副業・兼業をする従業員が増えています。気をつけるべき注意点は?

記事
法律・税務・士業全般
副業・兼業がある場合、
特に重要になるのは、次の5点です。

①就業規則等のルール整備
②労働時間の通算管理
③健康・安全配慮
④競業・秘密保持等
⑤給与計算・税・保険の取り扱い

① 副業・兼業に関する就業規則等のルール整備


■基本スタンス:

裁判例や厚労省ガイドライン上は、「原則として副業・兼業を認める方向」が望ましいとされています。

もっとも、次のような合理的な理由があれば、
禁止・制限を定めることができます。

・労務提供上の支障(長時間労働で本業に支障、健康悪化のおそれ など)
・企業秘密の漏洩のおそれ
・競業により自社の正当な利益が害される場合
・会社の名誉・信用を損なう行為、信頼関係を破壊する行為 など

■届出制の導入:

労働時間や健康管理のため、
副業・兼業の有無・内容を把握できるよう、
「副業・兼業を行う場合は事前に届出る」ルールを
就業規則等に設けることが望ましいとされています。

② 労働時間の通算管理(法令上のポイント)


■通算が必要なケースと不要なケース

「本業も副業も“雇用されるかたち”で働いている場合」は、
労基法38条により、
両方の労働時間を通算して管理する必要があります。

一方で、次の場合は通算対象外です。
 ※健康配慮のため把握自体は望ましい。

・フリーランス、コンサルタント、顧問・理事など
  ※労基法の労働者に該当しない

・労働時間規制が適用されない者
  例)管理監督者、高プロ等、農業・水産業等

■何を通算するのか

通算対象となるのは
「労働時間に関する規定」であり、
法定労働時間と上限規制が主なポイントです。

・法定労働時間について
  1日8時間・週40時間

・「時間外+休日労働」合計について
  単月:100時間未満
  2〜6か月平均:80時間以内

※36協定の「延長できる時間数」、
 特別条項の回数(年6回以内)については
 事業場ごとに判断するため、
 副業先分と通算しません。

■通算の具体的な手順(原則)

厚労省の原則的な方法は次の順序です。

1.労働契約を結んだ先後順に、
 本業・副業の「所定労働時間」を通算

2.実際に発生した順に
 「所定外労働時間(残業・所定休日労働・法定休日労働)」を通算

3.通算した結果について、
 ・1日8時間・週40時間を超える部分
   → 法定時間外労働。
 ・時間外+休日労働
  →「単月100時間未満・複数月平均80時間以内」を超えない管理が必要

■労働時間情報の把握方法

他社の実労働時間については、
「労働者からの申告」を前提に把握すれば足りるとされています。

・申告がなかった場合
 →通算は不要

・申告内容が事実と異なっていた場合
 →会社として申告に基づき通算管理していれば
  法令上の責任は問われないとされています。
   ※申告しやすい環境づくりは重要。

③ 健康管理・安全配慮義務


■全ての使用者が安全配慮義務を負う

 ・副業・兼業を行う労働者の安全配慮義務(労契法5条)を負う者は?
   →本業・副業、すべての使用者

 ・安全配慮義務違反が問題となる場合は?
   →労働者の全体の業務量・時間が過重であることを認識しながら、
    何ら配慮をせず
    健康障害が発生した場合

■会社として意識すべきポイント

以下の対応が必要です。

◎届出・申告の段階:
  ・既に長時間労働になっていないかの確認
  ・副業の時間を含めると上限規制を超えるおそれがないかの確認

◎副業開始後の段階:
  ・定期的な副業状況の報告をする
  ・健康診断結果や長時間労働者への面談等を通じて、
   健康状態を把握し、
   必要に応じて
   残業抑制や副業時間の見直しを労働者と話し合う

■法定休日との関係

法定休日の規定は通算されません。
そのため、自社の法定休日に他社で働いても、
「自社の法定休日」は確保されている扱いとなります。

④ 競業・秘密保持・誠実義務等の観点


■競業避止義務:

労働者は在職中、
「使用者の正当な利益」を不当に侵害しない義務(競業避止義務)を負う
とされています。

就業規則上、
自社と競合し、自社の正当な利益を害する副業は
禁止または制限できる旨を定めておくことが考えられます。

■秘密保持義務:

業務上の秘密が副業先に流出するリスクがある場合
→秘密保持義務違反が懸念される副業は、制限の対象とする。
→どの情報が「業務上の秘密」に当たるかを、明確に注意喚起する。

■誠実義務・会社の名誉信用:

会社の名誉や信用を損なう副業・副業先での行為も、
就業規則上禁止・制限の対象となり得ます。

⑤ 給与計算・税・社会保険まわりの注意点


■割増賃金の支払い:

通算の結果、法定労働時間を超えた部分については、
それぞれの事業場ごとに
「自社で労働させた法定外労働時間分」について
割増賃金を支払う必要があります。

■36協定との関係:

通算した結果、従業員一人の時間外が発生する場合、
自社で発生した時間外労働分について36協定が必要です。

■所得税(年末調整・確定申告):

本業・副業とも「給与所得」の場合、
通常はどちらか一方だけが年末調整(「主たる給与」)を行い、
他方は源泉徴収のみとなります。

副収入が年間20万円を超える場合、
労働者本人は確定申告が必要とされます(これは労働者側の義務)。

会社側としては、
副業先での年末調整や確定申告の方法までは管理する義務はありません。

■社会保険・雇用保険:

社会保険(健康保険・厚生年金)については、
所定労働時間が比較的長い「主たる事業所」で加入するのが一般的ですが、
複数事業所での適用が問題になるケースもあり得ます(特定適用事業所等)。
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