法定雇用率引き上げに伴う「障害者雇用」の進め方は?

記事
法律・税務・士業全般
法定雇用率が段階的に引き上げられており、
これまで対象外だった中小企業でも
障害者雇用が義務化・強化されています。

「どこで募集すればいいのか」
「どのような業務を切り出せば定着するのか」など、
一からノウハウを求める経営者が増えています。

1.まず押さえるべき「法的な枠組み」

(1) 自社に必要な障害者数(雇用義務人数)の把握

ざっくり言うと以下の通りです

障碍者雇用(義務)の対象となる会社(=規模要件):
 常時雇用する従業員が
 ・~2026年6月:40.0人以上
 ・2026年7月~:37.5人以上

計算式:
 雇用義務人数
  =従業員数( 常用雇用)× 法定雇用率(小数点以下切り捨て)

  ※『従業員数( 常用雇用)』の出し方:
   以下の合算
   ◎ 常用雇用労働者はそのまま人数でカウント
   ◎短時間労働者(=週20~30時間)はそのままカウントしない。
    ※1人を0.5人としてカウント。

  ※『従業員数( 常用雇用)』とは:
    以下の3要件を満たす者
    ①雇用期間の定め:
     a)無
     b)雇用期間(見込):1年以上継続
    ②所定労働時間(週単位):20時間以上
    ③雇用形態(アルバイト等):不問

  ※法定雇用率:
   ・現在:2.5%
   ・2026年7月~:2.7%
計算例:
 週30時間以上の常用雇用労働者:80人
 週20~30時間未満の短時間労働者:40人

 この場合、
  常用雇用労働者数:80人
  短時間労働者換算:40人 × 0.5 = 20人
  → 常用雇用で働く従業員数 = 80 + 20 = 100人2

(2) 未達成の場合に求められる対応

法定雇用率は「努力義務」ではなく法的義務です。
未達の場合の主な影響は次のとおりです。

◎行政指導がある:
  ハローワークによる指導、障害者雇入れ計画の作成・提出等
◎罰則がある
 罰金:常用雇用労働者が100人超で、法定雇用率未達の場合
    →月額5万円/不足1人
 ペナルティ:勧告に従わない場合、企業名の公表の可能性

 ※達成・超過している場合、調整金・報奨金が支給

2.「どこで募集するか」の基本ルート

初めて障害者雇用に取り組む企業では、次の公的ルートが中心になります。

(1) ハローワーク(公共職業安定所)

障害者専用窓口があり、
求人票の書き方、業務の切り出し方、必要な配慮の整理などの
助言を受けられます。

「障害者トライアル雇用」などの
助成金付きの雇用スキームも、
ハローワーク経由で利用できます。

(2) 地域障害者職業センター

障害特性に応じた職務の設計、
職場実習の組み立て、
ジョブコーチによる職場定着支援など、
より専門的な支援が可能です。

(3) 障害者就業・生活支援センター

生活面も含めた支援が必要な方のケースの場合、
ハローワークと連携してマッチング・定着支援を行います。

(4) 特別支援学校・就労移行支援事業所など

実習の受入れを通じて、
業務とのマッチングや指導の仕方を確認し、
その後雇用につなげるケースが多くあります。

初めての場合の流れ(イメージ)は次の通りです。

①ハローワーク+地域障害者職業センターを窓口にして、職場実習
②トライアル雇用
③本採用

3.「どんな業務を切り出すか」を決める際の具体的なプロセス

①社内の業務整理
 各部署にヒアリングし、
 業務内容・必要スキル・所要時間などをまとめます。

②障害者に向く可能性のある業務の絞り込み
 危険度が低く、手順が明確で、
 反復性の高い業務は候補になりやすい傾向があります。

③障害特性別のマッチングを検討
 事務補助、バックオフィス、軽作業、データ入力、庶務、清掃など
 自社の実情に応じて「職域」を設定します。

④採用後も見直しを継続
 習熟状況に応じて職務内容を見直し、
 負荷を調整・拡大することで、
 戦力化と定着の両立を図ります。

4.募集・採用時の実務ポイント

(1) 求人内容の整理と記載方法

選定した業務について、
必要なスキル・作業手順・使用機器・想定する支援(指示の出し方、休憩の取り方など)を事前に整理したうえで求人条件を決めます。

職務内容や就業時間・勤務日数などについて、
個別の合理的配慮に応じて調整する余地がある場合、
その旨を求人票に明示しておくとマッチングしやすくなります。

(2) 職場見学・職場実習の活用

応募前・採用前に職場見学や短期実習を受け入れることで、

会社側:本人の特性や作業適性、必要な配慮を把握できる
本人側:業務内容や職場環境を具体的にイメージできる

という双方にとってのミスマッチ防止効果があります。

(3) 採否判断と合理的配慮

採用・不採用の判断は、
あくまで「職務遂行に必要な能力・適性」に基づいて行い、
「障害があること自体」を理由とした排除は
差別禁止に抵触し得ます。

必要な合理的配慮については、
(例:出退勤時刻の調整、指示の出し方の工夫、通院配慮)
本人・支援機関と相談しつつ、
事業への過重な負担とならない範囲で検討していきます。

5.受入れ体制・雇用管理上の留意点

(1) 相談体制・窓口の整備(全企業共通の義務)

障害者からの相談に対応する窓口(人事部門・上長等)を定め、
社内に周知しておく必要があります。

相談内容の秘密保持・相談を理由とする不利益取扱いの禁止も求められます。

(2) 障害者職業生活相談員・障害者雇用推進者

同一事業所で常時雇用する障害者が5人以上になった場合:
→「障害者職業生活相談員」の選任が義務
(3か月以内に選任し、ハローワークへ報告)。

法定雇用率の対象企業:
→「障害者雇用推進者」の選任は努力義務(雇用状況報告書で記載欄あり)。

(3) 労働時間・働き方の設計

本人の体調や障害特性に応じて柔軟に設計することが重要です。

例)
A)週30時間以上(標準)
B)週20~30時間の短時間勤務
C)週10~20時間の「特定短時間労働者」(重度・精神等)

※週20時間以上の短時間労働者:
 0.5人分として常用雇用労働者にカウントされる。

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