第31回:未上場/非上場企業の価値評価で割引率をどう考えるか
この度はお読み頂きまして誠に有難うございます。Taskaruです。本ブログではコーポレート・ファイナンスに関わる話題を幅広く取り上げていきたいと考えています。
さて、企業価値評価や理論株価算定のエクセルシートをサービス展開させて頂いていますが、上場企業を前提に作成しているものの、「未上場企業/非上場企業の企業価値評価に応用できないか」というお声も頂いており、大変有難く考えております。
結論から申し上げると、本シートは未上場企業/非上場企業の企業価値評価にも「応用できます」。
また、本ブログを通じて、コーポレート・ファイナンスの授業等で学ぶ「レバード・ベータ」や「アン・レバード・ベータ」がどのように使われているかも理解できるかと思います。
【企業価値評価や株式分析・理論株価の計算でよく使われるDCF(Discount Cash Flow)分析を行えるエクセルシートを出品中です】
順を追って説明して参ります。まず、上記のエクセルシートにおいては、外部データベース等を活用して上場企業の財務数値を取得していますが、そのステップを無視して、お手持ちの財務数値を直接シートに入力し、将来財務予想を行えば、DCF分析に基づく企業価値評価モデル自体は動作します。
しかしながら、財務数値に加えて、ここで重要になるのが割引率の設定です。
ブログ第8回で紹介申し上げた通り、DCF分析は、将来キャッシュフローを「割り引く」手法ですので、「いくらで割り引くか」という割引率が非常に重要になってきます。
一般的には、割引率はWACCが使用されますが(同ブログご参照)、WACCの計算においては、株主資本コストを推定する必要があります。
そして、株主資本コストの計算式は、CAPMという理論に基づけば、以下のようになっております(詳細はブログ第9回に記載しています)
この計算式において、非上場企業の評価をする上で、以下の項目については実は上場企業の評価をする場合と同じ数値が使われます。
・rf: リスクの無い資産の利子率(リスク・フリー・レート)、非上場企業の分析でも上場企業でも、分析対象が日本企業であれば、例えば日本の国債はほぼゼロ金利なので、0%を使うことが多いかと思います。
・E[Rm]-rf:この部分を纏めてマーケット・リスク・プレミアムと呼びますが、私は6%を使用しています。
しかしながら、すぐ求められないのが「β(ベータ)」値になります。というのは、ベータ値というは、株価の動きとベンチマークとなる指数の動きの相関関係を示すものですが、非上場企業には”株価”というものが当然存在しませんので、直接的にベータ値というものも計算ができない、ということになります。
では、どうするか。ここで登場するのが、Re-levered β(リ・レバード・ベータ)という考え方です。