実るほど

実るほど

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こんにちは、ななこです。
以前、呉服店に勤務していました。


呉服屋時代は年に2回ほど、京都で大きな展示会がありました。

販売員はお得意様をお連れして買物をして頂き、場合によっては一緒に観光などもします。

京都の展示会に参加できるということは、それだけの販売員になれたということ。とても嬉しいひとときでした。


会場内を、職人さん達の命の結晶と言っても過言ではない、その全てが詰まった素晴らしい作品たちが埋め尽くす。

その中で、導かれたように1本の帯と出逢った、お客様のおはなしです。

ご一緒させて頂いたお客様は、お茶をきっかけに着物を始められた素敵な方でした。お名前に『穂』という文字が入っていることから

『実るほど頭を垂れる稲穂かな』

という言葉がすきなんです、皇后の雅子様もこの言葉がお好きだそうでと、お名前に重ねた話をさせて頂きました。

着物の柄にはそれぞれ意味や願いが込められていて、『稲穂』は豊穣や神聖さを表します。素敵な出会いを期待していました。こんな素敵な出逢いになるなんて、思ってもいなかったけど。


その日、会場で出会った最後の帯。その裏面にはあの言葉がそのまま刺繍されていたんです。

作品は1点ものばかり。全てを把握するのは難しく、裏面の文字は当然知り得ませんでした。

帯にはあいたスペースがあって、お名前を刺繍してくださるとのこと。ご自分の名前も素敵だけれど、私は、お嬢様のお名前を刺繍して頂いてはどうでしょうと提案しました。

お客様には大切なお嬢様がいて、でも、年頃でなかなか会話が…いつかお嬢様がこの帯に出逢ったとき、改めてお母様の気持ちに気付く。

着物とは、そういう未来への贈り物が詰まっている。

これは、私が着物を好きな理由のひとつでもあります。

『古から未来を繋ぐ物語』

お客様は「これはななこちゃん、わざとやったわね?」なんて言いながらも、結局その帯をお手元に置いてくださることになりました。

奥が深い着物の世界。知れば知るほど、私はまだまだ至りません。私のお客様は皆さん、そのことを知っていました。それでも、私から買ってくださった。だからこそ私は、おひとりおひとりの心と丁寧に向き合いたいのです。

大切なお客様に、嘘はつけない。
そして着物にも、誠実でいたい。

着物を通して私を見てくださる方に、心を込めて向き合いたいと思っています。

完璧じゃなくていい。未熟だからこそ、誰よりも気持ちがわかる自分でいたい。

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