仕事をしていると「このまま続けていいのだろうか」
「結果が出ないな」と感じる瞬間があります。
私もそうです。今も時折、自信を失いそうになることがあります。
そんな時に出会った、ある高級時計ブランドの言葉を紹介します。
(1,700字くらいの記事です。)
音楽を続けている私にとってのbeat
私はドラムを10年ほどやっていますが、今の自分を自己評価すると、
中級に差し掛かった程度だと思っていて、ただただ、趣味として楽しんでいます。
ドラムを始めたのが31歳ごろで遅いのですが
3歳ごろから続けているピアノ(クラシック)のベースがあったので、
完全なゼロからではなく、いくぶん音楽には慣れている状態からのスタート。
クラシックピアノが、「それしか音楽をやる選択肢がなかったから、仕方なく続けていた」だけだったのと違い
ドラムは、主に好んで聴いている音楽に、能動的に触れることができます。
レゲエバンドでキーボードを弾いていた頃も、どちらかというと、
リズムを担当していた自分がいます。
ギタリストやボーカリストのように、自分が前に出るタイプではないのも一つですが、レゲエという音楽において、キーボードに求められる役割が
「裏拍のリズム」でもあり
鍵盤を弾きながら、「なんだか、打楽器やってるみたいだなぁ」と感じていました。
そのうちに、あるきっかけで一念発起しドラム教室の体験レッスンへ。
同い年の先生とも意気投合し、多忙で都合がつかなくなるまでの数年通いました。仕事が心斎橋なので、普段の仕事帰りに近くにあるスタジオで1時間の個人練習。
音楽と時計はbeatを刻む
音楽は時間を可聴化し、時計は可視化しています。
英語では両方beatと言いますよね。
ドラマーの中にももちろん、天才肌もいらっしゃるのですが
基本的には、毎日の地味な練習の積み重ねが生きる楽器です。
スタジオで難しい曲の譜面をこなせるように頑張って叩くよりも、
自室の練習パッドで基礎練習を毎日重ねる方が、
遥かに自分の技術の向上を助け、曲の攻略に役立つと実感します。
スポーツ選手の毎日のランニングとか、筋トレのようなものです。
プロのドラマーだと、隙間時間にイヤホンでクリック音(メトロノームのカチカチの音)を聴いているという話も。
単純動作を一定時間繰り返し、それをほぼ毎日やるという、
地味でつまらないトレーニング。
ハイハットを刻む一定のビートは
クォーツ時計のカチコチ動き続ける針(水晶振動子の反復運動の賜物)や、
機械式ならガンギやアンクルが一定に繰り返す動きと通じます。
毎日の地味な練習の積み重ねは、
集中力の必要な緻密な作業に妥協しない時計職人や
理想を追い求める高級時計メーカーのストイックさを想起させます。
ある時計メーカーの職人魂
A.ランゲ&ゾーネというブランドがありますが
“NEVER STAND STILL”というキャッチコピーが掲げられています。
「決して立ち止まらない」という意味だそうです。
このメーカーの歴史を見てみると
創業は1845年ドイツのザクセン州グラスヒュッテ。
高級時計メーカーに多いスイス時計ではなく、ドイツです。
創業者のフェルディナンド・アドルフ・ランゲから「A.ランゲと息子たち」という意味のブランド名。
「完璧な時計」を理念に掲げ、高精度懐中時計を開発、
ドイツを代表する高級時計メーカーに。
ところが1945年の第二次世界大戦末期、
空爆で工房が壊滅的打撃を受けたことや、
終戦後は東西ドイツに分断、ランゲという会社は国有化されました。
つまり、このブランド名は「伝説」(過去のもの)となってしまったということでした。
その後、1989年のドイツ再統一があり、創業者のひ孫が、始まりの地グラスヒュッテにてブランドを再始動。
一度消滅し、見事な復活を遂げたという壮絶な歴史があります。
戦時中の40年も長い間、苦難の期間だったにもかかわらず、
それを乗り越えて現在は世界中に直営ブティックや正規店を構える、
周知の姿に返り咲いたのです。
その歴史を踏まえての「NEVER STAND STILL=決して立ち止まらない」には頭が上がりませんね。
毎日続けることや理念、理想を掲げて、達成するまで諦めないこと
これは誰でもなかなかできることではなく毎日の自戒にもしたいフレーズです。
高級時計といえば、
成金や見栄、マウンティングの材料なんかを連想してマイナスイメージを持つ人も多いですよね。
他でもない私自身、高級ブランド時計を仕事で扱ってはいますが
自分用に所有するほどの身分ではありません。
それを一本でも、または複数のコレクションがある人を羨ましく思うことは多々あります。
でも、高級時計って、職人の技術や企業の弛まぬ努力、理念や理想の追求によって完成する作品だと知れば
”見栄の象徴”などと片づけてしまうのは、あまりにも表面的で、もったいない見方だと感じるのです。