「もう治った」が一番危ない。適応障害・回復期の落とし穴

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布団から出られなかった朝が、嘘みたいに軽く感じる。 スマホを見ても動悸がしない。 コーヒーの香りを「美味しい」と思える。

——回復期に入ったあなたなら、この感覚、わかりますよね。

「もう大丈夫かもしれない」 「そろそろ普通に戻れる気がする」 「むしろ、休みすぎて焦る」

私もそう思いました。休職して3ヶ月目、薬の量も減り、主治医から「少しずつ活動を増やしていきましょう」と言われた、あの日。

——その3週間後、私はまた布団から出られなくなりました。

しかも、休職開始時よりも症状は重く、復職予定は2ヶ月延期。傷病手当の延長申請、上司への再連絡、家族への説明……回復したぶんだけ、戻ったときのダメージは大きかったんです。

この記事は、適応障害の回復期に「調子に乗って」失敗した私の、リアルな記録です。

回復期の「絶好調」は、本当の絶好調じゃなかった


失敗の話に入る前に、ひとつだけ伝えさせてください。

回復期の「調子がいい」は、健康な人の「調子がいい」とは、まったく別物です。

私が「もう大丈夫」と感じていた時期の、実際のスペックがこれでした:

連続して活動できる時間:最大2時間(本人の体感では8時間動ける気がしている) 1日の外出可能距離:片道30分以内(本人の体感では日帰り旅行も余裕)人と話せる時間:1対1で1時間程度(本人の体感では飲み会OK)

つまり、体感と実力に4倍の乖離があるのが回復期の特徴なんです。

これ、知らないと絶対にやらかします。私のように。

失敗①:友達との飲み会、約束した日の自分と、当日の自分は別人だった

休職3ヶ月目。気分が上向いてきたある日、学生時代の友人からLINEが来ました。

「久しぶりに飲みに行かない?」

そのときの私は、即答で「行く!」と返していました。

会いたかった。話したかった。普通に笑いたかった。約束をした瞬間、まだ2週間も先の予定なのに、心が躍ったのを覚えています。

ところが——当日。

朝起きた瞬間から、何かがおかしい。重い。だるい。気持ちが沈んでいる。「なんで私、行くって言っちゃったんだろう」。シャワーを浴びるのに1時間迷いました。

それでも「キャンセルしたら申し訳ない」と、無理やり家を出た。

居酒屋の席に着いた瞬間、わかりました。私、ここにいたくない。

友人の話に相槌は打てる。笑顔も作れる。でも、心がまったく動かない。グラスの中のビールが、やけに重く見える。「楽しい」という感情が、どこを探しても見つからない。

帰り道、駅のホームで涙が止まりませんでした。 楽しいはずだったのに。会いたかったはずなのに。

「約束したときの自分」と「当日の自分」は、完全に別人だった。

失敗②:「体が軽い=動ける」じゃなかった。ジムで1時間歩いた、その夜から——

朝起きて、体が軽い日が増えてきた頃。

「ずっと寝てばっかりだったし、そろそろ運動しないと」 「体力落ちてるのを取り戻さないと、復職できない」

そう思った私は、近所のジムへ通います。

初日、ウォーキングマシンで1時間歩きました。汗をかいて、爽快感もあった。「ほら、やればできるじゃん」と、自分を褒めながら帰宅。

——その夜から、地獄が始まりました。

足が筋肉痛、ではない。体全体が、鉛のように重い。 翌朝、起き上がれない。立ち上がるとめまい。動悸も再発。

そこから1週間、ベッドから出られない日々が戻ってきます。
ジムに行けたのは、結局1回だけ。

回復期の「体の軽さ」は、健康な人の「体の軽さ」じゃない。
あれは、ようやく日常生活ができる程度のエネルギーであって、運動に回せる余剰なんて1ミリもなかったんです。

失敗③:そして、最大の失敗——近所のスーパーで、私は心を折られた

これが、私を2ヶ月後退させた、最も予想外の失敗です。

外を15分歩けるようになった頃、私は「近所のスーパーに買い物に行く」という、ささやかな目標を立てました。たかがスーパー。されどスーパー。久しぶりの「自分で食材を選ぶ」という行為に、ちょっとワクワクすらしていました。

平日の夕方。買い物カゴを手に取った、その瞬間——

レジで、満面の笑みで接客している店員さん。 週末の献立を相談しながら、楽しそうにカートを押す夫婦。 お菓子コーナーで「これ買って!」と無邪気にはしゃぐ子供。

普通の風景。何の変哲もない、夕方のスーパー。

なのに、私の足は、その場で止まりました。

(——私、何やってるんだろう) (みんな、普通に生きてる) 
(普通に働いて、普通に家族がいて、普通に笑ってる)
(私だけ、ここにいる時間の流れが、違う)

涙が出そうになって、カゴを置いて店を出ました。何も買えなかった。

その夜から、自己否定のループが始まりました。SNSで同期の投稿を見て凹み、過去の失敗を何度も反芻し、やがてカーテンを閉めっぱなしにする日々に戻った。

「他人の普通」が、回復期の自分には刃になる。

この事実を、誰も教えてくれなかった。

3つの失敗から学んだ、たった一つのこと


飲み会もジムもスーパーも、共通していることが一つだけあります。

「もう少しいけそう」を信じた瞬間に、壊れた。

回復期の自分の体感は、実力の4倍だった。 70%回復したと感じていても、実際は20%だった。

だから今は、こう決めています。

「いけそう」と思ったら、その半分で止める。

散歩30分いけそう → 15分で帰る。
友達に会えそう → 「当日キャンセルするかも」と先に伝える。
買い物に行けそう → 平日の午前中、人が少ない時間に行く。

これだけで、翌日寝込む頻度が激減しました。

回復期に必要なのは、「頑張ること」ではなく「止まれること」だった。

そして、回復期の具体的な過ごし方——セルフチェックの方法や、やってはいけないNG行動については、改めて別の記事で詳しく書きます。

同じ場所にいる、あなたへ。

「もう大丈夫」と思った日が来たら、この記事を思い出してください。 その「大丈夫」は、まだ本物じゃないかもしれない。

でも、それは弱さじゃない。 回復の途中にいるだけです。

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