「しずくの聞かせて屋」のはじまりに——私のことから
今思えば、「聞く」ということの大切さを、いちばん最初に教えてくれたのは、あの保健室の先生だったのかもしれません。私は、田舎の中学から都会の女子高へと進学しました。キラキラしたブランドバッグ(ヴィトンやハンティングワールド)を肩にかけ、ミニスカート姿で参考書を開くクラスメイトたち。おしゃれも勉強も、どちらも抜かりなくこなす姿に、私は完全に圧倒されていました。中学からの内部進学組が多かったこともあり、会話にもなかなかついていけず、次第に居場所がなくなっていくような気持ちに。高校2年のある日、原因不明の熱が下がらなくなり、私は保健室へ足を運びました。数日続けて通ううちに、保健室の先生がぽつりと聞いてくれたんです。「最近、どうしたの?」その一言が、まるでずっと張りつめていた心のつっかえ棒を外されたようで。私は、その場で崩れるように泣いてしまいました。それからしばらく、親へは学校に行くふりをして保健室へ通う日々。先生は、私の話をゆっくりと、根気よく聞いてくれました。家庭のこと、幼少期のこと……。その中で私は、忙しい両親のもとで、幼い頃からずっと頑張って「いい子」でいようとしていた自分に気が付きました。あの頃、誰にも頼れず、気持ちをしまい込んでいた小さな私が、とうとう疲れてしまったのだと気付いたとき、心がふっと軽くなりました。自分を理解できた瞬間、初めて目の前に光が差し込んだ気がしたんです。その光を頼りに、少しずつ歩き始めました。やがて、鬱や不登校(保健室登校)からも抜け出すことができました。誰かに、ただ静かに話を聞いてもらえるだけで、こんなにも救われる。それを、私は身をもって知りました。
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