第4.5回|書き終わった日の編集後記
羽田で倒れたのは、小説の後半に差し掛かった頃だった。
三日間ほとんど寝ずに書き続けていたため、脳と身体のどちらが先に悲鳴をあげたのかはよく覚えていない。
ただ、スターバックスの椅子から立ち上がって歩き始めた数秒後、視界が白く途切れ、次に目を開けると救急車のサイレンの内側にいた。
左腕の骨折、前歯の欠損、唇は七針。
救急隊員は手際よく、しかし事実だけを静かに告げた。
その事実だけが、やけに聞き取りやすかった。
搬送先は大田区の東京労災病院。
医師から「帰るか、行くか」の二択を提示された。
帰れば実務と生活に追われて書けなくなることが分かっていたので、私は迷いなく後者を選んだ。
予定通り那覇経由で石垣へ飛ぶ。ANAインターコンチネンタル石垣リゾート。
ホテルのスタッフは驚くほど親切で、運ぶ・押す・支える・整える、といった日常の細かな動作を代わりに引き受けてくれた。
ロキソニンで痛みを鈍らせ、コーヒーで意識を覚まし、ジャズを小さく流しながら書いた。
二日間ほとんど眠らなかった。書いている間は痛みがほとんど気にならない。不思議なことに。
書き上げた原稿は、すばる文学賞に送った。
内容について語れることはないが、テーマだけ言葉にするとすれば「痛み」と「再構築」だと思う。
痛みは一度受け止めないと構造化できないし、構造化されない痛みはただの愚痴になる。
書いている間、何度かその境界線を踏み外しかけた。
最終日はアフタヌーンティーをゆっくり楽しみ、JALの特等席で帰京した。
今はシャワーを浴び、暖房の効いた部屋でジャズを流しながらこれを書いている。
小説を書き終えた夜は、祝福が訪れるのではな
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