はじめまして。フランス語翻訳者の遠藤ゆかりです。
このたび、ココナラコンテンツマーケットに、
「TGV(フランス高速鉄道)に愛をこめて 全20話(うち、番外編3話)」
と題したエッセイを出品させていただきました。
約7万字、単行本1冊に相当する文章のため、PDFファイル(閲覧専用PDF)でご提供しています(全107ページ)
このエッセイは、過去に note にて別名義で公開していた記事を、改題・再構成したものです。新しいエピソードは加わっていません。また、画像はなく、文章のみとなっていますので、ご注意ください。
1990年3月と2012年4月~2020年10月にTGV(フランス高速鉄道)でさまざまな都市を訪れました。乗車前後や乗車中に起きた出来事の思い出話をつづったエッセイです。
ココナラコンテンツマーケットの出品説明だけではどんな文章なのかまったくわからないと思いますので、「はじめに」の全文と、第4話「突然の豪雨で立ち往生」・第11話「停電のため運休します」の冒頭部を「試し読み」としてこちらに掲載いたします。
ご購入の参考にしていただければ幸いです。
TGV(フランス高速鉄道)に愛をこめて 全20話(うち、番外編3話)
1990年3月・2012年4月~2020年10月の乗車記録
はじめに
プロローグ:昔々のTGV 1990年3月(アンジェ~パリ~アヴィニョン~ニース~パリ)
第1話:2等席卒業宣言 2012年4月(パリ~レンヌ往復)
第2話:これからは1等席で 2013年6月(パリ~ランス往復)
第3話:ドイツ国鉄乗り入れ列車 2013年6月(パリ~ストラスブール往復)
第4話:突然の豪雨で立ち往生 2013年6月(パリ~アンジェ往復)
第5話:幻のサービス 2014年10月(パリ~リヨン往復)
第6話:(番外編1)タリス 2014年10月(パリ~ブリュッセル往復)
第7話:(番外編2)ユーロスター 2014年10月(パリ~ロンドン往復)
第8話:さまざまな人間模様 2014年10月(パリ~ルクセンブルク往復)
第9話:フランス~スイスを結ぶTGV Lyria(リリア) 2015年10月(パリ~バーゼル往復)
第10話:至れり尽くせりのサービス 2015年10月(パリ~ジュネーヴ往復)
第11話:停電のため運休します 2015年10月(パリ~コルマール往復)
第12話:26年ぶりの地中海 2016年10月(パリ~ニース片道)
第13話:ランチのためだけに 2017年10月(パリ~ストラスブール往復)
第14話:最新型車両 TGV inOui(イヌイ) 2017年10月(パリ~トゥールーズ~ボルドー~パリ)
第15話:ふらっと美術館へ 2018年10月(パリ~ナント往復)
第16話:新旧ふたつの駅 2018年10月(パリ~リール往復)
第17話:いざ、バスク地方へ 2019年10月(パリ~バイヨンヌ往復)
第18話:(番外編3)アンテルシテ 2019年10月(パリ~ルーアン往復・パリ~ドーヴィル往復)
エピローグ:旅も人生も、まだまだつづく 2020年10月(パリ~リヨン往復)
はじめに
プロローグの話はあまりにも古すぎ、本編も情報としてはすでに過去のものとなった。しかし、だからこそ、記録として残す価値があるのではないかと考えている。
フランスの旅行記は、無数にある。美しい写真が添えられた記事も、世の中にあふれるほどだ。
それでも、私はこれまでの旅を文章の形で残したかった。だが、書くからには、多少とも独創的なものにしたい。
それで、TGV(フランス高速鉄道)の乗車記録という形をとることにした。
この物語には、それなりの意味があると自負しているが、本当のところ、意味などなくてもいい。読み物として楽しんでもらえれば、それでじゅうぶんだ。
記憶違いや勘違い、思いこみなどはあるかもしれないが、すべて私自身が実際に体験したことをもとに書いている。
