造花の花10〜いるもの、いらないもの
真衣とマッチングしたのは、仕事の合間に無意識に画面をスワイプしていた時だった。画面に並ぶプロフィールが、絵文字と店の名前で埋まっていた。真衣の文だけ、白かった。写真は、顔の半分が影になった投げやりな自撮り。自己紹介文には「期待されるのも、期待するのも疲れました」とだけ書かれていた。なにか引っかかった。話してみたいと思った。最初のメッセージからすぐに、真衣は刺してきた。「私、性格悪いよ」「そうなんだ」「引かないんだ」「引く理由がないからね」「それが一番怪しい」やり取りのたびに、僕を測ってくる。否定しないと返すたびに、真衣がまた別の角度から来た。メッセージのやり取りはなんとなく続いていた。 ふとこの前オープンしたカフェのことを思い出したから、誘ってみた。「今週末、空いてる?オープンしたカフェに行ってみたいんだ」「なんで?」「ひとりだと行きにくいじゃん」「別にいいけど」それだけだった。真衣は最初こそぎこちなかったが、しばらくすると話し出した。店を変えながら、何時間も。早い時間から会ったのに夜になっていた。次の日も会うことになった。待ち合わせ場所や店の提案は毎回僕からした。「じゃあ、あの店にする?」「そこでもいいけど、こっちのほうが良くない?」「じゃあそっちにしようか」「ううん、最初のでいい」機嫌は良さそうだった。正直めんどくさい、と思った。でも口から出てきたのは「そんな時もあるよね」だった。否定しないことが染み付いていた。自分の思いが、外に出なくなっていた。三回目のデートだった。駅のホームを歩いているとき、真衣が転びそうになった。とっさに腕を掴んだ。「大丈夫?」真衣は少し間を置いた。
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