長編SF小説 異能者の惑星 第3話 サライ博士の話
第3話 サライ博士の話 食堂に皆が集まって来た。テーブルの上にはハンバーグステーキセットが湯気を立てて並んでいる。さながら、ファミリーレストランのお子さまランチの様であった。
「ほう! 今日はハンバーグか。これは良い」
案の定、ミゲルは子供みたいに嬉しそうな声を上げた。ハルカは内心、してやったりである。
「そうですよ。船長お好きでしょう?」
「うん、まあな」
ミゲルは照れる事も無く返す。笑いを噛み殺して、ハルカは皆に声をかけた。
「さあ、皆さん座って下さい。食事にしましょう。ソースはテーブルの上にあるのをお好みでどうぞ」
一同は席に着くと、ハンバーグを一口食べた。フレーバー付き人工タンパク質のジューシーとは言い難い|質朴《しつぼく》な味が口の中に広がる。
「これは……まあ、人工タンパク質ですからね。仕方ないですか」
ニライがしんみりした声を出した。やはり本物の肉には敵わない。
「そうね。こんなところかしら?」
サライも頷く。
「博士、もし運良く人間が生存可能な星を見つけたとして、その後はどうなるんです? あ、ソース取ってくれ」
タイガがヤナーギクからソースを受け取りながらサライに訊ねた。
「先ず、既に科学者達の分析で、惑星タラゴンが候補に上がっているわ。見つけたら食料生産の為のプロジェクトが開始されるでしょうね。地球の発展がそうであったように、土地を開墾して農地を作る事から始まるわ」
「都市は作らないんですか?」
「先ず食料確保よ。都市はその後だわ」
「食べることは生物の基本ですからな」
船医のマムルはジャガイモをフォークで突き刺すと、しげしげとジャガイモを眺めて言った。
0