【第3回】2時間・3,000字で答案を書くための方法論

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法律・税務・士業全般
前回(第2回)のおさらいです。
想定外は一切許されない試験の性格上、最悪の状況を最初から想定した戦略を立てる必要があるため、受験生共通のルールとして、2時間・3,000字で答案を完成させる必要があることをお話ししました。

そして、3,000字以内で答案を完成するためには優先順位を付けざるを得ず、以下の①~⑤は絶対に省くことが出来ないことをお話ししました。
①:問いに「形式的に」答えること
②:問いに「正しい方向を向いて」答えること
③:三段論法を最低限守ること
④:三段論法を維持するために「最低限度の規範」の論証がいること
⑤:具体的な検討のため、 問題文の事情を「最低限」踏まえて検討すること

そして、上記の①~⑤を書くことが出来て初めて
⑥: あてはめを充実させること
を書くことが出来るものの、字数的にその余裕はないところまでが前回の話です。

今回は、上記の優先順位①〜⑤について、それぞれが具体的に何を意味するのかを説明します。

①:問いに「形式的に」答えること

当たり前のことですが、問いに「合わせて」答案は書かなければなりません。
例えば、設問で「Aの請求は認められるか」と聞かれていたら、答案の末尾は、「Aの請求は認められる。」もしくは、「Aの請求は認められない。」のいずれかで締めなければなりません。
「そんな当たり前のこと今更言うな」と思われるかもしれません。
しかし、前回、「一応の水準」のレベルは、「形式的に問いに答えられていた」答案レベルのものが非常に多いと話した通り、問題を読んでいない受験生は非常に多いのです。

例えば、前回紹介した、令和5年度行政法「設問1⑵」の問題でも、問題文を読んでいない受験生が続出しました。
この問題は、原告適格の問題ですが、原告適格といえば受験生全員が用意している、判例(最大判平成17年12月7日)を踏まえた規範がありますが、あの規範を書いて検討した人は0点でした。

会議録には、こう書かれています。
『弁護士F:本件でも、Dを本件解散命令の相手方に準ずる者として捉えられるかどうかを検討しておく必要があるように思います。』
『弁護士E:そうですね。では、行訴法第9条第2項による検討を行うことなく、法の規定を踏まえて、Dに本件解散命令の取消訴訟の原告適格が認められることになるのか、検討してください。』

「行訴法9条2項よる検討」とは、行訴法9条2項の考慮勘案事項にしたがった検討のことをいいますが、これは、受験生全員が覚えているであろう、上記判例に従った検討(法律の手がかりテストを行い、公益からの切り出しテストを行う判断方法)です。すなわち、いつも受験生が行っている原告適格の基本的な判断方法をいいます。

「いつもの方法で検討はしないように」と丁寧に示してくれているのにもかかわらず、「原告適格の問題の規範は覚えている!」と飛びつき、多くの受験生は自分の用意している規範を書いて検討した結果、撃沈しました。
設問でも「ただし、行政事件訴訟法第9条第2項による検討を行う必要はない。」とわざわざ明示されていますが、多くの受験生は適切に読んでいなかった、もしくは無視してしまったようです。

行訴法9条2項に従わない原告適格の検討を事前に用意してきた受験生は、ほぼいないと思います。しかし、問われていることは問題文に明確に書かれています。上記の会議録や設問の通り、「法の規定を踏まえて」、「Dを本件解散命令の相手方に準ずる者と捉えられるかどうか検討」して、「原告適格が認められるか」否かを書けば良いのです。

「そんな検討はしたことがないし、知らない知識だから書けない」と言うかもしれませんが、知っているか否かは関係ありません。問題文でそう問われている以上、問いに従った検討をしなければならないのです。

なお、受験生が知らない問題が出てくれた方が、実はありがたいのですが、その話はまた別の回でお話しします。

📌 令和5年度行政法「設問1⑵」の採点実感より、「一応の水準」に達している者とは、会議録で示されていた平成18年判例、平成25年判例に『言及した上で、社会福祉法人に対する解散命令の法効果を検討し、本件解散命令がDの権利等に与える法効果を検討して、Dに原告適格が認められるかについて一定の結論を導いているもの』とありました。

平成18年判例、平成25年判例の内容については特に述べられておらず、「言及」としか書かれておりません。これらの判例の内容は会議録に示されているため、この判例を「規範」として設定すれば良かったといえます。つまり、文字通り「言及」していれば良いということです。そして、あてはめについては「一定の結論を導いている」としか記載されておらず、内容については一切触れられておりません。

