「自分を大切にしてくださいね」という言葉を聞くたびに、どこか遠くの国の物語のように感じて、胸のあたりが少しだけチクッとする。そんな経験はありませんか。
相手が何を求めているのか、どう振る舞えばその場が丸く収まるのか、あなたはきっと誰よりも早くそれに気づき、そっと自分を横に置いて相手のために心を尽くしてきたはずです。
相手の笑顔が見られたときは、少しだけホッとする。けれど、いざ一人になって「じゃあ、私の好きなことは何だろう?」と自分に問いかけた瞬間、目の前が真っ白になって、言いようのない虚無感に襲われてしまう。
「何が食べたい?」「どこへ行きたい?」という簡単な質問にさえ答えが見つからない。そんな自分をどこか冷めた目で見つめてしまう。そんなあなたは、決して心が空っぽなわけではありません。
心理カウンセラーとして、僕はこう考えています。あなたが今感じているその「虚無感」は、これまであなたが誰かを守るために、一生懸命に「自分」を隠し続けてきた優しさの証なのだと。
繊細な気質を持つ方は、周囲の空気感や相手の感情をまるで自分のことのように敏感にキャッチします。相手に合わせることは、あなたにとって一種の「特技」であり、これまでの人生を生き抜くための大切な知恵だったんですよね。
でも、ずっとアンテナを外側にばかり向けていると、自分の内側から届く小さな声がだんだんと聞こえなくなってしまうことがあります。
自分の「好き」という感覚は、使わないでいると少しずつ眠りについてしまうものなんです。だから、いざ自分のために何かをしようとしてもエンジンがかからなくて、虚無感だけが残ってしまうのは、ある意味ではとても自然なことなんですよ。
「自分の好きなことがわからない自分は、中身がない人間なんだ」なんて、どうか自分を責めないでくださいね。あなたはただ、今は少しだけ自分との交信をお休みしているだけなのです。
そんなあなたが「自分を大切にする」という難解なミッションに取り組むとき、まずは大きなことをしようとしなくていいと僕は考えています。
無理に「趣味」を見つけようとしたり、キラキラした「ご褒美」を用意したりしなくて大丈夫です。まずは、自分の中にある「心地悪い」という小さな違和感に気づいてあげることから始めてみませんか。
「本当は今、ちょっと喉が渇いたな」「この靴下、少し締め付けが強くて気になるな」「本当はあの場所に行きたくないな」そんな、ささいな心のつぶやきを拾い上げること。
それが、世界で一番難しいミッションを攻略するための第一歩になります。自分を大切にするとは、特別なイベントを作ることではなく、自分の「快・不快」の感覚を取り戻していく作業のことなのです。
心理カウンセラーとして、僕はあなたのその優しい感性が大好きです。相手に合わせられるその柔軟さは、いつか自分を守るための強さにも変わります。
今はまだ、自分の好きなことをしようとして虚無感が出てきても「ああ、今は休憩中なんだな」と優しく受け止めてあげてください。
少しずつ、少しずつで大丈夫です。あなたが自分の心の声を拾えるようになるまで、僕はいつでもここで待っています。
あなたはあなたのままで、十分に価値がある。そのことを、いつかあなたが心から実感できる日が来ることを願っています。