第41回:企業価値評価 ~ 負債・現預金・P/E倍率
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投資や企業価値評価において、よくP/E倍率(株価収益率、もしくはPERとも表記されます)という指標が使われます。この指標は「時価総額(あるいは株式価値)÷純利益」もしくは「株価÷一株当たり利益(EPS)」で算出されるもので、例えば、株価が1000円で、一株当たり利益が100円ならば、P/E倍率は10倍と計算されます。
使われる場面としては、一般的には、市場平均との比較や、その会社の過去のレンジとの比較で割高・割安を判断する際に用いられる指標となります。
さて、本日は、このP/E倍率の「くせ」について少し言及したいと思います。具体的には、企業の資本構成、つまり、企業のバランスシートにおける有利子負債や現預金の額によって、どのような影響があるか、見ていきたいと思います。
結論から申し上げると、同じような収益性を持っている会社同士でも、(バランスシートの資産に対して)有利子負債が多い企業はP/E倍率が「低くなる」傾向があり、現預金が多い企業はP/E倍率が「高くなる」傾向があります。
直感的な説明は以下の通りです:
まず、「企業価値(Enterprise Value)= 株式価値(Equity Value)+有利子負債-現預金」という計算式が成り立ちますが、
この式変形をすると、「株式価値 = 企業価値-有利子負債+現預金」となります。
つまり、企業価値が一定とすると、有利子負債が増えると「株式価値」に対してはマイナス、現預金が増えると「株式価値」に対してはプラス、に寄与することが確認できます。
具体例で見てみます。企業価値が1,000だとすると、
ケース①:有利子負債が0で現預金が500ある時の株式価値は1,500ですが、同じく現預金500で、有利子負債が1,400まで増えた場合の株式価値は100と計算されます。
ケース②:一方、有利子負債が500のまま一定で、現預金が増えていくと、株式価値も増えることが確認できます。
ここで、P/E倍率=株式価値÷純利益で計算されますので、純利益が同じであった場合、つまりP/E倍率を計算する割り算の分母が同じである場合、以下の関係性が成り立ちます:
・株式価値(=割り算の分子)が大きいほどP/E倍率は高くなる
・株式価値が小さいほどP/E倍率は低くなる
有利子負債と現預金の関係性とつなげると、
・有利子負債が多い企業 → 株式価値が低くなる → P/E倍率は低くなる
・現預金が多い企業 → 株式価値が高くなる → P/E倍率は高くなる
という傾向が生じることが確認できるかと思います。
このようなP/E倍率と資本構成の傾向について理解しておくことは、企業価値評価や理論株価計算において、特に類似企業比較分析を実施する際に重要になります。つまり、同じような事業であっても、会社によってP/E倍率が高かったり低かったりする要因として、各社の資本構成・財務状況の違いが反映されている可能性があるためです。
【ご参考:類似企業比較分析に関する過去のブログ】
本日は以上となります。最後までお読みいただき、誠に有難うございます。
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次回以降もどうぞ宜しくお願い致します。
【ディスクレーマー】
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