というプロセスに問題を抱えていることになります。
「英語で話してるのに全然伝わらない」という人は、「音声化」のプロセスに問題を抱えていることになります。
このように、一言に「Speaking」「Listening」と言っても、問題が起こる過程は人それぞれです。
「体調が悪い」だけでは、適切な処置を受けることはできません。
患者:「先生、診断の結果はどうでしたか…?」
医者:「色々と検査してみたら、流行性のウイルスが入り込んで喉が炎症を起こして発熱や咳につながってたみたいだね」
患者:「先生!僕は!僕はこの先どうなるんですかっ!!」
医者:「大丈夫ですよー(うるせえなこいつ)」
問題箇所が具体的に判明したことで、適切な薬の処方や治療が受けられます。
原因不明って状態が一番怖い。
体調めちゃくちゃ悪いのに、「うーん、ちょっと原因が分かりませんね」って言われたら精神状態めちゃくちゃやばくなりません?
まさに私はその状態だったんだと思います。
「問題」があることは明らかに認識しているのに、「原因不明」の状態。まあ、そもそも「原因はなんだろう?」とすら考えていなかったんだけどさ。
まとめ
問題が明らかになると、次に「解決策」が決まってきます。
患者:「先生、先生、僕には愛する妻と二人の子どもがいるんです!どうかっ!どうか助けてください!」
医者:「お熱を下げる薬と喉の炎症を止めるお薬出しときますねー、お大事にー(はよ出てけ)」
看護師:「次の方、どうぞー(はよ出てけ)」
SNSやインターネットには「英語学習方法」がゴロゴロと転がっています。
あまりの多さに、「一体どれを選んだらええんや…」と途方に暮れてしまうほどです。
それらに闇雲に手を出していけば、もしかしたらどこかで自分が今抱える課題にとって最適な学習方法にヒットするかもしれません。
ところが、自分の「課題」が不明瞭だと、「この方法が正しい」と確信を持てない状態で進めていくことになりますので、「続かない」という可能性が高くなります。
もしくは、最適解が見つかるまで手当たり次第しらみつぶしにしていかなければいけないので、結果が出るまでに時間がかかり、チベーションの維持が大変です。
巷にゴロゴロと溢れている学習方法は、決してどれも間違ったものではありません。
ただ、頭痛で悩んでいる人が下痢止めを飲んでも意味はないし、お腹を下している人が解熱剤を飲んでも症状は改善しません。
大切なことは自分の「問題(症状)」にあった「解決策(薬)」を選択することです。
ではまた!