つまり、「一応の水準」のレベルとは、会議録で与えられた、平成18年、平成25年判例を「規範」として設定して、その「規範」にしたがって、Dに原告適格が「認められる」、あるいは、「認められない」と書いた答案ということになり、内容の出来は問わないレベルだったということがわかります。これが、第2回でお話しした、形式的に問われていることに答えられていれば、合格レベル(一応の水準)だったということです。

一方で、「理屈はわかったが、解いたことのない問題に対してどう書けば良いかわからない」という受験生もいると思います。そういった悩みについては、別の回で取り扱います。

※ なお、上記のような採点実感の書きぶりから、「行政法は書き写せば点が入る」と勘違いしている受験生が稀にいますが、そうではありません。問題文に問われていることが明確に書かれているので、問いに従った「結果」として、「問題文を書き写すに近い答案になった」だけであり、「書き写せば合格点になる」わけではありません。また、常識的に考えても、司法試験委員が、問題文を書き写すことを要求しているはずがありません。

②:問いに「正しい方向を向いて」答えること

問題文では、問われていることが明確に書かれています。したがって、どんなに内容として優れていることを書いたとしても、問われている方向と違う方向を向いていた場合は、一切評価されません。

上述の令和5年度の行政法の問いは、「Dに原告適格が認められるか」なので、結論として原告適格が認められるか否かを示していれば、一応、問われていることに沿った回答はしていることになります。

しかし、「行訴法9条2項にしたがった検討をしてはならない」との指示がある以上、どんなに内容が優れていたとしても、行訴法9条2項に従って検討した場合は0点です。これは、1回目の記事の例でいえば、「好きな食べ物は?」と聞かれているのに、「サッカーが好きです」と答えているのと何ら変わりません。

すなわち、司法試験の論文式試験は、文字通り、論文「式」試験であって、論文ではありません。つまり、内容のレベルの高さを競う場ではないのです。

📌 同じような例としてよくあるのが、憲法や経済法の条文選択の誤りです。近年の憲法では条文選択で悩ませる問題は少なくなりましたが、問題文では、どの権利の問題として検討してほしいかが明確に書かれています。したがって、「〇〇条の問題としても考えられるのではないか?」というような発想はあり得ません。仮に、その発想が憲法上どんなに斬新なものであったとしても、問われていない以上書いてはいけません。

ちなみに、私もこのミスをしてしまったことがあります。平成30年度の憲法で、規制対象の書籍の販売業者に関して、おしゃれなセレクトショップ的な本屋を思い浮かべて(どう考えても本件は違いますが)、「販売業者が自由に書籍を選択して販売する自由として、保障の程度の高い表現の自由の問題として考える余地があるのではないか?」と考え、21条の問題として検討してしまいました。憲法的にみて、販売業者が書籍(表現物)を選択して販売する行為は、販売業者が読んでもらいたい書籍を、本屋という場を通じて伝えるという意味合いで、表現行為の一種と捉える余地もあるかもしれません(当時の私はそのような構成をしたと思います)。

しかし、仮にそれが理論的に正しかったとしても、問題文では明らかに22条の問題として問われている以上、書いてはなりません。

この、「正しい方向を向く」には多義的な意味があります。上記の例は、①の「問いに『形式的に』答えること」とも被りますが、例えば、論点レベルにおいて「正しい方向を向いた」検討が出来ているかという問題もあります。

典型例は、「考慮事情の使い方や、判断のポイントの意識」の問題です。
例えば、刑訴の任意処分の相当性を検討する際に「必要性」、「緊急性」、「相当性」の基準を挙げる受験生は多いと思いますが、この使い方を理解していないと思われる受験生は、実は意外と多いです。

任意処分の相当性の検討において一番キモとなるポイントは、「捜査の必要性と捜査によって失われる利益との合理的な権衡」です。つまり、「捜査の必要性に対して、失われる利益とのバランスを逸していないか」を判断する手段として、「必要性」や「緊急性」や「相当性」の観点から検討するのです。
したがって、「必要性が認められる」、「緊急性も認められる」、「〇〇なので相当である」というように、これらを並列的に記載している場合、どんなに規範が正確で、問題文の事情を沢山拾っていたとしても、それは任意処分の検討として「正しい方向を向いた検討ではない」と評価され、点数は伸びません。

