こんにちは。
社会保険労務士の とくほみわです。
今日は、社労士としてお客様からよくご相談いただく、労働時間について解説します。
労働時間管理の責務
企業は、労働基準法や労働安全衛生法、厚労省からのガイドラインに基づき、労働時間を正確に把握する責務があります。
長時間残業を放置すれば、従業員の健康を損ねるリスクがあり、安全配慮義務違反となる可能性があるからです。
また、残業代は1分単位で計算することが法的に求められています。
「1日ごとに15分」など、時間外労働をまとめている企業は、従業員から未払賃金を請求されるリスクがあります。
【補足】1分単位で算出された時間外労働の合計に1時間未満の端数がある場合は、30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げるという処理が認められています(昭和63年3月14日基発第150号)
未払賃金を請求された場合、労働審判や裁判で、企業側は「未払賃金請求されている部分は労働時間ではない」と立証しなくてはいけなくなります。
しかし、そもそも勤怠管理がルーズで記録がきちんと残っていなかったらどうでしょうか?
企業が労働時間をきちんと管理していない
→ 未払賃金請求に対する反論が困難
→ 労働者の請求のままに過大な額を支払う
ということもあり得ます。
労働時間管理の難しさ
労働時間とは
タイムカードを押してから勤務終了までの時間
パソコンのログイン、ログアウトの時間
そこから休憩時間を引いた時間
でよいのでしょうか?
もちろんタイムカードやパソコン記録は大事な材料の一つですが、それでは管理しきれない時間もあります。
労働時間が実際よりも過大に記録されがちなケース
・業務終了後、ゆっくり雑談をしてからタイムカードを押した
・遅刻しそうなとき、タイムカードを他人に押させていた
・テレワーク時に中抜けの申告をしなかった
他にも、お手洗いや化粧直し、タバコ休憩など、ちょっとした休憩も「チリも積もれば」と言えなくもありません。
こういった時間分を、給料から引く会社はないと思いますが、どのくらい許容されるのか?難しい部分があります。
労働時間が実際よりも過小に記録されがちな場合
・朝早く来てタイムカードを押す前に仕事をしていた
・就業後にタイムカードを押してから仕事を続けた
・持ち帰り仕事をしていた
・休憩を取らずに仕事をしていた
労働時間を少なく申告することは、一見すると会社に貢献しているようですが、過大申告と同様に問題のある行動です。
次にサービス残業の問題点を説明します。
サービス残業の問題点
サービス残業は、企業にも従業員にも悪影響を及ぼします。
まず、適切な労働時間管理ができなくなります。
「その仕事にどのくらい時間がかかるのか」が分からないと、仕事を振り分ける企業にも、次にその仕事を引き継ぐ人にも迷惑がかかります。
さらに労働者にとっても、過重労働による健康被害が出たとしても、記録として残っていない以上、証明は困難になります。
「残業時間を◯時間まで」と引き締めることでサービス残業が発生している場合、根本的な解決にはなっていません。
「実際にかかった時間」を正確に把握し、業務の見直しや効率化を図ることが、残業時間削減の本質的な対策です。
労働時間かどうか?判断が難しいケース
顧問先の方からよくご質問いただくのが、
・着替えの時間は労働時間に含まれるのか?
・電話番の時間は労働時間なのか?
・朝早く来て仕事をするのは労働時間なのか?
・朝礼など任意の会は労働時間か?
こういった部分について、法律でははっきりと決まっていません。
裁判の判決では「具体的に検討される」といわれていて唯一無二の指針があるわけではありません。
労働時間になるかどうかは
「業務上の必要性や、使用者の指揮命令下にあるかどうか」
が基準となります。
明確に上司が「業務に必要だからやりなさい」と言った業務だけでなく、部下の行動を黙認していた場合も「労働時間」とみなされることがあります。
逆に「上司は把握していなかったし、内容もやってもやらなくてもよい作業」であれば、労働時間とはみなされない場合もあります。
裁判では、労働時間制が肯定される場合も、否定される場合もあり、一概にすべてが労働時間とは言えません。
最近の傾向と柔軟な対応
最近、労働基準監督署の臨検が増えていて、厳密に労働時間を管理する方向にあります。
同業者や弁護士の方も同じように言っていたので、私の主観ではないと思います。
一方でフレックスタイム制や裁量労働制など、一定の裁量を持った勤怠管理を採用し、労働者の自由に委ねる流れもあります。
注意しなくてはいけないのは、フレックスタイム制、裁量労働制など労働時間を柔軟にする運用は、就業規則の整備や労使協定の締結など、しっかりとした手続きが必要です。
手続きがないまま、または不十分なまま大雑把な管理を行うことは、最も危険です。
適正な管理によって、労務リスクを未然に防ぎましょう。
ご心配になった方は、社労士など専門家にご相談ください。
ココナラでも下記のように、相談に応じるサービスを展開しています。