インドネシア語の正書法!PUEBI、KBBIって何?日本人が知らない言語規範の世界

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【PUEBI(綴りのルール)について】

インドネシア語って簡単なイメージはありませんか?インドネシア語は、世界で最も簡単な言語の一つであることがよく知られていると思います。しかし、インドネシア語を学習している方、翻訳や通訳に携わっている方なら、一度は「正しい表記」について疑問を持ったことがあるのではないでしょうか。実は、インドネシア語には国家が定めた公式の綴り規則が存在します。それがPUEBI※(プエビ)です。なんとこれ、インドネシアの義務教育であり、ルールが非常に複雑なのに、書き言葉では必ずと言っていいほど遵守する必要があります。
本記事は、インドネシア語ネイティブの日本語翻訳者とともに、初めてPUEBIを包括的に、日本語で解説します。翻訳者、通訳者、研究者、そしてインドネシア語を本格的に学びたいすべての方に向けて、この非常に重要な言語規範を紹介します。
※Ejaan Bahasa Indonesia yang Disempurnakan (EYD) Edisi V(インドネシア語正書法第5版、2022年-現在): 2022年8月の言語庁長官決定に基づき、PUEBIを更新した【EYD第5版】という名称になり、昔の呼び方(EYD)に戻りました。

【PUEBIとは何か~正式名称と制定の背景~】

PUEBIはPedoman Umum Ejaan Bahasa Indonesia(インドネシア語綴り総則)の略称です。2015年にインドネシア教育文化省(Kemendikbud)によって制定された、インドネシア語の正書法に関する公式ガイドラインです。
PUEBIは単なる「推奨ルール」ではありません。これは
・公的文書
・教育現場
・出版物
・報道機関
・翻訳通訳
など、あらゆる公式な場面で従うべき標準とされています。

【PUEBIが定める主な内容】

PUEBIは以下の要素を規定しています。
1. 文字の使用(アルファベットの正しい使い方)
2. 大文字・小文字の使い分け
3. 斜体の使用
4. 単語の書き方(分かち書き、接頭辞・接尾辞の扱い)
5. 句読点の使用(カンマ、ピリオド、セミコロンなど)
6. 略語と頭字語
7. 数字の表記
綴りのルールだけでなんと7種類もあるんです。

【PUEBIを実際に使用することの重要性】

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医療翻訳、法律翻訳、技術翻訳など、専門的な翻訳を行う際、PUEBIの知識は必須なんです。

たとえば、インドネシアの医療現場で、

「dirawat」(治療される)
という単語があります。これをもし、
「di rawat」
と分かち書きすると、意味は通じても公式文書として不適切とされる可能性があります。
実はこのような表記の誤りは、インドネシア人にとってもよくあるミスなんです。
看板や公的文書においても時折見られます。例えば、「dikontrakkan(賃貸可能)」が誤って「di kontrakkan」と分かち書きされた看板を見かけたこともあります。
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(di kontrakkanの写真)

また、同じ文字の組み合わせであっても、単語のスペースの有無によって意味が大きく変わる場合があります。
「Dia dirumahkan?」
(彼は解雇されましたか?)
という意味になりますが、これをスペースを間に入れて、句読点を加えると
「Dia di rumah, kan?」
(彼は家にいますよね?)
という全く異なる意味になります。このように、正書法は意味の伝達において重要な役割を果たしていると言えます。
実は、ただの綴りルールなのに、AI翻訳では途方もない膨大なルールと、学習量が必要なのです。
現代のAI翻訳ツール(チャットGPT、Gemini、Claude など)は、PUEBIに完全に準拠するのは現実とは言えません。なぜなら、
・接頭辞と前置詞の区別
・複合語の分かち書きの有無
・略語の表記
細かいつづりルールは、機械的なつづりルールの処理に留まりません。
しかもこういうルール

更新されるんです!

時代の流れによって、使う言葉は変わっていきます。インドネシア政府はこのような世の中の流れに合わせないと、インドネシア語を記述システムに対応できないため、ルール変更を余儀なくされています。過去の膨大なデータを元に処理するAIでは、最新情報のアップデートや、文脈判断はかなり難しいのです。つまり、人間の翻訳者がチェックする必要があります。

【KBBIの正式名称と役割】

KBBIはKamus Besar Bahasa Indonesia(インドネシア語大辞典)の略称です。インドネシア言語局(Badan Bahasa)が編纂する、インドネシア語の公式辞書です。
KBBIは、
・標準インドネシア語の語彙を収録
・語の定義、用例、語源を提供
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(KBBIの写真。かなり分厚い。)

この本は、日本の広辞苑的存在ですが、広辞苑とは違い、

発行元がインドネシア政府なのです。

なぜこのことが重要なのかというと、日本語とは違い、何が正しいスペルで、何が間違ってるのかということが、あまりないのです。
例えると、日本語の場合は、漢字辞典や、国語辞典を、民間が発行しても、必ず意味や定義が画一的な情報になります。(いや、なるべきです。)
しかしながら、インドネシア人は口語で使われることが主流だったので、そのようなスペリングの「一般ルール」が形成されていないのです。だから、政府が発行した辞書を遵守するかどうかで、インドネシア語の綴りが正しいあるいは間違っているかが、決まるのです。

KBBIには政府が定めた標準的な綴り(Ejaan Baku)と古くからある非標準的な綴り(Ejaan Tidak Baku)が記載されています。インドネシアでよく見られる表記の誤りとして、薬局の看板が挙げられます。標準的な綴りは「Apotek」ですが、古くから「Apotik」という非標準的な綴りを看板に使用している薬局も存在します。
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("間違った"表記をしているApotikの看板。)

また、翻訳作業においても、こうした綴りの確認は必要不可欠です。筆者の経験では、以前「城」に関する記事の翻訳を担当した際、インドネシア語で「kastil」と表記していましたが、後に正しくは「kastel」であることに気づきました。納品前に記事全体を再チェックし、該当箇所を修正しました。その後、複数のインドネシア人の友人に「kastel」が正しい表記であることを伝えたところ、彼らも初めて知ったと驚いていました。このように、インドネシア人のネイティブスピーカーであっても、標準的な綴りを正確に把握していないケースは少なくありません。

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(インドネシア政府発行のポスター。kastelについて鬼滅の刃の無限城で注意喚起をしてる。)

【まとめ:PUEBIとKBBIを知ることの意味】


いかがでしたでしょうか?
インドネシア語は簡単な言語だと言われていますが、つづりのルールについては、世界で最も難しい言語規範の一つなのです。

インドネシア語を「なんとなく通じる」レベルから「公式に認められる」レベルに引き上げるには、PUEBIとKBBIの知識が不可欠です。

特に
・翻訳者・通訳者:クライアントの信頼を得るため
・研究者:論文や発表での正確性のため
・ビジネスパーソン:公式文書作成のため
・学習者:言語の深い理解のため

これらの規範を知ることは、インドネシア語をプロフェッショナルに使いこなすための第一歩です。

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【参考文献】

・Pedoman Umum Ejaan Bahasa Indonesia(PUEBI)公式ガイドライン
・Kamus Besar Bahasa Indonesia(KBBI)オンライン版
・Badan Pengembangan dan Pembinaan Bahasa, Kemendikbud RI

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