③三段論法を最低限守ること

④最低限度の規範を設定すること

「自分は出来ている」と思っている受験生は非常に多いですが、実際には多くの受験生が出来ていません。

特に、多くの受験生が勘違いしているのが、自分が論証として用意しているものを「規範」と認識している点です。

三段論法は、法的思考の前提です。したがって、自分が論証として用意しているか、知っている知識・論点か否かに関係なく、全ての問いで三段論法は行わなければなりません。
しかし、受験生の多くは、知らない問題が出てくると、途端にこの前提を無視した答案を書いてしまいがちです。

上記の令和5年度行政法の問題でも、法を踏まえてDが本件解散命令の相手方に準ずる者と捉えられるか否かを検討していた受験生はそれなりにいたと思われます。しかし、与えられた平成18年判例、平成25年判例を「規範として設定した」うえで、検討が出来ていた受験生となると、かなり少なかったと思われます(それゆえ、「形式的に答えられていた」だけでも、「一応の水準」レベルだったのです)。

つまり、多くの受験生は、Dが解散命令の相手方に準ずる者か否かの判断を、問題文の事情から「場当たり的に」検討していた、ということです。枠組み(規範)を設定せずに検討したとしても、それは法的思考に基づく検討ではなく、ただの主観的な感想文にとどまってしまいます。

この点に関しては、論文式試験の根幹にかかわる部分ですので、別の回で別途取り上げます。

⑤:問題文の事情を最低限踏まえた検討をすること

前回(第2回)話した通り、3,000字以内で答案を完成させることは難しいことをお話ししました。
この点は、頭で理解するだけでなく、肌感覚で掴んで欲しいので、絶対に3,000字で答案を書くことを心掛けてください。

📌 今後皆さんも実感すると思いますが、実務につくと、私たちは非常に多くの書面を読み、書くことになります。そして、「簡潔に言いたいことがまとまっている文章」のありがたみを実感することになります。一方で、長くて小難しい言い回しで何が言いたいのかわからない冗長な文章に、非常にイライラすることになります。

司法試験は、司法試験法1条の通り、「裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者」としてふさわしいか否かを「判定することを目的」とした試験である以上、実務家登用試験であることを忘れてはいけません。

私は学生時代に、元裁判官の教員から、「小学生でもわかるような文章で書きなさい」とのお言葉をいただいたこともありました。今のうちから、「簡潔かつ、わかりやすい文章」を書くことを心がけておきましょう。
3,000字しか書けないのであれば、問題文の事実を、引き写せば引き写すほど、本当に書くべきことが書けなくなります。
一方で、字数が足りないからといって、問題文の事情を一切無視して答案を書くことも出来ません。

つまり、字数のジレンマに私たちは悩まされることになります。
このジレンマを解消するには、「事実の抜き出しを端折りながら,多くのことを検討する」という選択肢を採らざるを得ず、この方法が論文式試験における戦略となります。

🌸 今回のポイント

①:「形式的に」問いに答えられていない受験生が多いことを肝に銘じること
②:内容として優れていても、問われている「方向性」を向いていない答案は評価されないこと
③:自分が論証として用意しているか、知っている知識・論点か否かに関係なく、全ての問いで三段論法は行う(規範を設定する)ものであること
④:2時間・3,000字で答案を書くためには、事実の抜き出しを端折りながら、多くのことを検討するしかないこと

今回は、以上です。
次回は、「事実の抜き出しを端折りながら,多くのことを検討する」具体的な方法について、説明します。

以上の話を踏まえて、
例えば、2時間・3,000字で書くためには、具体的に自分の答案のどこを修正すれば良いか悩む人、そもそも「問いに答えられている」かどうか自信がない人は、個別相談を受け付けておりますので、検討いただければと思います。

上記の内容に限りませんが、現在の学習状況や悩みをお聞きして、現在どこに問題があり、何を優先すべきかを一緒に整理します。
司法試験まで残り60日を切りましたが、方法論や考え方を変えれば、ここからでも合格ラインは超えられます。

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こちらは、事前アンケートにお答えいただき、アンケート内容を踏まえて、現在の状況や弱点、答案のクセなどを分析して、個別具体的な問題点の指摘、学習計画、メンタル面の調整など、本質的な問題点に回答します。
答案をご提供いただければ、それも踏まえて分析いたします。

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