ささやかなこの物語のなかでTGVの旅をご一緒してくださることに、心からの感謝をこめて。
第4話:突然の豪雨で立ち往生 2013年6月(パリ~アンジェ往復)
アンジェ城の広々とした庭園を歩きながら、私は旧友に送る絵葉書に添える言葉を考えていた。旧友とは、プロローグに出てきた親しい同級生のことだ。
私はこの23年前に、フランス北西部の町アンジェで、この同級生と一緒に語学研修を受け、その後、TGVで南フランスを旅してまわった。学生時代の友人で、いまでも連絡をとりあっているのは、彼女だけである。
庭園をぐるりとまわったあと、城壁にのぼり、はるか下方を流れるメーヌ川を眺めながら、私はしばし昔の思い出をたどった。アンジェには、よい思い出しかない。授業は楽しく、ホームステイ先の家族は親切で、学校帰りにはなじみのカフェでくつろいだ。
絵葉書に添える言葉がひらめいた。私はそれを書いて、絵葉書をバッグのなかにしまった。帰りのTGVに乗る前に、駅前のポストに投函しよう。
この帰りの列車に乗った30分後、私ははじめての事態に遭遇する。その結果、アンジェでの懐かしい思い出に、忘れられない思い出がもうひとつ加わることになった。
***
パリからアンジェまでは、TGVで2時間かからない。すでに知っている町で、土地勘もある。だから、ちょっとそこまでという気分で出かけていったのだ。
現地でできるだけ多くの時間をとるために、私はパリ・モンパルナス駅を7時35分に出発する列車に乗った。行きはなにひとつ問題がなく、アンジェ・サン=ロー駅に9時32分に到着した。
駅舎はすっかり新しくなり、昔の面影はなかった。以前の建物を改修し、拡張したらしい。しかし、駅前の雰囲気はほとんど変わっていなかった。
記憶を頼りにアンジェ城へ行き、城内に入る。ここには、「ヨハネの黙示録」をテーマにしたタペストリーがある。これは現存するフランス最古のタペストリーだ。それをじっくり鑑賞したあと、庭園を散策し、城壁の上にのぼり、ふたたび下におりて、庭園内のレストランで食事をした。
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第11話:停電のため運休します 2015年10月(パリ~コルマール往復)
冬のような寒さだった。
私は上着の襟を手で合わせながら、コルマール駅前の公園を急ぎ足で歩いていた。これから『イーゼンハイム祭壇画』に会いに行くのだ。
16世紀ドイツの画家グリューネヴァルトの傑作であるこの祭壇画は、フランス北東部の町コルマールのウンターリンデン美術館にある。しかし、現在この美術館は改修工事のために休館中だ。そのあいだ、『イーゼンハイム祭壇画』は、近くのドミニカン教会で展示されているという。
美術館に入れないのは残念だが、おもな目的はこの祭壇画なので構わない。いずれまた、美術館には来ることができるだろう。
コルマールは、第3話で語ったストラスブールの南に位置する町で、ストラスブールからTER(在来線)で約40分の場所にある。だが、私は乗りかえが好きではない。列車1本で行けるなら、それで行きたいのだ。
フランス国鉄のサイトで検索すると、わずかながらパリとコルマールを結ぶTGVがあった。所要時間は、2時間50分である。
行きは、パリ東駅6時55分発。コルマール駅9時45分着。
帰りは、コルマール駅16時14分発。パリ東駅19時05分着。
日帰りで行くには、この列車しかない。だから私は、この列車の乗車券を買った。
ところが、帰りの列車が停電で運休してしまったのである。
***
パリ東駅6時55分発の列車に乗るには、かなり気合がいる。私は、パリ東駅があるエリアから離れた場所のホテルに泊まっていた。余裕をもって駅に到着したかったので、ホテルを5時半過ぎに出た。
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