大好きな人との待ちに待ったデートの時間。
楽しくおしゃべりをしたり、並んで歩いたりしている幸せな空気の中で、相手のスマホが突然、震え出す。
「あ、ごめん、ちょっと待って」
そう言って相手が仕事の電話に出た瞬間、あなたはまるで魔法をかけられたかのように、その場でピタッと動きを止めてしまいませんか?
電波を遮ってしまったら大変だからと、まるで彫刻のようにその場に直立不動で立ち尽くし、全身の気配を完全に消そうとする。
自分の服が擦れるかすかな音や、靴が地面に当たる音さえも、相手の通話の邪魔になってしまうような気がして、動くことすらためらってしまう。
自分の呼吸音すら静かな街並みに響いているように思えて、息を吸うのも吐くのも、ものすごくそっと、細く行うようになる。
相手の邪魔にだけは絶対になりたくないから、自分の半径1メートルから存在感を完全に消し去るために、ものすごい集中力とエネルギーを使っているんですよね。
電話の向こうの相手に「今、デート中なのかな?」なんて余計な気を遣わせてもいけないと、周りの景色の一部になりきろうとする。
そうやって必死に気配を消しながら、心の中では「早く終わるといいな」という気持ちと、「私のせいで仕事に支障が出たらどうしよう」という焦りがグルグルと渦巻いている。
ようやく相手が「お待たせ、ごめんね」と電話を切ったときには、ホッとするのと同時に、ものすごい疲労感がドッと押し寄せてきたりします。
デートが終わって家に帰ったあと、「どうして私はあんなにガチガチになって、彫刻みたいになっちゃったんだろう」と、自分の不器用さにクスッと笑いながらも、少しだけ切なくなったりしていませんか?
心理カウンセラーとして、僕はその健気で優しい行動の裏側にある、あなたの深い愛情をとても愛おしく感じています。
繊細な気質を持っている方は、相手の状況やその場の空気を、瞬時に、そして信じられないほど深く察知する能力を持っています。
相手が仕事の電話に出た瞬間、あなたの頭の中には「相手が今、どんな集中力を必要としているか」「どんな対応を迫られているか」という情報が、一瞬でブワッと広がっているんです。
だからこそ、自分の存在が1ミリでも相手の足引っ張りにならないようにと、瞬時に「気配を消す」という最大の配慮を、体が勝手に選択してしまうんですよね。
それは、あなたがそれだけ相手のことを大切に思っていて、相手のお仕事を応援したいという、純粋で真っ直ぐな優しさを持っているからに他なりません。
でもね、心理カウンセラーとして、僕はあなたに少しだけ肩の力を抜いてほしいなとも思っています。
あなたがそこまで自分の呼吸すら止めるようにして気配を消さなくても、大好きなあの人は、あなたがいるその空間を嫌だなんて絶対に思っていません。
むしろ、電話をしている最中も、あなたのその健気な姿をチラッと見て、「あぁ、健気に待ってくれていて愛おしいな」「早く終わらせて、またこの子と笑顔でおしゃべりしたいな」と、心の中で温かい気持ちになっているはずですよ。
電波を遮るんじゃないかと心配になるのも、呼吸音が邪魔になるんじゃないかと不安になるのも、あなたがそれだけ五感が豊かで、思いやりが深い素敵な女性だからです。
今度、もしまたデート中に相手が電話に出ることがあったら、彫刻になろうとしなくて大丈夫ですからね。
近くの可愛いお店のディスプレイをのんびり眺めたり、スマホで次の行きたい場所をリサーチしたりしながら、「ゆっくりでいいよ」という気持ちで、あなたの時間を少しだけ楽しんでみてください。
あなたがそこにいてくれるだけで、相手にとっては十分、幸せなデートなのですから。