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すべてのブログから「#恋愛ショートストーリー」タグの検索結果

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夜に読む、恋の記憶 第10話最終話

その夜、私は古いノートを開きました。何かを探していたわけではありません。ただ、部屋を片づけていたら、引き出しの奥から出てきたんです。少し角が折れた、薄いノート。何気なくページをめくると、そこに彼の名前がありました。何度も書いたわけではありません。たった一度だけ。でも、その一文字を見ただけで、胸の奥が少しだけ静かになりました。ああ、ここにも残っていたんだ。そう思いました。スマホの中だけじゃない。写真の中だけじゃない。歌や、駅や、雨の日だけじゃない。こんな何でもないノートの端にも、あの恋は残っていたんだと思いました。そのページには、短い言葉が書いてありました。「ちゃんと好きだった」たぶん、あの頃の私が書いた言葉です。誰にも見せるつもりなんてなくて、きっと自分でも忘れていました。でもその一文を見た時、少しだけ泣きそうになりました。あの頃の私は、うまく愛されなかったことばかりを気にしていました。連絡が来ないこと。会えないこと。言えなかったこと。選ばれなかったこと。そんなことばかり数えて、自分の恋が間違いだったように感じていました。でも、違ったのかもしれません。ちゃんと好きだった。それだけは、嘘じゃなかった。不安になった日も。期待してしまった夜も。ひとりで泣きそうになった帰り道も。全部、ちゃんと誰かを大切に想っていた時間でした。私はそのページを、しばらく見つめていました。消したい過去ではありませんでした。戻りたい過去でもありませんでした。ただ、もう抱えて歩かなくてもいい記憶になっていました。彼を好きだった私を、恥ずかしいと思わなくていい。あんなに待ってしまった私も。言えないまま終わらせた
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夜に読む、恋の記憶 第9話

彼の好きだった歌を、偶然お店で聞いた夜がありました。もう思い出さなくなったと思っていたのに、そのイントロが流れた瞬間、足が少しだけ止まりました。あの人がよく口ずさんでいた歌。車の中でも、帰り道でも、何でもない夜の電話でも。「この曲、好きなんだよね」そう言っていた声まで、一緒に戻ってきた気がしました。私は何も買わずに、そのお店を出ました。外は少し蒸し暑くて、夏の夜の匂いがしました。もう終わった恋なのに。もう連絡先を開くこともないのに。たった一曲で、あの頃の気持ちが戻ってくるなんて、少し悔しかった。家に帰ってから、私はその曲を検索しました。聞かなければよかったのに、どうしても聞きたくなりました。再生ボタンを押すと、懐かしいメロディーが部屋に流れました。彼と一緒にいた時間が、少しずつ思い出されました。助手席から見た夜の道。信号待ちの横顔。私が何か言うと、少しだけ笑ってくれた声。特別な言葉をもらったわけではないのに、あの頃の私は、それだけで幸せでした。でも、曲が進むにつれて、だんだん胸が苦しくなりました。この歌は、私だけの思い出じゃない。きっと彼は今も、どこかで何気なく聞いているのかもしれない。何も思い出さずに。私のことなんて、少しも思い出さずに。そう思ったら、急に寂しくなりました。同じ歌を覚えていても、同じ気持ちで覚えているとは限らない。同じ時間を過ごしていても、同じ重さで残っているとは限らない。それが少しだけ、悲しかったんです。曲が終わったあと、部屋はまた静かになりました。私はもう一度、再生しようとして、指を止めました。これ以上聞いたら、またあの頃に戻ってしまいそうでした。でも、戻
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夜に読む、恋の記憶 第7話

