「過去の自分と向き合う」──
そんな言葉を、一度は耳にしたことがあるかもしれません。
実際、過去の出来事が“今の自分”の足を引っ張ることは、よくあります。
一般的に「向き合う」とは、
過去に傷ついた自分を思い出したり、
当時どう考えていたかを振り返ることを指すことが多いようです。
でも、それって本当に「向き合っている」と言えるのでしょうか?
カウンセリングをしていると、こんな声をよく聞きます。
「辛い記憶なんて、わざわざ思い出したくない」
「思い出して、何の意味があるのか」
そう思うのも無理はありません。
痛みに近づかないようにするのは、人間の自然な防衛反応だからです。
けれど、無理に引っ張り出そうとしない限り、
今の自分が受け止められない記憶が、
勝手に浮かぶことはありません。
記憶が出てくるときというのは、
どこかで「もう大丈夫」と思える準備が整ったときなのです。
そして何より大切なのは──
過去に起こったことで混乱しているのは、“今の自分”だということ。
つらかったのは過去かもしれないけれど、
その痛みを抱えているのは、まぎれもなく“今の私”。
だからこそ、「思い出して感じる」よりも、
思い出したとき、“今の自分がどう感じているか”に気づくこと。
たとえば、昔何気なく言われたひと言が、
今でもふと胸に引っかかるなら──
そこには「まだ終わっていない感情」が、
静かに眠っているのかもしれません。
過去をねじ伏せる必要はありません。
湧き上がってきた感情に、そっと目を向けてみる。
そのときの自分を、今の自分が理解しようとしてみる。
思い出せたということは、今の自分なら受け止められるということ。
僕はそれが、「向き合う」ということの、ひとつの答えだと考えています。
過去を変えることはできません。
でも、過去に対する“今の在り方”は、いつでも変えられます。
それは一足飛びではないかもしれない。
けれど、理解が深まっていけば──
自然と、あなたの軽さや自由へとつながっていくはずです。