前回(第4回)は、問題文の事実をそのまま抜きだすのはやめて、「要約」をしなければならないことについて説明しました。
今回は、事実の抜き出しを減らすことに関連して、答案の分析方法について説明します。
1:今自分が書いている文章の位置づけを意識していますか?
皆さんは答案を書いている際に、自分が今、答案の「どの部分」を書いているか、意識しながら書いているでしょうか?
「〇〇の論点」とか、「△△の規範」というような意味ではなく、自分が今書いている文は、司法試験の作法にしたがった場合、「どこに位置づけられる文章を今書いているのか」を意識しているでしょうか。
この意識がないと、「〇〇の論点は知っている!」とか、「△△でやったことあるやつだ!」というように、過去の知識に頼り飛びついて、書きたいことを書き、問題文で問われていることから離れてしまいやすくなります。
したがって、常に自分が今書いている文章は、「どこに位置づけられる類の文章なのか」を意識する必要があります。
2:色分けによる分析法
答案の各文が、それぞれどういう類に位置づけられる文なのかを明確に把握する手法として、各文にアンダーラインで色を付けるという方法があります。自分の答案はもちろん、合格答案など人の答案についても色付けをする癖を付けましょう。
具体的には、下記のように4種類の文に分けて、それぞれ4色で色分けします。(下記の4色にしているのは、私的にそれぞれの色の違いが見やすかったからです。各々見やすい色を4色使用して色分けしてみてください)。
オレンジ:事例の問題提起・結論
青:論点の問題提起、規範
赤:問題文の事実の抜き出し
紫:評価・理由付け
色を付けることにより、どの文に該当するのかが一目でわかり、どの類の文が多いのか、それぞれバランスが取れているのか偏っているのかといったことが浮き彫りになります。
良い答案は、一目で「良い答案だ」とわかるような色取りになります。
まずオレンジ(事例の問題提起)で始まり、次に青色(論点の問題提起・規範)が来て、赤(事実)と紫(理由・評価)が交互に出てきて、最後はまた青(論点の結論)、オレンジ(事例の結論)の順で終わる、というように、綺麗に4色の色が順序良く交互に出てきます。
一方で、評価が伸びない答案になると、どれか1色に極端に偏り、4色の色が交互に出てこなくなります。良くない答案例として、以下のような色の傾向が見られることがあります。
赤が多すぎる答案:事実の抜き出しが異常に多い割に、評価をしている部分が少なかったり、内容が薄くなりがちな答案です。こういった答案は、点数配分を無視しており、全体のバランスを崩していることが多いです。
紫がほとんどない答案:上記と被る場合もあります。事実には言及しているものの、評価や理由を示していない状態であることが多いです。赤が極端に多く紫が全然出てこない場合、「あてはめ」と思って書いた文が、実はただの事実の羅列にとどまっているということもあります。
青がほとんどない答案:事実や理由・評価は書いているものの、肝心の規範を設定していない答案が多いです。すなわち、ただの主観的な感想文になっている状態です。
最初は色塗りにも手間取るかもしれませんが、色付けを癖づけていくと、段々と色を塗らなくとも、自分の答案も人の答案も、「この部分は〇〇色だな」という形で、今どこの類の文なのかが一目でわかるようになってきます。
そして、最終的には、頭の中で色付けをしながら答案が書けるようになります。
この色付けの癖による効果として何が良いかというと、色付け始めたての効果としては、事実の抜き出しを減らしてコンパクトな答案を書くことに意識が向けられるようになります。
更に進んでいくと、答案を書きながら、上記の類型の足りない箇所に気が付いて、その場で立ち戻ることができるようになっていきます。
特に、枠組み(規範)の設定をし忘れたままあてはめているミスに気が付けるようになります。このミスは、第3回でも紹介した、受験生の多くが気が付かないうちに失点しているパターンの典型的なものですので、ここに気が付いて修正できるようになれるか否かは大きな差となります。
3:色分けの実例(各色のバランスを見る)
バランスよく色が出ている答案例として、平成27年刑訴の問題で紹介します。
ただし、以下の答案が、刑訴のベストな答案であると誤解して捉えないでください(別の回で説明しますが、答案はベストなものを作成することを目指すものではありません。いかに妥協の産物を作り上げるかの方がはるかに重要です)。
答案の内容ではなく、各色がどういう形で出てくるかのが良いかのイメージを持つ例として見てみてください。
【バランスの良い答案例】
これに対して、バランスの悪い答案は、第4回の行政法の答案例のように、赤(事実)が異常に長くなったりするなど、各色のバランスが悪くなっていたり、どれかの色が欠けていたりします。
例えば、上記の刑訴の例だと、2の「強制の処分」の規範部分が異常に長い一方で3のあてはめが短くなったり、あるいはその逆の答案をよく見かけます。
📌 上記でも述べていますが、上記の答案は、ベストな完璧な合格答案ではありません。2時間・3,000字以内を意識し、配点割合を踏まえて他の設問とのバランスを意識した、最小限度で書いた一つの「妥協例」です。
