法律学習を効果的に進めていくためには、何と言っても「基礎力」を徹底的に鍛えることが大切です。
課題テストでは、短文問題を題材に「どのように法的思考を組み立てるか?」を学ぶことが出来ます。
予備試験や司法試験の過去問は、良問ばかりですが、その難しさゆえに断念してしまう方も多いです。ABprojectの課題テストは、「問題演習したいけど、スモールステップで力を付けたい」という方に最適の添削指導となっています。
下記では、課題テストのサンプル問題を題材にその参考答案と解説を公開します。解説の内容は、実際の添削指導と異なりますが、形式的には同じです。また、どんな視点で添削指導をしていくか、「基礎力」を付けるためにどんなことを意識付けようとしているか、など、添削指導の大まかなイメージを掴んでいただけるかと思います。
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(解説部分は太字)
・問1
所有権が妨害により侵害された場合、所有権に基づく妨害排除請求が可能である。もっとも、生じた損害が軽微であり、妨害を除去することが著しく困難で、多大の費用を要する場合には、不当な利益を獲得する目的で妨害の除去を求めることは許されない。これは、信義則ではなく権利濫用禁止の原則について述べたものである。
(正誤)○
(理由付け)
1(1)所有権が妨害により侵害された場合、所有権に基づく妨害排除請求が可能と言えるか。所有権の存在は民法(以下、略)206条により認められているが(175条参照)、所有権に基づく妨害排除請求権まで認められるか明文上明らかでないから問題となる。
→問題文から法的に検討すべき問題を抽出しています。その際、条文とのつながりに言及することで「なぜ法的に問題になるのか?」を明確にすることを意識しています。法的に問題になることはある程度パターン化していますので、条文を意識しつつ問題提起することに慣れると問題提起に苦労しなくなります。
(2)所有権は、「法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利」(206条)である。ゆえに、目的物に対する排他的支配性が認められるから、他者の妨害によりそれが法律上の正当事由なく侵害された場合、所有権の派生的権利として目的物の妨害を排除する権利が認められると解する。
→「~請求が可能か。」という問いに対して答えるべきことは、「○○請求権」という権利が成立するか否かです。法律問題は、すなわち、権利義務関係で表せるものだからです。権利が成立するためには、要件を定立しそれが認められることが必要です。そこで、206条を根拠に所有権の排他性を指摘し、それが法律上の正当事由なく侵害されることが妨害排除請求権の成立要件であるということを説明します。
(3)以上より、所有権が妨害により侵害された場合、所有権基づく妨害排除請求権が成立すると言えるから、上記請求は可能と言える。
→所有権に基づく妨害排除請求権が認められることを示せれば最初の問いに答えたことになりますから、これにて解答終了です。
2(1)では、第二文の説明は、権利濫用禁止の原則について述べたものか。民法1条3項は、「権利の濫用は、これを許さない。」と定める。しかし、その内容が明文上不明であることから、その内容について検討する必要がある。
→ここでも問題文から法的に検討すべき問題を抽出しています。問題文を読めばそれほど考えることなく答えられてしまいそうな問いですが、少し立ち止まって、条文上どういう問題と位置づけられるのか、と考えて見ましょう。「条文との結びつきを明示できる能力」は、既知の論点知識に依存せずスムーズに問題提起をするために必須です。
(2)権利濫用禁止の原則が認められた趣旨は、社会的妥当性を欠く権利行使を禁止することで権利行使をめぐる正義公平を図ることにある。「生じた損害が軽微であり、妨害を除去することが著しく困難で、多大の費用を要する場合には、不当な利益を獲得する目的で妨害の除去を求めることは許されない。」との説明は、権利行使の社会的妥当性を判断する基準であり、権利濫用禁止の原則(民法1条3項)の内容を明確にしたものであると言える。
→問いの形式に合わせて解答の構成も工夫しています。とはいえ、意識しているのは、「権利の濫用」(1条3項)という文言の意義解釈が問題となるという点のみです(=問いと条文との連結点が文言の解釈にあることを意識している)。趣旨を挙げつつ、問題文の説明が「権利の濫用」という文言を解釈した内容であることを明確にしています。
(3)以上より、第二文の説明は、権利濫用禁止の原則について述べたものであると言える。
→結論部分は簡潔かつ問いに対して真っすぐに答えるようにします。
3 上記2点の問いは、いずれも正しいと言えるから、本問の正誤は○である。
→正誤に関する結論も示します。
・問2
虚偽表示にあたる法律行為がされた場合、土地の仮装譲受人から当該土地上の建物を賃借した者は、民法94条2項の「第三者」にあたらないと考えるのが判例の立場である。
(正誤)×
(理由付け)
1(1)土地の仮装譲受人から当該土地上の建物を賃借した者は、民法(以下、略)94条2項の「第三者」にあたらないか。明文上明らかでなく問題となる。
→「土地の仮装譲受人から当該土地上の建物を賃借した者」が「第三者」(94条2項)にあたるかどうかは、明文上不明である。当該人物が「第三者」にあたると言えるためには、「第三者」の意義を解釈し、それに当てはまることを説明することが必要だからです。これに気付けることが、この論点の始まりです。
規範と結論のみを学んで論点学習をした気持ちになっている方がよく見られますが、この「初めの一歩」の部分を学んでおかないと初見の問題に対する対応を含めて実践的な力を養うことが出来ないのです。「知っている問題なら解けるんだけど・・・」という人は、勉強のポイントを見直してみては?
