猫目石(終)
一応、講義には出たものの気分は虚ろだった。
琴美の心の中は葛藤の嵐が吹き荒れていた。
3000年前の時代ではアトランティスとムーの戦いが最終局面を迎えている。
戦局はムー側が非常に不利な状態。
皆殺しになるかもしれない。
あのプラズマ砲は地球をも破壊するような強力な武器だ。
それをムーの人達に浴びせると、あのトカゲ大王は言っていた。
なんとか全滅を免れているのは王子が全軍の指揮を執って戦っていたからだ。
それを敵側の陰陽師から呪いを掛けられ3000年未来の、この時代へと飛ばされてしまった。
ムー側の陰陽師たちが一所懸命に念を入れ精妙なプログラムを刻んだ猫目石を黒猫ちゃんが届けてくれた。
猫目石はタイムマシンの端末機だ。
猫目石を手に入れた今、一刻も早く3000年の過去に王子を戻らせなくてはならない。
それは良く分かっている、分かっているが琴美は大きく頭を横に振った。
出来ない。
彼と離れたくない、そんな3000年もの過去に行ってしまうなんて耐えられない。
私のすべて私の命が消えてしまうわ。
彼は私のものよ。
このままずっと一緒に居たいの。
今迄どおり彼と一緒に居たいの。
あの美しい婚約者に彼を盗られたくない。
3000年の過去の事なんて私には関係ないわ。
結論を頭の中で出したが心は猛烈な波風が立っていた。
講義終了のチャイムが鳴った。
みんなが、ぞろぞろと教室から出て行く様子をぼんやりと眺めていた。
その時、琴美の肩をポンと叩いて、やあ元気かい、と声を掛けて来た者がいた。
琴美が振り返って見ると同じ絵画クラブの瀬川君だった。
瀬川君かー。
この前の絵画品評会で金賞が取れなくて残
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