【詩】銅像にはストールを

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町の中心に建っている 走る少女の銅像
走っているのに 止まっている
彼女には心がある 人が作ったものだから
少女は昔からそうだった 作り物になる以前から
動かない足を持つ私に、動く心などなくて良い と
そう思いながら本当は 心にせがまれずとも
前へ前へ……
夢見る少女の目の前を 人々が通り過ぎていく

朝の雪の霞んだ景色に 蜘蛛一匹
真っ赤な色をして 妙に澄んでいる
彼には心がある 生まれてきたものだから
自分に足りない何かを探して ここまで来たのだった
彼は彼女を一目見て感じた
私が求めていたものは、きっとこの娘に違いない と
彼は少女の贈り物に 透明なレースのストールを拵えた
それは彼の糸だった
ストールを少女の肩に巻きつけて
蜘蛛は少女の胸の中に収まった
そして 自らの命を差し出した
赤い蜘蛛は 少女の心臓になる

少女は 長い呪縛から解き放たれる
喜びに震えながら 雪の地を駆け
この町に 帰ってくるつもりもない
少女の肩に 雪は降って
透明なストールは 真っ白になっている



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