新規事業の失敗は、アイデア以上に「人選の設計ミス」で起きます。
これは特に、中小企業の新規事業で顕在化しやすい論点だと実感しています。
新規事業という言葉を聞くと、多くの人は「新しい商品」「新しいサービス」「新しいビジネスモデル」をまず思い浮かべます。
企画書を作り、アイデアを出し、PoCを回し、プロダクトを磨く。
確かにそれらは必要です。しかし、私はその前段階に、もっと重要な工程があると考えています。
それは、新規事業を作ることではありません。 新規事業を作れる人を集積することです。
この手順を間違えると、新規事業は行き詰まります。
なぜなら、新規事業は「不確実性への耐性」と「創造性」が同時に求められる環境だからです。
そこには、あらかじめ決まった成功パターンは存在しません。 そのような環境では、どんなに優れたフレームワークや手法を持ち込んでも、それを使いこなす人がいなければ機能しません。
新規事業が失敗する多くのケースでは、事業案や事業計画の策定が先行してしまい、肝心の「新規事業をつくれる人材を募り、選定する工程」を見落としがちなのです。
新規事業は、既存事業とは性質がまったく異なります。
前例がなく、数値も揃っておらず、社内の理解も不十分。 判断材料は常に不足し、意思決定は仮説ベースにならざるを得ません。
この環境で成果を出せる人は、決して多くはありません。 優秀な管理職でも、トップ営業でも、必ずしも適任とは限りません。
だからこそ、新規事業で最初にやるべきことは「人を集めること」です。
そのために、人材を選ぶ適性基準を先に設計します。
適性基準が存在しない状態で人を選ぶと、どうなるか。
選ばれるのは、声を大にして存在感を示す人、上司の覚えが良い人、手が空いている人など、およそ新規事業の適性とは無関係の基準でチームが編成されてしまいます。
あるいは「とりあえずエースを出そう」という発想で、既存事業の主力人材が引き抜かれる。 これは、新規事業にとっても、既存事業にとっても不幸です。
新規事業に必要なのは、肩書や過去の実績よりも、先ずは、曖昧な状況で仮説を立て、未完成な状態でも前に進める行動特性です。
それを見極めるための基準がなければ、人材選抜は感覚論になります。
そこで、最初にやるべきは、「この事業には、どんな特性を持つ人が必要か」を明文化すること。これが、新規事業の本当のスタートラインです。
なお、「曖昧な状況で仮説を立て、未完成な状態でも前に進める行動特性」を含め、新規事業に必要な適性基準を、具体的な評価項目やコンピテンシーに落とし込む作業は、人事や制度担当の専門領域です。
経営・事業側がまずやるべきは、「どんな特性を持つ人を新規事業の土台にするか」を決めることです。
適性基準が定まった後に、初めて人を集めます。
方法はシンプルで、大きく二つしかありません。
1. 社内外からの選抜・採用
社内で基準に合致する人材を見つけ、必要があれば社外から補う。
ここで重要なのは、「万能な人」を探さないこと。
適性基準に照らして、足りないピースを埋めるという発想が必要です。
2. 社内公募
これは意外と軽視されがちですが、新規事業においては非常に重要な手段です。
なぜなら、新規事業は本人の動機が弱いと続かないからです。
ただし、応募は自由でも、選抜はあくまで適性基準に基づいて行う。
この線引きが、新規事業を「やりたい人の集まり」から「機能するチーム」へ変えます。
ここまでの内容を踏まえると、「新規事業の基礎工事」は以下のように言い換えることができます。
第1段階: 挑戦が報われる評価制度を前提として整える
第2段階: 新規事業に必要な適性基準を設計する
第3段階: その基準で、人材を集め、集積する
第4段階: その状態が整ってから、初めて事業を作り始める
この「基礎工事」は地味で根気のいる作業かもしれません。
しかし、ここを疎かにしないことこそが、新規事業を成功に導く最大の近道だと私は考えています。まずは足元を固めることから始めてみませんか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
新規事業における「人」の課題は、適性基準や組織づくりにお悩みの企業様と、新たな挑戦に向けたキャリアに迷われる従業員の方、それぞれの視点で生じるかと思います。
どちらのお立場からのご相談も承っておりますので、「まずは状況を整理したい」といった段階でも、ぜひお気軽にお声がけください。