はじめに
最近、新築アパート投資を検討されている方からのご相談が増えてきました。
相談内容で特に多いのが、
「営業担当者から毎月○万円くらい手元に残りますと言われました。」
「この利回りなら安心して運営できますと言われました。」
というものです。
実際にその収支計画書を見せていただくと、
一見するととても魅力的な数字が並んでいます。
毎月安定した家賃収入が入り、
ローンを返済しても手元にはしっかり利益が残る。
そんな内容になっていることがほとんどです。
しかし、その収支計画を詳しく見ていくと、
「この費用は考慮されていますか?」
と質問したくなるケースが少なくありません。
もちろん、不動産会社が嘘をついているという話ではありません。
実際にその条件で運営できる可能性もあります。
ただ、多くの収支計画では、実際に運営を始めると
必ずと言っていいほど発生する費用が十分に説明されていないことがあります。
最初の数年間は順調でも、築年数が経過した頃から
「思っていたより利益が残らない。」
「毎月の収支がどんどん苦しくなってきた。」
という相談につながるケースも珍しくありません。
今回は、新築アパート投資を検討する際に、
収支計画だけでは見えにくい「見えない費用」について解説します。
① 広告料(AD)は本当に計算されていますか?
まず最初に確認していただきたいのが、広告料(AD)です。
一般の方にはあまり馴染みがない言葉ですが、
賃貸仲介では非常に重要な費用になります。
広告料とは、入居者を決めてくれた仲介会社へ貸主が支払う
成功報酬のようなものです。
例えば、
・家賃8万円
・広告料2ヶ月
という条件で募集した場合、
仲介会社には16万円を支払うことになります。
これは入居者が決まった瞬間に発生する費用です。
特に競合物件が多いエリアでは、広告料を1ヶ月ではなく2ヶ月に設定しないと、仲介会社から積極的に紹介してもらえないケースも珍しくありません。
ところが、販売時の収支計画では、
この広告料が十分に織り込まれていないことがあります。
最近、ご相談を受ける中でよく耳にするのが、
「まだ建物は完成していませんが、すでに2~3部屋決まっています。」
「完成前から順調に契約が入っています。」
という説明です。
これを聞くと、
「人気物件なんだ。」
「自分がオーナーになってからも、すぐ満室になるのでは。」
と期待される方も多いと思います。
もちろん、本当に人気があり、自然に契約が決まっている物件もあります。
しかし一方で、早期に入居者を集めるために募集条件をかなり優遇しているケースもあります。
例えば、
・広告料2ヶ月
・フリーレント1ヶ月
・保証会社の初回保証委託料を貸主負担
といった条件を付けて募集しているケースです。
つまり、完成前に契約が決まっている理由が、「物件が特別人気だから」とは限らず、通常よりも入居者や仲介会社にとって魅力的な条件で募集している結果であることもあります。
ところが、物件を購入する際の収支シミュレーションでは、こうした募集時に必要となる費用が十分に反映されていないケースも見受けられます。
満室時の家賃収入だけを見るのではなく、
「その家賃で入居者を決めるために、どれくらいの募集費用が必要なのか。」
ここまで確認して初めて、実際の収支に近いシミュレーションになると
私は考えています。
② フリーレント(家賃無料期間)も当たり前になってきています
最近では、広告料だけでなく「フリーレント」を
付けて募集するケースも増えています。
フリーレントとは、「最初の1ヶ月は家賃無料です。」
という募集条件です。
例えば家賃8万円の部屋なら、
最初の1ヶ月分で8万円の収入がありません。
つまり、
・広告料16万円
・フリーレント8万円
これだけで24万円ものコストが発生することになります。
しかし、販売時の収支計画では、
家賃8万円が毎月そのまま入る前提になっていることも少なくありません。
実際の募集現場では、想定していた条件のままでは決まらず、
フリーレントを付けてようやく契約になることもあります。
このような実態を知らずに投資を始めると、
③ 保証会社の初回保証料を貸主が負担するケースも増えています
最近では、保証会社の初回保証料を貸主負担にして募集する物件も
増えています。
保証会社とは、家賃滞納時の保証を行う会社ですが、通常は借主が支払うケースもあれば、貸主が負担して募集条件を良くするケースもあります。
例えば、
家賃8万円
初回保証料50%
であれば、約4万円を貸主が負担することになります。
広告料
フリーレント
保証会社費用
これらが重なると、一人入居してもらうために数十万円のコストが
発生することもあります。
ところが、こうした費用まで詳しく説明されることは多くありません。
④ 「退去したらまた家賃が入る」ではありません
投資初心者の方が意外と見落としやすいのが、退去時に発生する費用です。
入居者が退去すると、
・ハウスクリーニング
・クロスの張替え
・床の補修
・設備交換
など、さまざまな費用が発生します。
もちろん借主負担になるものもありますが、
経年劣化による部分はオーナー負担になることも少なくありません。
一般的な単身向けアパートでも、退去1回あたり10万円〜15万円程度の原状回復費用が発生するケースがあります。
さらに、その後に広告料やフリーレントを付けて募集するとなれば、
「退去したらすぐ利益が戻る」
というものではありません。
退去から次の入居までには、想像以上のコストがかかることを
⑤ 新築だから修繕費がかからないと思っていませんか?
