予想を上回る速さ

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登山序盤のロックガーデンを抜けて、平地を含めた上り坂が続く。

上りの連続がなくなり、身体がだいぶ楽になってくる。

ようやく調子が戻ってきた。

身体が軽い!

大会の緊張感にも慣れたのか、徐々に走るスピードが増してくる。

そして、

ようやく、大会参加者の姿を視界に捉える。

女性の二人組。

軽くおしゃべりをしながら走っている。

会話をしながら走れるという事は、余裕があるという事。

経験者かな?

そんな事を考えながら、徐々に距離を詰めていく。

そろそろ追い抜けそうだ。

山道は危ないから、念のため声をかけてから通らせてもらおう。

「すいません、失礼します」

背後から女性2人に声をかける。

「うわ!」
「え、なに?!!」

縦一列で並んで走っていた女性達。

僕の突然の声にどうやら驚いてしまったらしい。

「あ、すいません。ごめんなさい!」

慌てて謝る僕。

「あ、いえいえ。ごめんなさい」

横を通り抜けると、背後から女性たちの話し声が聞こえる。

「あんなおっきい声出してビックリするでしょ」
「いや、だって、走ってる時に追い抜かれるなんて思わなかったもん」

ああ、ごめんなさい。

心の中でそうつぶやきながら、僕は走るスピードを上げていく。




そうなんですよね。

自分が集中して走っている時に、自分より速いスピードで追い抜かれるなんて。

普通は思わないですよね。

自分が追い抜く事ができるということは、他の人にも追い抜かれる。

その可能性があるということ!

それを僕も身をもって体験することになるとは・・・。




上りの中間地点。

雨ヶ峠に差し掛かり、ここからは再び上りが増えてくる。

坂道をずっと走っても体力を消耗するだけ。

ここは一旦、早足で上っていこう。

走る姿勢をくずし、上半身を前に傾けながら、一歩ずつ確実に前に進んでいく。

しっかりと早目に歩けば、タイムが極端に落ちることはないはず。

傾斜の高い坂は走るよりも、歩いたほうが体力の消費が少なく、効率よく進むことができる。

練習の時に学んだ事を一つずつ忠実に行っていく。

うん。

やっぱり、いつもより体力の消費が少ない気がする。

だいぶ楽に登れてる。

調子がいい。

このままいけば、いい順位が望めるかもしれない。

自分に言い聞かせていたその時、

僕の視界の右側に、突然、薄い緑色のリュックサックが現れる。

「あ」

そのリュックサックはあっという間に、僕の横を抜けていった。

・・・。

え。

リュックサックが徐々に小さくなり、人の全体像をかたち作っていく。

僕の前を歩いているのは、リュックサックを背負った小柄な男性。

身長は160cm前後で細身。

サングラスとマスクで年齢は分からないが、しっかりとした足取り。

年齢はだいぶ上のような気はするが、それを感じさせない歩き。

そして、

僕を追い抜く時、彼は歩いていた!




「速い!」




上り坂をこんなに速く歩く人は見たことがない。

彼は前にいた人達をぐんぐん追い越して、前に進んでいったのでした。




追伸
 普段1人で練習していると、自分の中で常識みたいなものが出来上がってしまいます。

山道を登るってこれぐらいのペースだろうな。

練習の時に出会った登山の方も、一般のハイカーの方ばかり。

真剣に山を速く登る。

という印象は全くなかった。

でも、

今回の彼は・・・。

明らかに速かった。

しかも、

走ってないのに速い。

僕は慌てて、彼のあとを追いかけたのでした。。





















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