彼と一緒に行くはずだった映画をひとりで観に行った日でした。「公開されたら一緒に行こう」そう言ってくれたのは、まだ連絡がちゃんと続いていた頃。予告を見ながら、彼が少し楽しそうに笑っていました。「これ、絶対好きだと思う」そう言われたことが嬉しくて、私は公開日まで覚えていました。でも、映画の公開日が近づく頃には、もう彼からの連絡は減っていました。私から映画の話を出せばよかったのかもしれません。「そろそろ公開だね」「いつ行く?」って、何気なく聞けばよかった。でも、聞けませんでした。彼が忘れていたらどうしよう。もう行くつもりなんてなかったらどうしよう。その答えを聞くのが怖くて、私は何も言えないまま、その日を迎えました。映画館の前に着いた時、少しだけ足が止まりました。本当なら、ここで彼を待っているはずでした。チケットを見せ合って、ポップコーンを買って、どっちが飲み物を持つかで笑って。そんな想像だけが、頭の中に残っていました。でも隣に、彼はいませんでした。私は一人分のチケットを買いました。座席を選ぶ画面で、ふたつ並んだ席を見て、少しだけ迷いました。でも選んだのは、端の方の一席でした。映画が始まると、暗い館内に音が広がりました。周りには、恋人同士もいました。小さな声で笑い合う人たち。同じ飲み物を交代で飲む人たち。私はまっすぐ前を向いて、できるだけ何も考えないようにしました。映画は、思っていたよりも面白かったです。ちゃんと笑えた場面もありました。でも、ふとした瞬間に、隣が空いていることを思い出してしまう。彼なら今のところで笑ったかな。この場面、あとで話したかったな。そう思うたびに、胸の奥が少しだ
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夜に読む、恋の記憶 第8話

スマホの写真を整理していた夜、彼の写真が出てきました。消したはずだったのに。忘れたふりをしていただけで、ちゃんと残っていました。写真の中の彼は、少しだけ照れたように笑っていました。たしか、あの日はたいした予定もない日でした。駅前で待ち合わせをして、なんとなく歩いて、途中で見つけた小さなカフェに入りました。彼は甘いものが苦手だと言いながら、私のケーキをひと口だけ食べました。「思ったよりおいしい」そう言って笑った顔が、なんだか可愛くて。私は思わず、スマホを向けました。「撮らないでよ」そう言いながらも、彼はちゃんとこっちを見てくれました。その写真でした。あの時は、この写真を何度も見返す日が来るなんて、思っていませんでした。会えない日も、少し寂しい夜も、その写真を見ると安心できました。ちゃんと一緒にいた日がある。ちゃんと笑ってくれた日がある。ちゃんと私の隣にいてくれた日がある。そう思いたかったのかもしれません。でも、いつからか、その写真を見るたびに苦しくなりました。もう戻れない時間なのに、画面の中だけはずっと優しいままで。写真の彼は、私を傷つけませんでした。冷たい返事もしない。約束を曖昧にしない。急に遠くなることもない。だから余計に、手放せなかったのだと思います。その夜、私は写真を開いたまま、長い時間ぼんやりしていました。消そうかな。何度も思いました。でも、指が動きませんでした。消したら、あの時間まで嘘になってしまうような気がしたんです。好きだったことも。嬉しかったことも。隣にいられて幸せだったことも。全部、なかったことにするみたいで、できませんでした。でも本当は、写真を消せなかったん
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夜に読む、恋の記憶 第6話

花火大会の日、私は少しだけ早く家を出ました。慣れない浴衣を着て、何度も鏡の前に立って。髪も、いつもより丁寧に結びました。彼に会ったら、何て言われるかな。似合うねって、言ってくれるかな。そんなことを考えながら、駅まで歩きました。待ち合わせ場所には、彼が先に来ていました。私に気づくと、少しだけ笑って、「浴衣なんだ」そう言いました。それだけでした。でも私は、その一言だけでも嬉しかったんです。人が多くて、歩くたびに肩がぶつかりました。屋台の匂い。遠くから聞こえる太鼓の音。誰かの笑い声。夏の夜は、少しだけ特別に見えました。彼は時々、「大丈夫?」と振り返ってくれました。そのたびに、私は小さくうなずきました。本当は、手をつないでほしかった。人混みではぐれないように、自然に手を伸ばしてくれたらいいのに。そう思いながら、私は彼の少し後ろを歩いていました。花火が上がる少し前、彼が言いました。「ここ、見やすいかも」川沿いの少し空いた場所に、ふたりで並びました。夜空に、最初の花火が上がりました。大きな音がして、空が一瞬だけ明るくなりました。きれいだね。そう言おうとして、隣を見ました。彼は花火を見ていました。その横顔が好きでした。隣にいるのに、少し遠い人みたいでした。花火が何度も上がるたびに、周りの恋人たちは自然に寄り添っていました。肩を寄せたり、手をつないだり、写真を撮ったり。私は、彼との距離を少しだけ近づけたくなりました。でも、できませんでした。彼の隣にいるのに、彼女みたいにはなれない。そんな気がしていたからです。帰り道、駅まで歩きながら彼が言いました。「今日、楽しかったね」私は笑って、「うん」と答
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夜に読む、恋の記憶 第3話

