【第1回】公共調達の残酷な現実。「大成功の実証実験」が最悪の結末を招く理由

【第1回】公共調達の残酷な現実。「大成功の実証実験」が最悪の結末を招く理由

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ビジネス・マーケティング
公共調達(国や自治体が税金で民間から物品やサービスを購入すること)へ参入する際、多くの企業(特にスタートアップ)が陥りがちな「罠」があります。今回は、あるスタートアップ企業の事例から、その構造的な問題をお話しします。

優れた技術を持つスタートアップ企業が、ある自治体と1年がかりで実証実験(試験的な導入)を行いました。結果は上々で、担当職員も首長も高く評価し、次年度からの本格導入に向けた予算も無事に確保されました。

ここまでは理想的な展開です。しかし数ヶ月後、事態は一変します・・・。

自社サービスの根幹に関わる仕様が競合他社に公開され、より安価な見積もりを出した別の企業に案件そのものを奪われてしまったのです。

「そんな理不尽な話があるのか」と驚かれるかもしれません。しかし、これは自治体の悪意や不作為などではなく、「合法かつ適正な手続き」を経た結果として実際に発生してしまった事象です。

すれ違いの原因は「ルールの違い」

根本的な原因は、企業と自治体の間にある「ルールの違い」にあります。

企業側がビジネスにおいて追求するのは「深さ」です。特定の課題に対し、最新技術を用いてピンポイントに革新的な解決策を提示しようとします。

一方、自治体が守るべきルールは「広さ」です。税金を原資とする以上、特定の企業だけを優遇することは許されず、すべての住民に公平かつ網羅的(もれなく全体をカバーすること)なサービスを安定して提供する義務があります。

そのため官公庁は、条件を満たす企業の中で最も安く請け負う業者を選ぶ「一般競争入札(いっぱんきょうそうにゅうさつ)」という仕組みを原則としています。あなたの企業が提案した優れたアイデアであっても、いざ本格導入に向けて入札を行う際には、「仕様書」として広く公開せざるを得ないのです。

以前ブログで言及した具体名が書かれていなくてもどの会社の製品またはサービスか分かる事象は、まさにこのことが影響しています。
官公庁サイドでも、調達目的を達成するうえで「発注仕様の過度な設定は行わず、必要最低限とする」という運用方針があります。先に述べた「広さ」を意識した方針ですね。ただ、要求部署の担当者の中には、冒頭で述べたような提案資料のスペックを丸写ししてしまうような人もいます・・・。このあたりはアプローチのコツがありますので、私のサービスの中でご相談いただければと思います。

構造を知れば「勝機」に変わる

この実態を知ると、公共調達のリスクに尻込みするかもしれません。

ですが、この構造的なルールの違いをあらかじめ理解し、入札を見据えた対策を初期段階から講じることができれば、一見すると残酷なこの状況は、自治体ビジネスにおける大きな勝機へと反転します。

次回(第2回)は、企業と自治体のすれ違いを生むもうひとつの原因である「タイムラグの問題」について解説します。
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