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【第3回】公共調達で価格競争から抜け出す。「プロポーザル方式」という戦い方

ここまで本シリーズをお読みいただき、ありがとうございます。今回がいよいよ最終回です。第1回でお伝えした、苦労して練り上げた提案内容を競合に知られ、最終的に最も安価な見積もりを出した企業に案件を奪われてしまう事態。これは企業にとって大きな痛手です。このような不毛な価格競争を避ける方法は、果たしてないのでしょうか。実は、明確な打開策が存在します。それは、官公庁の調達ルールを「一般競争入札」から「プロポーザル方式」へ切り替えてもらうよう要求部署へ積極的に働きかけることです。価格か、質か。2つのルールの違いそもそも、官公庁が民間企業に業務を委託する際のルールには、競争入札のみならず様々な手法があります。その中でもプロポーザル方式と一般的な競争入札には以下のような違いが存在します。・一般競争入札 あらかじめ求める条件(仕様)を厳密に定め、最も安い金額を提示した企業が落札する仕組み。いわゆる価格競争です。・プロポーザル方式(企画提案方式) あらかじめ予算を固定し、最も質の高い、あるいは革新的な提案を行った企業が選ばれる仕組み。価格ではなく、アイデアや技術力が評価されます。※なお、プロポーザル方式は競争入札ではなくざっくりと言うと随意契約の一種です。自社にしかない独自の技術やノウハウがある場合、価格勝負の土俵である一般競争入札で戦うべきではありません。官公庁の担当者に対し、「この課題を根本から解決するには、単なるコスト削減ではなく、技術の質と新しい切り口が必要です。そのため、プロポーザル方式で公募を実施してください」と提案するのです。官公庁側も前例踏襲で競争入札の手続きを続けている場合もあり
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【第2回】「1ヶ月」と「1年」の壁。公共調達で失敗しないための時間軸と「翻訳」スキル

前回は、自治体とスタートアップの間にある「広さ」と「深さ」の違い、そして公共調達のある種残酷な現実についてお話ししました。今回は、公共調達に挑む際に立ちはだかる、もうひとつの巨大な壁についてお伝えします。それは「時間の感覚」です。この大前提を知らないまま飛び込んでしまうと、どんなに素晴らしいサービスも、単なる「いいお話」で終わってしまいます。「1ヶ月」と「1年」。致命的な時間軸のズレスタートアップと官公庁では、そもそも流れている時間が根本的に違います。スタートアップの世界は「今すぐ」が当たり前。日単位、月単位で状況が変わり、スピードこそが命です。一方、官公庁の時間軸は「1年に1回だけ動く巨大な歯車」をイメージしてみてください。たとえば、あなたが11月に「画期的なサービスができました。来月から市役所で導入しましょう」と意気込んで持ち込んだとします。しかし市役所側からすると、「来年4月からの予算は、もう10月の時点で締め切ってしまったんです……」というのがリアルな現実なのです。タイミングを少しでも間違えると、次の導入チャンスは最長で「1年半待ち」になる可能性があります。体力の限られたスタートアップにとって、この1年半のタイムラグは資金ショートにも直結しかねない、本当に恐ろしいリスクですよね。「うちの技術はすごい!」は響かない。必要なのは「翻訳」時間軸のズレに加えて、もうひとつ忘れてはならないのが「翻訳」というステップです。自社のサービスに自信があるほど、つい「私たちの開発した最新のAI技術はここが優れています!」と、スペックを熱く語りたくなります。しかし、官公庁で働く職員の方々は技
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【第1回】公共調達の残酷な現実。「大成功の実証実験」が最悪の結末を招く理由

