【レコード大賞新人賞歌手の前でかいた恥】

記事
学び
 人は、危機に直面したり、痛みや葛藤を
 感じると、自分を守るための防衛反応が
 働く。これを「防衛機制」というのだが、
 13の「防衛機制」の中から第7回目の
 今日は「打ち消し」の話をしたいと思う。
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 「打ち消し」とは、「過去の思考・行為
 に伴う罪悪感や恥辱の感情を、それとは
 正反対の意味を持つ思考や行動によって
 無かったことにしようとする無意識的な
 心の働き」。浮気をした罪悪感から妻の
 機嫌をとる、などというのは正にそれだ。
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 悪いことをしたり恥をかいたりした後は、
 反省の態度を見せたり、しおらしくして
 みせたり、名誉挽回・汚名返上の機会を
 虎視眈々と窺ったりすることがあるかと
 思えば、「自分は悪くない。恥ずかしい
 ことなどしていない。それより、あっち
 の方こそ○○ではないか」という視点に
 立ち、罪悪感や恥辱の感情を持つまいと
 することもあると思う。私は自己否定を
 避けるため、どちらかと言えば後者の方。
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 二年ほど前、とある有名歌手のライブに
 行った時のこと。毎回、CD購入の特典
 として開催されている握手会に私も参加
 したのだが、握手だけで済ませておけば
 いいものを、ご本人の心に爪痕を残そう
 などと欲をかいたばかりに自信を持って
 目の前で唄った歌声が上ずって、見事に
 スベッた。おかげで、周囲に失笑が湧き、
 ご本人から「一緒に唄ってやろうかしら」
 「寅さんみたい」などと言われる始末で、
 すっかり大恥をかいてしまった。相手の
 心に爪痕どころか自分の心に傷跡を残す
 ような結果にしかならなかったのである。
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 この時、「自分は悪くない。恥ずかしい
 ことなどしていない。それより、あっち
 の方こそ、お客様にタメ口をきいていた
 ではないか」と考えることで、罪悪感や
 恥辱の感情を持つまいとして必死だった
 ことは今でもよく覚えている。それでも、
 「プロの歌手の前で生意気にも唄った」、
 という罪悪感から、大ファンである筈の
 その人の唄を、少なくともその後二カ月
 の間、聴くことができなかった。自分を
 否定しないために罪悪感や恥辱の感情を
 できるだけなかったことにしたい私だが、
 最低限自分の所業にけじめだけはつける。
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 それにしても、自分が小学生だった頃に
 デビューし、レコード大賞最優秀新人賞
 を受賞された憧れの歌手と口をきいたり
 握手できる日がくるとは四十年以上昔の
 当時には思いもよらなかったことである。
 時の流れは、無垢な小学生を白髪交じり
 のおじさんに、手の届かない高嶺の花で
 あった憧れの歌手を近しい存在に変えて
 いた。だから、やはり、人間は長生きを
 したいもの。そのためにも、心の健康を
 守る専門家として、一層の研鑽が必要だ。 
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 駄文の御閲覧、心より感謝申し上げます。
打ち消し2.jpg

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