夜に読む、恋の記憶 第5話

夜に読む、恋の記憶 第5話

記事
コラム
彼から連絡が来たのは、
夜の九時を少し過ぎた頃でした。

「ちょっと話せる?」

その一言だけで、
私はすぐに返事をしてしまいました。

「大丈夫だよ」

本当は、少し期待していました。

何か大事な話かな。
もしかして、私に会いたいのかな。
そんなことを、勝手に思ってしまったんです。

電話が鳴って、
彼の声が聞こえました。

少しだけ迷っているような、
いつもより弱い声でした。

「相談があるんだけど」

その言葉に、
胸の奥がきゅっとしました。

でも次の瞬間、
彼は別の人の名前を出しました。

「気になってる子がいてさ」

一瞬、何も言えませんでした。

でも私は、
いつものように笑った声を作りました。

「そうなんだ」

うまく言えたと思います。

苦しくないふりも、
ちゃんとできていたと思います。

彼は、その子の話をしました。

どんなLINEを送ればいいか。
どこに誘えばいいか。
脈があると思うか。

私はひとつひとつ、
ちゃんと答えました。

「それなら、素直に誘ってみたら?」

「きっと嬉しいと思うよ」

「気持ち伝えてみなよ」

本当は、
その気持ちを私に向けてほしかった。

でもそんなこと、
言えるはずがありませんでした。

電話の向こうで、
彼は少し安心したように笑いました。

「話してよかった」

その言葉が、
嬉しくて、悲しかった。

彼の役に立てたことは嬉しかった。

でも私は、
好きな人の恋を応援する役になってしまったんだと思いました。

電話を切ったあと、
部屋が急に静かになりました。

スマホの画面には、
通話時間だけが残っていました。

長く話せた。

声も聞けた。

それなのに、
少しも満たされませんでした。

友達としては、
きっと近くにいられたのだと思います。

でも、好きな人としては、
ずっと遠かった。

その夜、私は布団の中で、
何度も同じことを考えました。

どうして、あの子のことを好きになったんだろう。

どうして、私には相談できるのに、
私のことは見てくれなかったんだろう。

でも、答えなんて出ませんでした。

ただひとつだけ、
わかったことがありました。

彼の幸せを願えることと、
自分が傷つかないことは、
同じではないということ。

優しく聞いてあげられたからって、
平気だったわけじゃない。

笑って答えられたからって、
傷ついていなかったわけじゃない。

あの夜の私は、
好きな人の恋を応援しながら、
自分の恋に静かにさよならをしていたのかもしれません。

次の日、彼からLINEが来ました。

「昨日ありがとう。助かった」

私は少しだけ迷って、

「うまくいくといいね」

と返しました。

送ったあと、
胸が少し痛みました。

でもその痛みは、
私がちゃんと彼を好きだった証でした。

あの夜、言えなかった言葉があります。

本当は、私が好きだったよ。

でもきっと、
言わなかったから守れたものもあったのだと思います。

彼の恋を応援した夜、
私は自分の恋が届かなかったことを、
静かに受け入れました。

心葉(ここは)♡

   *

これからもココナラブログで、
心に残っている恋の記憶を、少しずつ綴っていきます。

また夜に、心葉(ここは)♡の物語を読みに来てくださいね。

恋の気持ちを誰かに話したくなった時は、
電話相談で心葉(ここは)♡がお話をお聴きしています。

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