彼に会えるのは、いつも夜でした。仕事が終わったあと。友達との予定が終わったあと。街の灯りが少し静かになった頃。「今から少し会える?」そのLINEが来ると、私はいつも急いで支度をしました。本当はもう部屋着だった日も。お風呂に入ったあとだった日も。明日が早いとわかっていた日も。それでも、彼に会えるならと思って、鏡の前に立ちました。駅前のコンビニで待ち合わせをして、少しだけ歩いて、たわいもない話をして。彼は優しかったです。寒くない?眠くない?無理してない?そう聞いてくれるたびに、大切にされているような気がしました。でも、私は一度だけ聞いたことがあります。「今度、お昼に会えたりする?」彼は少しだけ笑って、「うん、今度ね」と言いました。その「今度」が、私はすごく嬉しかった。昼間に会えるなら、ちゃんとした約束みたいで。誰かに隠れているわけじゃないって、思える気がして。でも、その今度は来ませんでした。会えるのは、やっぱり夜だけ。彼からのLINEは、いつも急でした。「今日、会える?」そのたびに私は、予定をずらしたり、眠気を我慢したり、少しだけ無理をしました。嫌じゃなかったんです。好きだったから。会えるだけで嬉しかったから。でも、帰り道になると、いつも少しだけ寂しくなりました。楽しかったはずなのに、胸の奥がすうっと冷えるような感じがしました。私は彼の夜には入れていたけれど、彼の毎日には入れていなかったのかもしれません。そんなことを思ってしまう自分が、少し嫌でした。ある夜、彼からまたLINEが来ました。「今から会える?」私は画面を見たまま、しばらく動けませんでした。会いたい。すごく会いたい。でも、
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夜に読む、恋の記憶 第2話

日付が変わる少し前から、スマホを何度も見ていました。今日は、彼の誕生日。去年は、0時になった瞬間に、「お誕生日おめでとう」と送った。彼から返ってきた、「一番乗り。ありがとう」その言葉が嬉しくて、なかなか眠れなかったことを覚えています。でも今年は、もう送る理由がありません。連絡を取らなくなってから、何か月もたっていました。それでも、誕生日だけは忘れられなかった。23時58分。LINEを開いて、彼の名前を探しました。トーク画面には、最後に交わした言葉が残っていました。「元気でね」そのあとに、彼から返事はありませんでした。私は文字を打ちました。「お誕生日おめでとう。元気にしてる?」少し考えて、最後の一文を消しました。「お誕生日おめでとう」これだけなら、送ってもいいかな。もう未練なんてないように見えるかな。ただのお祝いだって、思ってもらえるかな。時計は、もう0時を過ぎていました。送信ボタンに指を置いても、どうしても押せませんでした。本当は、誕生日を祝いたかっただけじゃない。返事がほしかった。私のことを、少しでも思い出してほしかった。もしかしたら、「久しぶり」その一言から、また何かが始まるかもしれない。そんな期待が、心のどこかに残っていました。だから送れなかった。何も返ってこなかった時、もう一度傷つくのが怖かったんです。しばらく画面を見つめてから、打った言葉を全部消しました。真っ白になったメッセージ欄を見て、少しだけ寂しくなりました。でも、不思議と涙は出ませんでした。今年は祝わなかったんじゃない。心の中で、ちゃんと祝って、送らないことを選んだだけ。「お誕生日おめでとう」心の中で、そっとつ
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夜に読む、恋の記憶 第1話

