育児や介護、病気など、人生で起こる様々なライフイベントと仕事の両立支援に取組む会社が増えています。
ダイバーシティ&インクルージョンという言葉も一般的になってきましたが、両立支援の先にあるゴールは何なのか。
「特定の誰かに対する取組みなんじゃないの?」
「何で自分が他人を支援しないといけないの?」
両立支援の取組みを進めるとたまに聞こえてくるそうした声に負けるな!という応援の気持ちで、人事の実務家としての考えをまとめてみました。
ライフイベントと仕事の両立に取組んでいる人、これから取組む人が、壁を突破しようとする時の参考になれば嬉しいです。
【目次】
1.両立支援が「本人」にもたらす価値
2.両立支援が「周囲」にもたらす価値
3.両立支援が「組織」にもたらす価値
4.大企業だからできるんでしょ‥に逃げない
1. 両立支援が「本人」にもたらす価値
人は「自分の居場所はここだ」と思えた時に、最高のパフォーマンスを発揮します。
育児や介護、病気の治療など、時間的な縛りが発生した時に、本人が不安に思うことは、「自分はここで働き続けられるのだろうか?」、「活躍し続けられるのだろうか?」ということです。
両立支援は、その不安を払拭するための取組みです。
そして実際にその身になって、「自分の居場所はここだ」と感じられた時、職場に対する帰属意識が生まれ、その本人は最高のパフォーマンスを発揮して
長く組織に貢献してくれます。
2. 両立支援が「周囲」にもたらす価値
両立しながら働く人が身近にいると、周囲はいざ自分自身もそうなった時には、大丈夫だと思うことができます。
そこにもたらされる価値は、この会社であれば自分も「働き続けられる」、「活躍し続けられる」という安心感です。
そして、それは離職防止にもつながります。
一方、これは生々しいリアルな話ですが、「なぜ育児者だけが特別に配慮されるのか?」、「配慮の結果、なぜ私があの人の仕事を肩代わりしないといけないのか?」という声が周囲からあがってくることがあります。
この壁を突破するためには、二つのことが有効だと思います。
一つは「明日は我が身なのだから、お互いさま」という感覚を周囲に持ってもらうことです。
周囲にはもちろん未婚の方もいれば、既婚でお子さんがいらっしゃらない方もいます。
しかし、誰しもいつかは親を亡くす可能性や、病気になる可能性はあります。
近年、育児と仕事の両立支援に力を入れている会社は多いように思いますが、
人事としてはそれだけでは十分ではなく、全員が当事者になる可能性のあること(例えば、介護や病気)の両立支援にも同時に取組むことが、「お互いさま」という感覚を醸成しやすくします。
もう一つは、両立に取組む本人に「応援したくなる人」になってもらうことです。
誰しも一生懸命で真剣な人に対しては、応援したくなります。
逆に、支援されて当たり前というような態度で、権利ばかり声高に主張するような人に対しては、応援の気持ちは湧いてきません。
支え合うということはお互いの信頼関係がないとできないことなので、そのために周囲だけではなく、本人にもマインドセットすることは有効です。
3.両立支援が「組織」にもたらす価値
1・2で述べてきたような帰属意識の醸成やパフォーマンスの最大化、離職防止なども両立支援が組織にもたらす価値です。
しかし、組織にもたらされる何よりの価値は、「助け合う風土の醸成」にあると思います。
助け合うということは、お互いがお互いを理解し、信頼していないとできません。
そして、助け合えるチームは強い。
お互いの違いを理解するプロセスで、そこに進化が生まれ、新しい価値が生み出される。(まさにダイバーシティ&インクルージョン)
両立支援の取組みは、チームの成果の最大化に最終的につながるものと信じています。
4.大企業だからできるんでしょ‥に逃げない
様々な支援に、人的・金銭的コストがかかることは間違いありません。
あなたが企業の両立支援推進担当なら、費用の高い特別な検診支援などは、大企業だからできるんじゃん‥と思ってしまうのも無理はありません。
でも、一番大切なことは、両立支援に力を入れるというメッセージが、一般の社員に伝わっていること、そしてどんな小さなことでもいいので、それが具現化できていることです。
先日、ある女性社員がこんな話をしてくれました。
男性社員は知らないと思うけど、生理の辛さに耐えながら働いている女性社員はたくさんいる。
席から起ち上がれなくなったり、重い子になるとトイレで吐いたり。
もちろん制度として生理休暇はあるが、言い出しにくいから使いたくない。
それよりも、仕事中に生理で辛い時に休めるスペースが職場に確保されていて、辛い時はそこを利用していいよというメッセージがさりげなく出されていた方が、制度なんかよりもよっぽど助かるし、心に響きます。
大企業じゃなくても、心に響くことは創れる。
これを読んだどなたかが、そう思っていただけると嬉しいです。
両立支援の取組みがより社会全体に広がって、一人ひとりが居場所を感じながら働けることに少しでもつながりますように。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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