「新築だから10年くらいは安心ですよね?」
この質問もよくいただきます。
確かに、新築は中古物件より設備トラブルは少ないでしょう。
しかし、修繕費がゼロというわけではありません。
例えば、
・給湯器
・エアコン
・ウォシュレット
これらは10年〜15年程度で交換時期を迎えます。
1戸だけなら数万円〜十数万円ですが、
8戸、10戸とまとまると、一度に数百万円規模の設備更新費用に
なることもあります。
販売時の収支計画では、こうした将来の設備交換費用が簡略化されていることも多いため、「思っていたよりお金が残らない」という原因になります。
「営業担当者が悪い」のではなく、「収支計画の見方」が大切
ここまで読むと、
「営業担当者は説明してくれなかった。」
と思われる方もいるかもしれません。
しかし、私は営業担当者が悪いと言いたいわけではありません。
販売時には限られた時間の中で説明を行いますし、
全てのリスクを細かく説明することは現実的には難しいでしょう。
また、説明があったとしても、契約や融資の話に集中していると、
細かな運営費用まで記憶に残らないこともあります。
だからこそ、契約前に一度立ち止まり、
「本当にこの収支は現実的なのか?」
という視点で第三者に確認してもらうことが大切だと考えています。
私がセカンドオピニオンをおすすめする理由
最近ご相談いただく方の中には、
「購入前に相談すればよかった…」と話される方も少なくありません。
私は新築アパート投資を否定したいわけではありません。
条件が良く、長期的に安定した運営が期待できる物件も数多くあります。
ただし、その判断は「販売会社が作成した収支計画だけ」で
行うべきではありません。
私のサービスでは、
・周辺募集賃料との比較
・本当にその家賃で募集できるのか
・広告料(AD)やフリーレントを考慮した実質収支
・原状回復費や設備更新費を含めた長期シミュレーション
・将来的な収益性やリスク
などを第三者の立場から客観的に分析しています。
数千万円、場合によっては1億円を超える投資だからこそ、
「契約前に一度確認する」という選択が、
将来の大きな損失を防ぐことにつながるかもしれません。
まとめ
新築アパート投資では、販売時の収支計画だけを見ると、
とても魅力的に感じる物件が多くあります。
しかし、実際の運営では、
・広告料(AD)
・フリーレント
・保証会社費用
・原状回復費
・設備交換費
など、収支計画では見えにくい費用が少しずつ利益を圧迫していきます。
これらを理解した上で投資するのと、知らずに始めるのとでは、
将来の収支に大きな差が生まれます。
次回はさらに踏み込み、
「販売会社が作る収支計画で見落としやすいポイント」
について解説します。
「その家賃設定は本当に現実的なのか?」
「新築プレミアムとは何なのか?」
「なぜ10年後に収支が苦しくなる人がいるのか?」
こうした点について詳しくご紹介します。
新築アパート投資をご検討中の方は、ぜひ次回の記事もご覧ください。