(2)94条2項の趣旨は、虚偽表示を前提に新たに法律上の利害関係を有するに至った者を保護し、取引の安全を図ることにあるから、「第三者」とは、虚偽表示の当事者又はその一般承継人以外の者であって、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者を指すと解される。
→「土地の仮装譲受人から・・・賃借した者」が「第三者」に当てはまるためには、「第三者」の解釈が必要であることは、前述の通りです。そのため、ここでは「第三者」の解釈結果を示しました。多くの方は、趣旨からの解釈を意識されていると思いますが、当該解釈は「第三者」の文言解釈も含んでいることに注意してください。「虚偽表示の当事者又はその一般承継人以外の者であって」の部分です。これに似た表現は177条の「第三者」の解釈でも登場します。
(3)「土地の仮装譲受人から当該土地上の建物を賃借した者」は、(当該土地の仮装譲受人から当該土地上の建物を賃借した者であるから、)当該土地の仮装譲渡をした当事者、その一般承継人以外の者である。しかし、仮装譲受人の建物に法律上の利害関係を有しているにすぎず、当該仮装譲渡の表示の目的たる土地につき法律上の利害関係を有するに至ったわけではない。判例も同様の結論である。
→第三者の要件を全て満たしていれば第三者と言え、そうでなければ第三者と言えないので、この点は丁寧に検討する必要があります。ちなみに「『善意の第三者』とは・・・」と書く方を時々見かけますが、「善意」かどうかという話と「第三者」かどうかという話は、別の「要件」の話なのできちんと区別しましょう。「要件の把握は正確に」が法律論の基本です。
上記第一文でカッコ書きした部分は、改めて書かなくても自明なことなので省略しても構いません。ただし、いかなる場合も、「事実→評価→あてはめ」という流れがあてはめの基本なので説明できるように意識しておいた方がいいでしょう。
判例の立場を求められているので判例の結論についても言及しました。「判例同旨」と書く方がたまに見られますが、特に要求がない限り、そのような書き方はしない方がいいと思います。減点のリスクが高いからです。「判例同旨」と書くと、結論のみならずその論理構成も含めて判例と同じことを書いているという意味になりますが、実際にそのような答案を書くことは難しいです。大抵多少はズレがあり、それを看過して「判例同旨」と書くことは、判例を軽視していることを自ら申告するようなものです。
2 以上より、「土地の仮装譲受人・・・賃借した者」は判例によっても「第三者」(94条2項)にあたるから、本問の正誤は×となる。
→結論部分は、簡潔にかつ問いに真っすぐ答えるように。
・問3
甲が乙に対して契約解除の意思表示を書面にて発送した後死亡した場合、甲死亡後書面が乙に配達されても解除の意思表示は効力を生じない。
(正誤)×
(理由付け)
1(1)甲が乙に対して契約解除の意思表示を書面にて発送した後死亡した場合、甲死亡後書面が乙に配達されても解除の意思表示は生じるか。解除の意思表示をめぐる条文に沿って検討する。
→この問題は、適切な条文を見つけてそれにあてはめれば答えが出せる問題です。もっとも、条文によらずに答えを出すことは、問題解決の方法として妥当ではありません。条文によらずに答えを出そうとすれば、各自の判断基準によって結論が分かれてしまう可能性があるからです。そこで、社会の統一的判断基準である条文によることになります。
問題提起をする際、問いをそのまま書き写すことは、特に学習の初期段階ではおすすめです。「問いをそのまま真っすぐに受け止め、真っすぐに解答する」習慣を身につけられれば、自然と法的思考力も養われていきます。きちんと考えられない方の多くは、そもそも問題のとらえ方に誤りがあるケースが多いように思います。一方で、きちんと考えられる方は、問題のとらえ方がシンプルで上手だと思います。
(2)契約の解除権の行使は「相手方に対する意思表示によってする」(民法(以下、略)540条1項)。そして、「意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡」しても「そのためにその効力を妨げられない」(97条3項)。
→540条1項の指摘は忘れがちですが、解除権の行使が「意思表示」によってなされるからこそ、意思表示の有効性の問題(97条3項)として検討することが可能になるのです。本問の問いの核心は97条3項ですが、要件一つ一つを丁寧に検討しましょう。
(3)以上より、甲が乙に対して契約解除の意思表示を書面にて発送した後死亡した場合でも、解除の意思表示は、有効であると言える。
→(2)で明らかにした要件(97条3項より)に照らして検討すれば、甲の解除権行使の意思表示は有効であると言えます。
2 本問の正誤は、×である。
→結論は、簡潔かつ問いに対して真っすぐに。
・問4
錯誤による取消しが可能である場合、表意者はその取消しを主張できるが、相手方は取消しを主張できない。
(正誤)○
(理由付け)
1(1)表意者は、錯誤による取消しを主張できるか。民法(以下、略)120条2項に沿って検討する。
→「錯誤による取消しが可能である場合」とされているので、95条各項に基づく錯誤の要件は満たしていることが前提ですね。「法律要件を満たすから法律効果を主張できる」という基本的なことですが、忘れずに意識してください。当たり前のことを当たり前に確認することが実力アップの道です。
その上で、成立した取消権を誰が行使できるのか?という点が問題です。現行民法では、錯誤「取消し」(改正以前は、錯誤無効でした)となったので、120条2項の取消権者の規定に沿って考えれば足ります。ちなみに、権利という客体と権利行使者という主体は、常に別個の存在です。この関係性を容易に意識できるようになると、複雑な法律関係も理解しやすくなります。当たり前の話ですが、当たり前のことを当たり前に確認すること・・・です。
仮に120条2項がなかったらどうなるか、と問われたらどう考えますか?取消権を行使できる者が条文の文言上不明と言うことになりますから、趣旨に遡って考える必要があることになりますね。条文適用のパターンが見えてきましたか?
