教員の残業代等に関わる裁判について

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埼玉県で、教員に対する残業代の支払いを求めた裁判が棄却されたのはまだ最近のことでしょうか。
そのことについて話す前に、学校の先生をしていた時代の経験から、そのときのお仕事について書かせてください。

学校の先生って、大変なんですよ(突然)。

私は高校と中学の両方の経験があるのですが、
たとえばある日の私の一日のスケジュールは…

朝7:40出勤
8:10~登校指導
8:30~朝の職員会議
8:40~教室でホームルーム
8:50~12:40 50分刻み×4時間
昼休み
13:25~15:15 50分刻み×2時間
15:15~15:35 清掃活動
15:35~15:40 帰りのホームルーム
15:40~部活動
(ちなみに勤務時間は8:30~17:00)

6時間×5日間=30時間の時間割となりますが、
高校の先生はひとりあたり週に14~18時間ほど授業を持つのが普通です。
中学の先生はもっと多くて、19~24時間も持つんです。
つまり、高校の先生だと一日あたり3時間くらい、中学の先生だと4時間くらい授業を持ちます。
(もちろん週によってバラつきがあるので、一日一回しか授業がない日もあれば、運悪く一日5時間入っちゃう時も…)
それ以外の時間は、空き時間ということになります。

でも、その空き時間は、ノートチェック、小テスト丸つけなどであっという間に埋まっていきます。
朝登校していなかった生徒でのうち連絡がない者には連絡しないといけませんしね。
担任だと、面談などイベントごとの出欠票を集めて出欠チェックしたり、その他の提出物チェックしたりします。

日記のようなノートを生徒が毎日提出する学校も多いので、そのひとつひとつにコメントを書いて返却するのも空き時間です。給食を一緒に食べながらチェックしてる先生もよく見ます。
副担任の先生もそれをお手伝いしてくれます。また、副担任の先生はよく学年会計の仕事を任されたりするので、会計処理してたりもします。
(会計も先生のお仕事なんですよ………)

そして生徒が問題を起こしたり、相談に来たりすると、ここでも1時間費やしてしまうわけです。

つまり。

空き時間に教材研究できる先生なんて、ほとんどいません。
空き時間に教材研究して授業しようと思っちゃダメだよ、絶対埋まっちゃうから、って初任の頃に教えられましたけど、事実でした。

そして。
放課後。
上の時間で見れば、15:40からは放課後ですね。

放課後、部活に行ける場合もあれば、生徒対応に追われることもあります。

問題を起こしてしまったら保護者連絡しなきゃいけないし、相談に来たら丁寧に聞き取ってあげたいし、放課後はそんな時間です。

たまに、「授業中力向上のため」とか「不祥事防止のため」に研修会が入ることもあります。
また、全職員が関わる職員会議は、放課後にしか入れません。これが長引いて勤務時間を超えることは、正直珍しくないです…。
もちろんその他の小規模な会議が入ることもあります。「生徒指導」「教育相談」など、生徒に関する会議を行うのです。
と、言うわけで余計に空き時間なんて埋まるんですよ。

ここで本題。

それらが終わってやっとできるのが、教材研究。
よりよい授業の準備をするための、教材研究。
ほんとなら、これに時間をかけて欲しいですよね…。勤務時間内に…。

しかも上記の仕事を放課後までこなせなくて放課後こなしてても、部活やってても、教材研究やってても、残業代は1円も出ません。

教員特措法という法律があり、休日出勤や残業代を支払わない代わりに、給料の4パーセントを毎月教職調整額として支払うとされています。

つまり、4パーセントで定額働かせホーダイ!
「生徒のためだよ」でやりがい搾取!
こんな事情が、Twitterにて #教師のバトン で炎上しましたよね。

この法律のせいで、過労死ラインギリギリ、もしくはそれ以上働いている人ばかり。
それなのに残業代は全く出ない。

この由々しき事態について、教職員の残業代の支払いを求める訴訟を埼玉県の男性が起こしました。
その結果、残念ながら、棄却されました。
しかも、「家庭訪問」や「宿題のチェック」や「ノートへのコメント書き」は、業務とみなされないという判決なんです。

多少語弊を招く言い方をしましたが、
校長命令がない業務はすべて業務ではなく、教員の創意工夫や裁量で行ったもの。
それは業務とはみなされない、と。
教員が好きでやったことだ、と。

これってひどくないですか?
だって十分業務ですよね?
誰がどうみたって先生のお仕事ですよね?
わざわざ毎回「校長先生、これって業務命令出されてます?」って確認するわけないし!

当たり前の仕事だと思っていたことが、
「それ、あなたが好きでやってたことでしょ?お金発生しないから」
と、突然言われるショック。
それを、先生たちは味わっています。

しかも。

驚いたのは、「教材研究の時間は5分とするのが妥当」という文。
5分?!!5分で教材研究して授業するなんて、バカにしないで欲しい!
そんな簡単な気持ちで授業してないわ!!!

学校の先生たちは、もっともっと怒った方がいいんです!

日本の「学校」は、勉強を教えるだけじゃないところが文化。
上下関係、友人関係、責任感、集団生活、そういうことを学ぶ場として存在している。
だから塾や予備校とは一線を画していられるんです。

でも、その「生徒の話を丁寧に聞く」とか「委員会の生徒の指導をする」等の業務を行った後に、
それは仕事じゃなくてあなたが好きで勝手にやったことでしょ?
なんて言われたら、もうやってられないですよ。

私は学校の先生たちをもっともっと、もっともっともっと賞賛したいし、肯定したいし、認められて欲しい。

いまカウンセラーをしていますが、教員対象のカウンセリングも行っています。
日々粉骨砕身して業務にあたる先生方ばかりなんです。

働き方改革の時代、サービス精神を教育に持ち込まないで欲しい。
「生徒のためだから」に付け込まないで欲しいんです。
その対価がほしいというのは、我儘でも何でもない正当な願いです。
それでも対価を与えられないならば、大幅な業務削減を。
二つに一つです。

教育にお金をかけない国は衰退する。
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