公共調達(国や自治体が税金で民間から物品やサービスを購入すること)へ参入する際、多くの企業(特にスタートアップ)が陥りがちな「罠」があります。今回は、あるスタートアップ企業の事例から、その構造的な問題をお話しします。優れた技術を持つスタートアップ企業が、ある自治体と1年がかりで実証実験(試験的な導入)を行いました。結果は上々で、担当職員も首長も高く評価し、次年度からの本格導入に向けた予算も無事に確保されました。ここまでは理想的な展開です。しかし数ヶ月後、事態は一変します・・・。自社サービスの根幹に関わる仕様が競合他社に公開され、より安価な見積もりを出した別の企業に案件そのものを奪われてしまったのです。「そんな理不尽な話があるのか」と驚かれるかもしれません。しかし、これは自治体の悪意や不作為などではなく、「合法かつ適正な手続き」を経た結果として実際に発生してしまった事象です。すれ違いの原因は「ルールの違い」根本的な原因は、企業と自治体の間にある「ルールの違い」にあります。企業側がビジネスにおいて追求するのは「深さ」です。特定の課題に対し、最新技術を用いてピンポイントに革新的な解決策を提示しようとします。一方、自治体が守るべきルールは「広さ」です。税金を原資とする以上、特定の企業だけを優遇することは許されず、すべての住民に公平かつ網羅的(もれなく全体をカバーすること)なサービスを安定して提供する義務があります。そのため官公庁は、条件を満たす企業の中で最も安く請け負う業者を選ぶ「一般競争入札(いっぱんきょうそうにゅうさつ)」という仕組みを原則としています。あなたの企業が提案した優れた
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【第3回】数ヶ月が数週間へ。官公庁のSaaS導入を変える「DMP」の衝撃

第1回では官公庁とスタートアップの間にある「実績の壁」と文化のズレを、第2回ではその壁を越えるための「飛び級特例」についてお話ししてきました。シリーズ最終回となる今回は、官公庁のシステム調達にかかる時間と労力を根本から変える新しい仕組み「DMP(デジタルマーケットプレイス)」について紐解いていきます。スタートアップを苦しめる「死の谷」これまで、官公庁へのシステム導入には途方もない時間がかかっていました。官公庁側が細部まで仕様書を作り、コンペを実施し、何層もの決裁を経てようやく契約に至る。数ヶ月から数年単位のプロジェクトになるのが当たり前であり、資金繰りのスピードが命であるスタートアップにとって、この長い待機期間は第1回でも触れた「死の谷(事業化の過程で資金が枯渇してしまう期間)」そのものでした。この時間のかかるプロセスを根本から変えるために、デジタル庁が進めているのが「DMP」です。DMPがもたらす、調達プロセスの劇的な変化DMPの仕組みを簡単に言えば、官公庁向けの「ソフトウェアのカタログ」です。これまで官公庁のシステムは、必要に応じてゼロから特注で作る(スクラッチ開発)のが基本でした。しかしDMPは、すでに世の中にある優れたSaaS(インターネット経由で利用できるクラウド型のソフトウェア)をカタログに登録し、官公庁の担当者が自らの課題に合ったものを直接選んで契約できる世界を目指しています。この仕組みが本格稼働すれば、現場には二つの大きな変化が生まれます。◆調達期間の大幅な短縮これまで数ヶ月を要していたプロセスが、数週間単位で完結するようになります。入札スケジュールの編成に常に
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【第2回】国が用意した「飛び級特例」。スタートアップが公共調達の壁を越える日

前回(【第1回】3,000億円市場を阻む「実績の壁」——官公庁とスタートアップ、文化のズレを紐解く)では、3,000億円規模と言われる公共調達市場に立ちはだかる「実績の壁」と、官公庁とスタートアップの間にある文化のズレについて紐解きました。「壁の存在は理解できたが、結局のところ過去の実績がないと官公庁の案件は取れないのではないか」そのように感じた方も少なくないはずです。しかし今回は、その分厚い壁を官公庁がどのように壊そうとしているのか、現在進行形で起きている「ルール変更」の裏側をお伝えします。結論から言えば、今、官公庁はスタートアップ向けに「飛び級」とも呼べる特例を本格的に用意しています。実績の壁を越える「飛び級」の特例これまでの公共調達(官公庁が民間からモノやサービスを購入すること)では、企業の資本金や過去の販売実績によって、厳格に「A〜D」のランク付けがなされてきました。大型案件には、必然的に実績豊富な大企業(Aランク)しか参加できない仕組みだったのです。私が現役の発注担当者だった頃にも、「このランク制度が参入障壁になっているのでは」と率直に感じる場面が多々ありました。実際に、この競争参加資格のランクを意識せずに入札書類を提出される営業担当者の方は意外と多く、発注側として『要件不備』で機械的に弾かざるを得ず、心苦しく思うこともあったのです。しかし新しいルールでは、この前提が覆りつつあります。「客観的に高い技術力が証明された特定のスタートアップ」であれば、本来はCランクの企業であっても、いきなりAランクの大型案件に入札(最も有利な条件を出した企業と契約する仕組み)できる特例が
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