陽菜の答え次第で、何かが変わってしまう気がした。
休み時間。「陽菜って好きな人とかいるの?」クラスメイトの声。凪の手が止まる。聞くつもりなんてなかった。でも、耳だけが勝手にその先を待っていた。陽菜は少し笑った。「どうだろうね」「なにそれー」女子たちが笑う。話題はすぐに別の方向へ流れていった。でも、凪の心だけがそこに残る。どうだろうね。肯定でもない。否定でもない。だから余計に気になる。昼休み。放課後。何度もその言葉を思い出してしまう。気にする必要なんてないのに。陽菜に好きな人がいても、関係ないはずなのに。なのに。胸の奥が落ち着かない。帰りのホームルームが終わる。教室には、夕方の光が差し込んでいた。陽菜が鞄を持ち上げる。「帰ろっか」いつもの声。凪は頷く。二人で廊下を歩く。窓の外は、昨日の雨が嘘みたいに晴れていた。しばらく沈黙が続く。凪は何度も迷う。聞く?聞かない?聞いてどうするの?分からない。でも、聞かなかったら、もっと気になる気がした。階段を下りる。昇降口が見えてくる。その時、凪は思わず口にしていた。「ねえ」陽菜が振り向く。「ん?」凪の心臓が跳ねる。やっぱりやめよう。そう思った。でも、もう言葉は止まらなかった。「陽菜って……」喉が少し渇く。言わなきゃよかった。でも、聞きたい。その気持ちの方が、少しだけ強かった。「陽菜って……」もう一度。そして、ようやく続く。「悠真のこと、好きなんだよね?」言った瞬間、胸の奥が、ぎゅっと締めつけられた。陽菜の答えが聞きたい。でも、聞きたくない。そんな矛盾した気持ちが、凪自身にも分からなかった。ただ一つだけ、分かることがあった。陽菜の答え次第で、何かが変わってしまう気がした。
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