さよならを告げるとき、あなたはどんな言葉を自分に課しましたか?
本当は相手に言いたいこと、傷ついたこと、ぶつけたい感情がたくさんあったはずです。
それなのに、相手の潤んだ瞳を見た瞬間、あるいは相手が傷つく未来を予感した瞬間、あなたはとっさに「私が全部悪かったの」というシナリオを書き換えてしまったのではないでしょうか。
相手を責めて、怒りをぶつけて、自分の正当性を主張できれば、きっと心はもっと軽かったはずです。
でも、繊細な気質を持つあなたは、自分の心が軽くなることよりも、相手の自尊心が守られることを選んでしまいました。
「私が最低だったから」「ほかに好きな人ができた(嘘だけど)」「私はもう、あなたと一緒にいる資格がない」。
そんな嘘の理由をいくつも並べて、自分だけが泥を被り、悪役として舞台を降りる。
心理カウンセラーとして、僕はそんなあなたの後ろ姿を、ぎゅっと抱きしめてあげたい気持ちでいっぱいになります。
あなたは、最後まで相手を思いやり、相手のこれからの人生に「自分が悪かった」という影を落とさないように、自分自身の尊厳さえも差し出してしまったんですよね。
それは、弱さではなく、あまりにも深い、そしてあまりにも哀しい優しさだと僕は感じています。
でもね、一つだけ覚えておいてほしいことがあります。
嘘の理由で自分を汚してまで相手を守ったその痛みは、別れたあとにじわじわと、あなた自身の心を蝕んでしまうことがあるんです。
悪役を完遂して独りになった夜、冷たい静寂の中で「どうしてあんな言い方しかできなかったんだろう」と、自分を責めてはいませんか?
相手はあなたの嘘を信じて、あなたを恨むことで、案外早く立ち直ってしまうかもしれません。
一方で、本当の気持ちを飲み込んだあなたは、誰にも正解を教えてもらえないまま、一人で傷跡をなぞり続けることになります。
僕は、その自己犠牲がこれ以上、あなたを透明にしていかないことを願っています。
別れの場面で悪役になれる人は、それだけ自分の心の痛みに耐える力が強い人です。
でも、その強い力を、これからは自分を癒やすためだけに使ってあげてほしいんです。
「私は最低だ」と相手に告げたその言葉を、どうか真実だと思い込まないでください。
あの時、あなたが演じた悪役は、相手の未来を傷つけないために用意した、精一杯の「愛」の形だったのですから。
本当のあなたは、誰よりも温かく、誰よりも誠実で、そして誰よりも傷つきやすい、美しい心の持ち主です。
今はまだ、虚無感や自己嫌悪の中にいるかもしれません。
でも、自分の心だけは、あなたの味方でいてあげてください。
「よく頑張ったね」「最後まで優しかったね」と、自分自身に声をかけてあげてください。
泥を被って去ったあなたの足跡には、いつか必ず、あなたと同じように優しい色をした花が咲くと、僕は信じています。
少しずつでいいので、相手のために使い果たした心のエネルギーを、今度は自分のために注いでいきましょう。
美味しいお茶を淹れる、ふかふかの布団で眠る、そんな小さなことからでいいんです。
あなたはもう、十分に誰かのために生きました。
これからは、あなたがあなたの物語の主人公として、一番大切にされる番ですよ。