なぜ利用者さんの話を聞けなくなる?介護現場の「慣れ」を心理学から考える
「最初は、もっとゆっくり話を聞いていた気がする」新しく入居された利用者さん。「どんな生活をしてきたんだろう」「何が好きなんだろう」「何に困っているんだろう」まだその方のことをよく知らないため、私たちは自然と話を聞こうとします。新しく介護の仕事を始めた職員も似ています。最初の頃は、一つひとつの言葉や表情が気になり、利用者さんの話を一生懸命聞いていた。ところが半年、1年と過ぎていくと、「また同じ話だな」「この方はいつもこうだから」「今は忙しいから後で……」そんなふうになってしまうことがあります。では、これは「職員が冷たくなった」からなのでしょうか。私は、それだけではないと思っています。人には「慣れる」という仕組みがあります心理学には**「馴化(じゅんか/habituation)」**という考え方があります。同じ刺激を繰り返し経験することで、その刺激への反応が少しずつ小さくなっていく現象です。例えば、最初は気になっていた時計の音が、しばらくすると気にならなくなる。こうした「慣れ」は、人が毎日の膨大な情報を処理して生活していくために必要な仕組みでもあります。介護現場でも、同じ環境で同じ利用者さんと毎日接しているうちに、「慣れ」は自然に生まれます。最初は気になっていた小さな変化が、いつの間にか、「いつものこと」として処理されることもあります。ただし、利用者さんの話を聞けなくなる理由を、すべて「慣れ」だけで説明することはできません。「聞きたいけれど、聞けない」こともあります介護職員は、一日の中で非常に多くのことを考えています。食事、排泄、入浴、服薬、記録、ナースコール、事故予防、ご家族への
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