職場に発達障害の人がいて困っているとき

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コラム
社会人(20歳以上)の発達障害者の人の割合は約9%、11人に1人近くは発達障害ということですね。
大人になれば症状が軽減するケースもあれば、就職することで周囲との違いに気づくパターンもあります。
同じ職場に発達障害の人がいても珍しいことではありません。

彼らと一緒に働くとき、どんな対処法があるでしょうか。

1.前提:「発達障害なのでは?」という思い込みで接しない

最近はインターネットなどでも「発達障害」という言葉がかなり一人歩きしています。
発達障害とは、様々な症状の総称です。かなりまとめられてきていますが、大きくは「注意欠如多動症(ADHD)」「自閉スペクトラム症(ASD)」「限局性学習障害(LD)」などです。
そしてこの3つの内容は全くと言っていいほど異なり、その異なる障害を重複して持っている人もいます。

しかし、ちょっと人と違う発言や行動をした人をすぐに「発達障害では」と想定する傾向が多いように感じます。そして本人も「自分は発達障害だと思う」と自称することもあります。

発達障害に限らず、病気や障害医師の診察の下に診断される必要があります。医師は診断基準に照らし合わせて、それを満たす場合に「発達障害」として診断します。

ですから、本人が診断を受けて、それを周囲にオープンにしていない以上「あの人は発達障害」決めつけないようにしましょう。

困っている状態と障害名は、イコールではありません。

2.発達障害の特徴は誰にでもあるものがほとんど

発達障害が理解されづらいのは、その障害特性が、誰にでも少なからずある特徴だからではないでしょうか。

例えば「忘れ物が多い」という特徴があります。子どもの発達障害に多いですが、大人になっても残っている人もいます。
忘れ物自体は誰にでもあり得ます。忙しかったり、ついうっかりして忘れてきてしまいます。
しかし発達障害の場合に、忘れた理由を「それは発達障害だからです」と言われると、対処のしようがありません。他の人なら注意されたり怒られたりする場面でも、「障害だから」と言われると、それをしてはいけないような気がしてしまいます。

すると、周囲からは「あの人だけ障害があるからって怒られなくてずるい」という見方をされます。
自分が忘れ物をした時は怒られたのに、あの人は怒られない、そんなのオカシイ、と。
誰にでもある特徴だからこそ、理解されづらいのです。

しかし、発達障害の診断を受ける人は、「誰にでもある特徴」とはその程度が違います。
普通なら「ついうっかり」の忘れ物が、ほぼ日常です。むしろ必要なものを全部揃えて出掛けられる日のほうが少ないくらいです(なので準備や確認に人一倍時間をかけてクタクタになってます)。

同じ内容だけど程度が違うのが「発達障害」なのです。

3.対処法:道具や環境を調整しよう

発達障害の人は、うつ病のように、本人が必ずしも困っているわけではありません。
本人の特性が活かせたり、特性が周囲とぶつからない限りは「ちょっと変わってる人」程度で、普通に働いている人も珍しくありません。

発達障害は、周囲との調和が取れなくなった時「障害」として立ち現れるのです。
もちろんこれは周囲が悪い、ということではありません。相性や調整の問題です。

ですから、もし何かを変えるのだとしたら、「道具」を増やして「環境」を変えましょう。

例えば「手順が明確でないと仕事に取り組めない」という場合。
「これ、やっておいて」と無造作に作業の指示を受けることは、働いていれば珍しくありません。
大抵は自分で内容を咀嚼して過去の経験ややり方を知ってそうな人に質問したりして、どうにか完了させます。

これが発達障害の人には出来ません。
A→A1→A2→B→B1→B2→C… のように、手順が一つ一つ明確になっていないと、どこから手を付けていいのか分からず途方に暮れてしまうのです。

逆に言うと、手順書・マニュアルがしっかりあれば、それに沿って忠実に正確に作業することは得意です。出来上がったものは精度がかなり高いです。

周囲は「成果物」を見てその人のスキルを判断しがちです。プロセスはあまり重視されません。
マニュアルがあったから出来た、という点に周囲や本人が気がつければ、それを用意すればいいのです。

働く環境も大きく作用します。
普通の人なら多少の雑音は気にせず作業出来ますが、発達障害の人にとっては「多少」どころではありません。感覚が鋭敏な人が多く、更にそこへ不注意症状が重なれば、意識は「音」に引っ張られて仕事どころではありません。

音が気になる、と相談しても「気にし過ぎだ」と逆に注意されてしまい、対処してもらえないだけでなく「気にする自分はダメな人間だ」と自己評価まで下げてしまいます。

発達障害の人が音・光・匂い・触覚が気になる、と相談してきたら、それを感じなくて済む環境を一緒に考えてあげてください。

4.出発点は「特性を知る」こと

上述したように、「何に困っているのか」「何が足らないのか」に気が付くことが出発点です。
これは周囲が肩代わりすることは出来ません。本人が自分で自覚するしかありません。

ただ、手伝うことは出来ます。
毎日一緒に働いていると、その人の特徴に気が付くことは多いです。
それをそのまま伝えることで、自覚を促すことが出来ます。

「○○さんて、電話は苦手っぽいけどメール書くのは得意だね」
「リーダーよりもサブリーダーのほうが楽しそうにやってるよね」

のように、第三者目線を伝えましょう。
それがそのまま当てはまらないとしても、何かのヒントとして役に立つはずです。

5.NGな対処法は「人軸」

困った状況を解決しようとすると、どうしても「犯人捜し」「責任者探し」になってしまいます。
○○さんが気をつければいい、○○さんがもっとよく見ていればいい、など。

しかし、発達障害本人に「治せ」といってもまず無理です。そのように体が出来てしまっているのです。
そして一緒に働く人が一から十まで管理したり、一方的に我慢を強いられるのもおかしな話です。

対処法を探す時に、人を軸にしないように気をつけましょう。

6.<おまけ>精神・発達障害者しごとサポーター

厚生労働省が開催している一般の方向けの講座です。
発達障害の人と一緒に働くとき、どんな配慮が必要で、どんな工夫が出来るか、について知ることが出来ます。


発達障害の特徴は小さな程度なら誰でも持っているものが多い、と、冒頭で書かせていただきました。
それは、発達障害の人が働きやすくなることで、自分自身も働きやすくなる可能性がある、ということです。

誰かのために、というよりも、長い目で見て自分たちのために役に立つ、と考えてみるのは如何でしょうか。


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