「会社に言うな!ダマってろ!」|体験記#002

「会社に言うな!ダマってろ!」|体験記#002

記事
ビジネス・マーケティング
これは、パワハラに耐えつづけたTさんの、
悲痛な心の叫びをつづった実話です。

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ある日、Tさんは、
両手に松葉づえ、首には大きなコルセットをして出社。
180センチ近い大柄な体が、細く、痛々しく見えたのを今でも鮮明に
覚えてます。

――あのアニキ的存在のTさんが、こんな姿になるなんて。

◇頼れるアニキ

当時、私は40代で、製造現場を担当していました。
Tさんは私より3つ年上で、機械をメンテナンスする部署でした。

この会社では珍しい「大卒」で、
どこか理屈っぽいけど、一目置かれてた存在だったんです。

目はギョロっとしていて、ホリが深く、ちょっと しゃくれ気味のアゴ。
頬には、まるでアニメ『鬼滅の刃』の炭治郎みたいなアザがくっきりと。
初めて会ったときは、ドン引きするくらい強面の人でした(汗)

そんな、見た目とは裏腹に、いつも冗談を言っては現場を笑わせる。
気配りもできて、誰にでも気さくに接してくれる。

どこか親しみやすくて、頼れるアニキ分な存在。

「何かあったら、Tさんに相談しよう!」
それが、みんなの合い言葉と言ってもいいくらいでした。

◇パワハラの盾

そんなTさんを、A部長が目のカタキに……。

A部長は、『自分が絶対的なボス』だと思いこんでる人。
私がこの会社で見てきた中でも、トップクラスのパワハラ上司!

「いいから黙ってヤレ!」
「オマエらは、ゴミだ!クズだ!」
「俺は1000点満点!オマエら30点だ!」

とにかく好き嫌いが激しく、自分の感性だけで 
ものごとを判断する単細胞な人。

Tさんみたく理屈っぽい(良く言えばロジカルな)人が気に入らなくて
仕方ないんです。
何かにつけて怒鳴りとばし、机を叩き、
そしてTさんの足のスネを蹴りとばしたりすることも!

でも、Tさん……
どれだけ怒鳴られても、机を叩かれても、スネを蹴られても、
まったく動じないんです。

ただジッと、静かに、A部長の怒りが収まるまで耐えている。

『ハガネのメンタル』
まさにそんな言葉がぴったりな人でした。

Tさんが盾になってくれるおかげで、
私たちへのパワハラ被害が軽くなり、現場のメンバーはずいぶん
救われていたんです。

「Tさんがいてくれて良かった」
悪いなあと思いつつ、心の中で、何度もそう思っていました。

◇異変

でもある日、Tさんは突然、会社に来なくなりました。

連絡もなく、スケジュールにも何も書かれていない。
誰もが「どうしたの?」と心配していると…

耳に入ってきたのは、

「Tさん、入院したらしいぞ」という声…

詳しく聞いてみると、
どうやら過度なストレスで、頸椎の神経に支障がでて、
左足が動かなくなったとのこと。

「え…そんなことあるの?」

しょうじき信じられなかった。
でも、噂はあっという間に広まり、現場はザワつきはじめ、

「原因は、A部長……」

誰もがそう感じていたんです。

Tさんがパワハラの盾になって、ずっと一人で耐えてきたことを、
みんな知っていたから。

◇仕方ない…

Tさんが戻ってきたのは、それから約2週間後のことでした。

首にガッチリとしたコルセットが巻かれ、両手には松葉づえ。

その姿を見て、みなが言葉を失った。

「え…そこまでして出社する…?」

ヨロヨロと松葉づえをつき、斜め下をジッと見つめながら歩く姿は、
痛々しくて見ていられなかったです。

そして、休憩時間。

私は恐る恐るTさんに、声をかけてみました。

「やっぱり原因って…A部長…」

そう切り出した瞬間、Tさんは言葉をかぶせるように、

「会社には言うな!ダマってろ!」

強い口調で、私に向かって忠告して、
そして、ふっと目をそらして、こう続けたんです。

「こういう会社だから…、仕方ないんだ…」

◇忍耐

当時はまだ、パワハラホットラインなんてありませんでした。

上司に何を言っても、うやむやにされ闇に葬られるか、
逆に責任転嫁されて終わり。

最悪、報復という形でさらにエスカレートする。

そう、この会社では「耐える」しか選択肢がなかった。

これでいいのか? これが普通なのか?
世間一般の会社でも、こんなことが起きてるのか?

私は、なんどもなんども自問自答しながら、
パワハラ文化が根づいたこの会社でも、
「頑張ればいつか良くなる」と思って耐えてしまっていた。

いまでも、この事件のことを思いだすたび…

Tさんの必死な忠告に負けて、
ただ「分かりました」としか返せなかったことが心残りです…

◇伝えたいこと

その後、ようやく「パワハラホットライン」が設置され、
親会社へ通報できる「直通ダイヤル」も開設された。

いまの世の中、SNSでも情報発信できる。
誰かに話を聞いてもらうことや、助けを求めても良いんだということも、
だんだんと広まってきています。

けど——
Tさんのように、「自分さえ我慢すればいい」と思って、耐えている人が
まだいるのではないか。

もしいたら、
「我慢が美徳」の時代は、とうに終わっていることを知ってほしい。

パワハラは、加害者側に自覚がないことが多い。

いっぽ踏みだして被害者が声を上げることで、誰かが手を差し伸べてくれる。
心と身体を壊さなくても済む。

✅ まず、信頼できる誰かに相談してみる。
✅ 記録を残しておく。
✅ 自分の身を守る行動をとる。

これは、Tさんのようにギセイになる人を、もう二度と見たくないという
私の願いです。

大切な人・家族を守るためにもどうか、
まず自分自身を守りましょう。
もう一人で抱え込まなくて大丈夫だから。





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