突然ですが、銀行員がアポを入れたくなる会社の条件をご存知でしょうか。
「信頼できる会社」「業績が良い会社」——そう思われるかもしれませんが、実務では、もっと即物的な理由もあります。
・ 周辺に訪問先が多い(複数社を一気に回れる)
・ 個室や応接室がある(従業員の目を気にせず話せる)
・ 駐車場がある(車移動の多いエリアでは地味に大きい)
笑える話ですが、これは本音です。
銀行員も営業職である以上、訪問件数のノルマがあります。
行きやすい会社には自然と足が向くものです。
ただ、13年間、法人担当として多くの会社を訪問し続けて気づいたことがあります。本当に何度も足を運びたくなる会社には、別の共通点がありました。
今日はその話をしたいと思います。
共通点① 困る前に話してくれる
資金繰りが悪化してから初めて連絡してくる会社と、日頃から状況を共有してくれる会社では、担当者の動き方がまったく違います。
困っている状態で相談を受けると、担当者は「追い込まれる」感覚があります。猶予がない中で稟議を書かなければならない。しかし普段から情報がない会社の稟議は、材料を集めるだけで相当の時間がかかります。
結果として、担当者は「あまり近づきたくない会社」という印象を持ち、取引も自然と希薄になっていきます。
銀行では訪問のたびに日誌や報告書で常に上席・本部と情報を共有しています。つまり担当者だけが知っている、という状態はありません。
日頃から情報を開示してくれている会社は、融資の相談が来たときには既に社内で文脈が共有されており、担当者が初動を取りやすい状態になっています。逆に、突然ネガティブな数字が出てきた場合、担当者は管理不足として立場が弱くなり、会社も情報開示に消極的な先として見られてしまいます。
「困ったときに相談する場所」ではなく、「普段から話せる相手」として使っていただくだけで、いざというときの動き方が変わります。
共通点② 自社の事業を、初見の相手に説明できる
銀行は数字のプロです。しかし、それぞれの会社の事業の中身を理解するのには、意外と苦労します。
担当者として困るのは、決算書の数字は分かるが、「この会社が何で稼いでいるのか」「なぜこの数字になっているのか」が掴めないときです。そうなると、社内での説明も曖昧になり、稟議も弱くなります。
私が総務部長を担っていたとき、会社の数字の意味・将来性・安全性を丁寧に説明するだけでなく、「銀行側がどう上席に説明すればいいか」まで話すようにしていました。結果として、通常では開示されないような内部情報まで共有してもらえる関係になりました。取引のある外部格付会社も同様で、通常では得られない情報まで共有してもらえるようになりました。
「担当者が社内で説明しやすい材料を渡す」という発想を持つだけで、銀行との関係は一段深まります。
共通点③ 融資以外の相談も投げてくれる
銀行の収益構造を正確に言うと、融資単体の利ざやで収益を得るのは極めて薄いです。銀行が収益を上げているのは、決済・振込・外為・システム導入・資金管理サービスなど、日常の取引全体です。
つまり、「融資のときだけ来る会社」は、銀行にとってコストパフォーマンスが悪いお客様でもあります。
担当者として何度も足を運びたくなるのは、経営全体の相談を投げてくれる会社です。決済の見直し、システム導入、事業承継、資金運用——何も契約が成立しなくてもいいです。「この会社は様々な場面で相談してくれる」という実績が積み重なると、銀行としての収益の将来性が期待できる先として評価が上がります。取引拡大の理由づけになるため、融資の稟議も通りやすくなります。
融資のときだけ連絡してくる会社と、日常の経営課題を一緒に考えさせてくれる会社では、銀行側の本気度がまったく違います。
共通点④ 厳しい状況でも、隠さない
赤字の会社からの相談を受けることも多くありました。赤字そのものは、担当者として致命的とは思いません。問題は、状況を把握して説明できるかどうかです。
「なぜ赤字なのか」「いつ改善するのか」「どのように改善するのか」——これらが説明できれば、担当者は冷静に稟議を書けます。
むしろ、厳しい状況でも先に話をしてくれる会社は「情報を隠さない会社」として信頼が上がります。黙って決算書を出すだけより、先に電話一本入れるだけで、担当者の受け取り方はまったく変わります。
共通点⑤ 訪問すると、なんとなく居心地がいい
最後は完全に個人的な話ですが、訪問したときにコーヒーを出してくれる会社には、自然ともう一度訪問したくなります。クッキー一枚でも同じです。
多くの会社ではお茶が出てきます。それが悪いわけではありませんが、コーヒーが出てくる会社は数が少ない分、それだけで印象に残ります。他の担当者も似たようなことを言っていました。
銀行員も、結局は人間です。
「また訪問したい」と自然に思える会社には、共通して人の温かさがあります。それが訪問回数を増やし、情報が集まり、関係が深まっていきます。
ここまで挙げてきた共通点を振り返ると、どれも難しいことではありません。
・ 困る前に話す
・ 自社の事業を分かりやすく説明できるようにしておく
・ 融資以外の相談も投げる
・ 厳しい状況でも隠さない
銀行との関係づくりに特別なスキルはいりません。「相手が動きやすい状態を、日頃から作っておく」——それだけで、いざというときの銀行の動き方はまったく変わります。
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