彼と最後に会った日は朝から雨が降っていました。駅までの帰り道、彼は何も言わずに傘を私の方へ傾けてくれました。彼の右肩だけが、少し濡れていた。「そっち、濡れてるよ」そう言うと、「大丈夫」彼はいつものように笑いました。その笑顔を見て、まだこの人の隣にいてもいいような気がしてしまったんです。でも駅に着くと、彼は改札の前で立ち止まりました。「じゃあ、また」いつもと同じ言葉でした。私も、いつもと同じように、「うん、またね」そう答えました。本当は、聞きたかった。次はいつ会えるの?今日、何か言いたいことは、なかった?それだけ、聞けなかった。彼が振り返らずに歩いていくのを、私は改札の向こうから見ていました。スマホが鳴ったのは、家に着いて少したってからでした。「傘、そっちにあるよね」その一言だけ。彼の傘は、私の手元に残っていました。返さなきゃ。そう思いながら、会う約束をする理由ができたことに、少しだけ安心しました。でも、その傘を返す日は来ませんでした。連絡は少しずつ減って、いつの間にか、なくなりました。玄関に置いたままの黒い傘を見るたび、何度も思います。返したかったのは、本当に傘だけだったのかな。言えなかった寂しさも。聞けなかった言葉も。「またね」を信じていた自分も。全部、あの日の雨の中に置いてきてしまった。それでも長い間、その傘を捨てられませんでした。彼を待っていたわけではありません。ただ、あの恋が終わったと認めるのが、少しだけ怖かった。あの日の「またね」は、結局、最後の言葉になりました。心葉(ここは)♡   *これからもココナラブログで、心に残っている恋の記憶(連載10話)を、少しずつ綴って
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夜に読む、恋の記憶 第4話

その人の結婚を知ったのは、何でもない平日の夜でした。なんとなく開いたSNSに、見覚えのある名前が出てきました。久しぶりに見た彼は、少しだけ大人びて見えました。隣には、白い服を着た女性がいました。「結婚しました」その短い言葉を見た瞬間、胸の奥が、静かに止まったような気がしました。もう終わった恋でした。連絡を取らなくなってから、ずいぶん時間もたっていました。私にも私の日常があって、彼のことを毎日思い出していたわけではありません。それなのに、その写真を見た瞬間だけ、昔の自分に戻ってしまいました。彼からの返信を待っていた夜。会えただけで嬉しかった帰り道。本当は聞きたかったのに、聞けなかった言葉。そんなものが、一気に胸の中へ戻ってきました。おめでとう。そう思いたかった。ちゃんと笑って、よかったねって思える私でいたかった。でも、その時の私は、そこまで綺麗な気持ちにはなれませんでした。どうして、私じゃなかったんだろう。ほんの一瞬、そんなことを思ってしまったんです。もう選ばれなかったことなんて、とっくにわかっていたはずなのに。彼の未来に、私はいなかった。ただそれを、写真の中で見せられた気がしました。スマホを閉じて、しばらく部屋の天井を見ていました。泣くほどではない。でも、平気でもない。そんな夜でした。誰にも言えない寂しさって、少しだけ置き場所に困ります。「まだ好きなの?」と聞かれたら、たぶん違うと答えると思います。でも、何も感じないほど、簡単な恋でもありませんでした。好きだった時間は、ちゃんと私の中に残っていました。一生懸命だったことも。期待していたことも。あの人の隣にいたかったことも。全部、
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夜に読む、恋の記憶 第5話

彼から連絡が来たのは、夜の九時を少し過ぎた頃でした。「ちょっと話せる?」その一言だけで、私はすぐに返事をしてしまいました。「大丈夫だよ」本当は、少し期待していました。何か大事な話かな。もしかして、私に会いたいのかな。そんなことを、勝手に思ってしまったんです。電話が鳴って、彼の声が聞こえました。少しだけ迷っているような、いつもより弱い声でした。「相談があるんだけど」その言葉に、胸の奥がきゅっとしました。でも次の瞬間、彼は別の人の名前を出しました。「気になってる子がいてさ」一瞬、何も言えませんでした。でも私は、いつものように笑った声を作りました。「そうなんだ」うまく言えたと思います。苦しくないふりも、ちゃんとできていたと思います。彼は、その子の話をしました。どんなLINEを送ればいいか。どこに誘えばいいか。脈があると思うか。私はひとつひとつ、ちゃんと答えました。「それなら、素直に誘ってみたら?」「きっと嬉しいと思うよ」「気持ち伝えてみなよ」本当は、その気持ちを私に向けてほしかった。でもそんなこと、言えるはずがありませんでした。電話の向こうで、彼は少し安心したように笑いました。「話してよかった」その言葉が、嬉しくて、悲しかった。彼の役に立てたことは嬉しかった。でも私は、好きな人の恋を応援する役になってしまったんだと思いました。電話を切ったあと、部屋が急に静かになりました。スマホの画面には、通話時間だけが残っていました。長く話せた。声も聞けた。それなのに、少しも満たされませんでした。友達としては、きっと近くにいられたのだと思います。でも、好きな人としては、ずっと遠かった。その夜、私は布
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