絞り込み条件を変更する
検索条件を絞り込む

すべてのカテゴリ

3 件中 1 - 3 件表示
カバー画像

色だけでは、世界観は表現できない

以前、バーで知り合ったオーナーさんから、こんな話を聞きました。あるバンドが大好きなお客様がいて、毎年この時期になると、ひとつのアルバムをイメージしたカクテルやワインを出してほしいと言われるそうです。いつもは、そのアルバムのアートワークや色味からイメージして出していた。でも、今回は少しネタ切れだったそうです。その話を聞いたとき、私はこう思いました。色で表現するのも、もちろん悪くない。でも、世界観を表現するなら、色だけでは少しもったいない。たとえば、アルバムには色以外にも、たくさんの要素があります。アートワーク。音楽全体の特徴。曲順の流れ。アルバム全体の物語。その音楽が生まれた土地。時代背景。温度。感情。そして、その音楽を聴いていた人自身の思い出。本当に面白いのは、そこまで読み取ったうえで、飲み物や体験に変えることだと思っています。たとえば、ジャケットが青いから青いカクテルにする。それもひとつの表現です。でも、その青が「海の青」なのか、「夜明け前の青」なのか、「孤独の青」なのかで、出すものは変わります。海の青なら、塩気や透明感が欲しくなるかもしれない。夜明け前の青なら、冷たさの中に少しだけ甘さを残したくなるかもしれない。孤独の青なら、華やかさよりも、余韻や苦味を残したくなるかもしれない。同じ青でも、意味が変われば体験は変わります。だから私は、世界観を考えるときに「何色か」だけでは終わりたくありません。その色が、何を背負っているのか。その音楽が、どんな温度を持っているのか。その人にとって、その作品がどんな記憶とつながっているのか。そこまで見たときに、はじめて「語りたくなる体験」になる
0
カバー画像

「また来たい」は、満足ではなく“あなたがいい”から生まれる

今は、いいものがたくさんあります。美味しいお店。丁寧な接客。おしゃれな空間。便利なサービス。わかりやすい説明。探せば、いいものは本当にたくさんあります。だからこそ、ただ「良かった」だけでは、記憶に残りにくいことがあります。もちろん、満足は大切です。美味しかった。丁寧だった。気持ちよかった。安心できた。それは、サービスとしてとても大切なことです。でも、似たように良いものがたくさんある中で、お客様がもう一度そこに戻ってくる理由は、満足だけではないのかもしれません。「また来たい」と思うとき、そこにはもう少し個人的な理由があります。あの人の説明がよかった。あの人の選び方が好きだった。あの人の距離感が心地よかった。あの人がいるから、もう一度行きたい。つまり、サービスそのものだけではなく、“あなたがいい”で選ばれることがある。これは、今の時代のしんどさでもあり、嬉しさでもあると思います。しんどいのは、ただ良いものを用意するだけでは選ばれにくくなっているからです。価格、便利さ、品質、見た目。どれも比べられる。少し検索すれば、似たようなものはたくさん出てきます。だから、売ることはとても難しくなった。でもその一方で、自分の人生やこだわりや感性が、そのまま価値になりやすい時代にもなったのだと思います。「この人が選んでくれたから」「この人の言葉だから」「この人のこだわりが好きだから」「この人から受けたいから」そうやって、人で選ばれることが増えている。それは、サービス提供者にとって、とても大きなモチベーションになります。私にも、忘れられない言葉があります。退職の挨拶をしたとき、あるお客様に言われました
0
カバー画像

なぜ「なんか良い」では記憶に残らないのか

「なんか良いですね」そう言ってもらえることは、もちろん嬉しい。でも、少しだけもったいない言葉でもあると思っています。なぜなら「なんか良い」は、まだ理由になっていないからです。きれいだった。おしゃれだった。雰囲気がよかった。おいしかった。それはたしかに大切です。でも、それだけだと時間が経つにつれて、他の体験の中に埋もれていきます。なぜなら、似たようなサービスやお店は、場所を変えればたくさんあるからです。きれい。おしゃれ。おいしい。丁寧。それだけでは、他の体験との違いが残りにくい。人があとから誰かに話したくなる体験には、もう少し深い理由があります。なぜそれだったのか。そこにどんな背景があったのか。自分の記憶や感情と、どうつながったのか。つまり、記憶に残る体験には「文脈」と「意味」があります。たとえば、あるアルバム(音楽)をイメージしたカクテルを作るとします。ジャケットの色に合わせて、青いカクテルを出す。暗い曲調だから、重めのワインを出す。それも悪くありません。でも、そこで終わると「見た目の翻訳」で止まってしまう。本当に面白いのは、そのアルバムが持っている時代、土地、温度、感情、物語、そしてその音楽にまつわる記憶まで読み取ることです。そのうえで、この曲の孤独感なら、少し冷たい温度で出したい。このアルバムの余韻なら、甘さではなく苦味を残したい。この時代の空気なら、あえて古典的なグラスで出したい。そんなふうに考えると、飲み物はただの飲み物ではなくなります。「なぜこれなのか」が生まれる。そして、人はその理由を語りたくなる。私は、体験づくりで大切なのは、派手な演出を増やすことではないと思って
0
3 件中 1 - 3