(2)120条2項によると、「瑕疵ある意思表示をした者」は、取消権者にあたる。
→条文から要件を明らかにできました。
(3)よって、錯誤による取消しを主張できる場合、その表意者は、錯誤による取消しを主張できる。
→結論です。
2(1)では、錯誤取消しが成立する場合、相手方はその主張をすることが出来るか。
→あえて1と2で分けて書きました。同時に検討しても構いませんが、法律問題を検討する際の基本は、「細分化」です。一つ一つの検討課題を出来るだけシンプルにし(問題提起)、条文に沿って検討する(法的三段論法)。そして、その結果を一つ一つ積み重ねていく。その過程で複雑な法律問題も解決されていきます。シンプルな問題も複雑な問題も、解決の手順はさほど変わりません。そのことに気付ければ、実力アップの道筋も見えてくるはずです。
(2)120条2項によると、相手方は、取消権者にあたらないから、錯誤取消しを主張することが出来ない。
3 以上より、表意者は錯誤取消しを主張できるが、相手方は錯誤取消しを主張できない。よって、本問の正誤は、○である。
→結論です。簡潔にかつ問いに対して真っすぐに。
・問5
Aは、Bに強迫されて自己所有の土地をCに売却した。この場合、Aは、Cが強迫の事実を知らなったときは、強迫を理由にCとの売買契約を取り消すことができない。
(正誤)×
(理由付け)
1(1)Bに強迫されて自己所有の土地をCに売却したAは、Cが強迫の事実を知らなかったときでも、強迫を理由にCとの売買契約を取り消すことが出来るか。契約の相手方以外の第三者が強迫をした場合の取消しの可否について明文がないことから問題となる。
→本問は、適用できる条文が存在しないというケースです。民法にはたくさんの条文がありますが、このようなケースに出くわすことが少なくありません。「条文がないから、どう解決すべきかを自分なりに考えなければならない」のです。これも論点創出のパターンの一つです。
(2)民法(以下、略)96条2項は、第三者が詐欺を行った場合「相手方がその事実を知」っていた又はそれを「知ることができたときに限り」、詐欺に基づく意思表示を取り消すことが出来るとする。これは、詐欺に基づく表意者保護を図る一方、詐欺取消しによって法的地位に変更を受ける相手方を保護し、取引の安全を図ることを趣旨とするものである。
第三者による強迫の取消しについてこのような制限規定が置かれていないのは、強迫によって当該意思表示をせざるを得なかった表意者保護を重視し、相手方の主観的事情による取消権行使の制限を設けない法の趣旨であると考えられる。
よって、第三者による強迫が行われた場合、その表意者は、相手方の主観的事情に関わらず、その意思表示を取り消すことが出来ると解される。
→条文が定められていない理由として、「法の不備」「あえて規定されていない」「法制定当時に想定されていない新たな問題が発生した」などのケースが想定されます。今回は、「あえて規定されていない」ケースだと考えて、その理由から解決基準を導いたものです。なかなか高度な問題解決方法ですが、こういう考え方もあるということを知っておいてください。
ちなみに、条文が定められていないケースの対処法として、条文の類推適用や法理論の活用、一般原則(信義則、権利濫用など)の活用といった方法が考えられます。これらの手段を知っている方は多いと思いますが、そのような手段をとるのは、最適な条文がないという前提があるからだということも意識しておいてください。
(3)以上より、AはCが強迫の事実を知らなかったときでも、第三者Bの強迫を理由にCとの売買契約を取り消すことが出来る。
→問いに答えました。
2 本問の正誤は、×である。
→問いに対する答えは、簡潔かつ真っすぐに。
以 上
○まとめ
・・・・・・・・・・・(この部分には添削した感想や疑問質問への解答等色々書きます。今後の課題発見やモチベーション維持にもお役立て頂きます。)
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