第32回:企業価値評価 ~ 成長率も色々と計測方法があります

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第32回:企業価値評価 ~ 成長率も色々と計測方法があります

この度はお読み頂きまして誠に有難うございます。Taskaruです。本ブログではコーポレート・ファイナンスに関わる話題を幅広く取り上げていきたいと考えています。

さて、以前いくつかのブログで(例えば以下の26回)成長株の企業価値評価について記事を作成して参りましたが、そもそも「成長株」の”成長”とは何なのか。

一番シンプルな答えとしては、前年同期比と売上高や営業利益の成長率が高いということですが、コーポレート・ファイナンスの世界では、単年度の成長率だけではなく、複数年にわたる成長のトレンドも測ろうとする考え方がいくつかあります。

まず、もっともメジャーなものとして、「CAGR(年平均成長率、Compound Average Growth Rate)」というものがあります。

例えば、売上高が1000万円の企業が、5年間で売上高を1500万円まで伸ばしたとします。この状況において、5年で、500万円、つまり50%売上高が伸びたので、1年で10%ずつ伸びている(50%÷5)、というのは必ずしも正しくありません。この時に登場するのが、CAGRという概念になります。

これはポイントとしては、複利計算の考え方を用いた成長率の計測の方法です。複利計算とは、元金により生じた利子を次期の元金に組み入れ、元金だけでなく利子にも次期の利子が付く、ある意味、雪だるま式に増えていくような計算になります。

つまり、上記の事例を用いると、以下の計算式を満たす成長率[X]%を解く計算になります。

1000 x (1+X)^5 = 1500
⇔ X = (1500/1000)^(1/5)-1 = 8.4% と計算されます

一般化した公式を示すと、次のようになります。
CAGR.png
尚、計測期間の期初と期末のデータに依拠していることから、こうしたCAGRを、”End Point” CAGR と呼ばれることもあります。

ここで、注意していただきたいのは、実務では、上記の公式における”年数”のところは、所謂「植木算」的な考えがポイントになります(※植木算:等間隔で木を植えた時の木の本数と間の数、を考える算数の問題)。

実務では以下のような事例のCAGRを求めるといったことが生じます。果たして、この場合の「年数」はいくつになるでしょうか。

事例.png

答えとして、この場合の年数は「4年」になります。というのは、複利計算の考えが背景にあるので、雪だるまが何回転がったかという、”間”の数が重要になり、この場合は、4回転しているというイメージです:①2021→2022、②2022→2023、③2023→2024、④2024→2025、という4回です。

よって、CAGRとしては、(117/100)^(1/4)-1 = 4%、というように計算できます。

但し、計算上の年数は4でも、この場合の成長率については(2021~2025の5年間を指して)「5年CAGR」と呼ぶことがあります。

ここまでで一般的には十分ですが、もう少し深掘りしたい方向けには、複数年にわたる成長率の計測方法のもう一つのアプローチとして、「Log Linear Least Squares Growth Rate」(以下、「Least Squares Growth Rate」と記載します)という計算方法もありますので、追加で紹介したいと思います。これは複利ではなく、いわゆる回帰分析によるトレンドの計測、というイメージです。

直感的なイメージとしては、Least Squares Growth Rateというのは、下記のような形で、データポイントに回帰分析をかけて成長トレンドを測ろうというものになります。
LSCAGR_2.png

まず、「Least Squares Growth Rate」の最大の弱点を紹介しますと、途中でマイナスの数値があると計算ができなくなってしまいます。このことが、一般的にはEnd Point CAGRが広く使われている理由の一つなのではないかと私は考えています。

しかしながら、「Least Squares Growth Rate」が持つメリットとしては、逆にEnd Point CAGRの弱点として、最初と最後の数値による「歪み」を排除できるということが挙げられます。

つまり、End Point CAGRでは、期初の数値が高く、期末の数字が低ければ、その間がどのようになっていたとしても、分母分子の関係から計算される数値が低くなってしまう可能性が出てきます。Least Squares Growth Rateでは、利用可能な全ての数値を使用するため、そうした歪みが多少は軽減されることになります。

以下の事例で考えてみます。
Least Square CAGR.png

途中の2023年に一度上がっているにもかかわらず、2024年に下がってしまっていることから、End Point CAGRでは、そこが反映されず7.7%の成長率と計算されます。しかしながら、Least Squares Growth Rateでは、9.9%となります。

複数年にわたる成長率を考える場合、どちらの計算方法を使うべきか、という点について、一般的にはEnd Point CAGRが使われることが非常に多くスタンダードだと考えています。

但し、ある程度データセットが揃っており(上記では4つで例を挙げましたが、肌感覚としては、6つ以上の観測値があると良いかもしれません)、また、データポイントにおいて「緩やかな」上下があるときは、Least Squares Growth Rateによる成長トレンドの把握を試みても良いかもしれません。
※「緩やかな」と申し上げているのは、仮に相応に大きな上下があるのであれば、むしろ、全ての期間を通してCAGRを計測するのではなく、期間を分けて計測した方がいいかもしれません。

一方で、End Point CAGRが、最初と最後のデータ”だけ”によって左右されてしまう計算方法・計算数値であるということも気を付けておくべきだと考えています。

尚、Least Squares Growth Rateを使用する際は、必ず事前にプロジェクト・チームで合意形成することや、脚注を付けることを忘れないようにすることをおススメします(理由としては、繰り返しになりますが、一般的に”複数年にわたる成長率”と言うとEnd Point CAGRを想起する場合が一般的であるため)。

本日は以上となります。最後までお読みいただき、誠に有難うございました!次回以降もどうぞ宜しくお願い致します。

【ディスクレーマー】
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