したがって、この答案を見て、「〇〇の点が足りない」とか、「もっと〇〇にも触れるべきだろ」という意見を持つ人もいると思います。それは、その通りだと思います。実際、「強制の処分」の定義やその理由付けはしっかりと書くようにと採点実感でも述べられていますし、足りない点が多々あるのを承知のうえで書いています。
しかし、これまでに何度も述べていますが、論文「式」試験であり、2時間・3,000字の中で答案を完成させることが何よりも大切なのです。「完璧な答案」を目指す試験ではありません。どこかで妥協しなければならない場面が試験中に必ず出てきます。したがって、普段から「妥協しなければならない場面に直面したときに、どうするか」を最初から念頭に置いておく必要があり、それが「2時間・3,000字」の共通ルールなのです。
したがって、色塗りも、妥協しつつも優先順位を守って答案を完成させるための一つの方法論です。そういう意味合いで、ご自身の答案や、合格答案の色付けをして分析してみてください。
※ なお、妥協の産物を作り上げる話については、別の回で取り上げます。
4:良い答案とは「ミスを見落とされるような答案」である
もちろん、採点ミスを促すという意味ではありません。
良い答案とは,「スーッと流し見されて、多少のミスは見落としてされてしまうような答案」であるという意味です。
つまり、「読み手にストレスを与えず、引っかかりを与えることなくサラッと流し読まれるような答案」が理想的な答案です。
採点者は何千人分もの答案を読みます。その中で、「この文章はどういう意味なのか?」とか、「そんなこと、どこかで述べていただろうか?」というように、何度も読み返されたり、同じところを行ったり来たりして読まれてしまうような答案は、それだけ採点者にストレスを与えますし、間違いの粗探しをされるリスクも当然高まります。
採点者も人間ですから、「本当に合っているのだろうか?」と疑念を抱かせてしまうと、その他の箇所についても、無意識のうちに疑念的な目をもって読まれかねません。つまり、採点者に引っかかりを与えることは、「不合格の推定」を持って読まれるリスクが高まるということです。
自分が何千人もの答案を読む立場になれば、そのストレスや疑念は想像できると思います。
一方で、引っかかることのない、わかりやすくて端的な文章であれば、すらすらと読めるため、何度も戻って読まれるリスクも減らせるでしょうし、その分減点のリスクも減らせます。
流し見されるような良い答案にするためには、下記の点は特に意識しましょう。
①:読みやすい文章で書くこと
当たり前のことですが、これが全てと言っても過言ではありません。よくある読みにくい例としては、例えば以下のようなものがあげられます。
・一文が長くなって文がねじれてしまっている文。
・文の冒頭で何について述べる文なのかの明示がないため、読み進めていかなければ何の話を書いているのかがわからないような文。
前回(第4回)も述べた通り、小学生でもわかるような文章を心がけましょう。
②:難しい言葉を使わないこと
上記①とも被りますが、やたらと難しい言葉や言い回しを使っている答案をたまに見ますが、避けるべきです。判旨などで難しい表現が使用されることがあるため、それらを真似ているのかもしれませんが、判旨と答案では、その目的と読む相手が異なります。また、難しい言葉を使うことで、自分の言葉で説明することから逃げて誤魔化しており、採点者には伝わらないという弊害もあります。自分の言葉でわかりやすく説明しましょう。
③:枠組みを守ること
書いている内容、拾っている事実、理由付けも同じなのに点数が全然違う答案があると思いますが、多くの場合、枠組み(規範)を設定せずに書いていることが原因です。
「規範の設定を受験生は忘れがちである」、とこれまでにも何度も述べていますが、「自分は出来ている」と誤解しがちな点ですので、特に気を付けましょう。
🌸 今回のポイント
①:今自分の書いている文の位置づけを意識すること
②:答案には色塗りをして分析をすること
③:良い答案とは「ミスを見落とされるような答案」である
今回は以上です。
次回は、一度、短答式試験を中心とした戦略・方法論と、短答と論文はセットで考える戦略についてお話しします。
以上の話を踏まえて、
例えば、色分けの内容は理解したものの、具体的な色付けの仕方に悩む人、自分の答案が読みやすい文章になっているか客観的に知りたい人はcoconalaで個別相談を受け付けていますので、ご検討いただければと思います。
上記の内容に限りませんが、現在の学習状況や悩みをお聞きして、何を優先すべきかを一緒に整理します。司法試験まで残り60日を切りましたが、方法論や考え方を変えれば、ここからでも合格ラインは超えられます。
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こちらは、事前アンケートにお答えいただき、アンケート内容を踏まえて、現在の状況や弱点、答案のクセなどを分析して、個別具体的な問題点の指摘、学習計画、メンタル面の調整など、本質的な問題点に回答します。
答案をご提供いただければ、それも踏まえて分析いたします。