「また来たい」は、満足ではなく“あなたがいい”から生まれる

「また来たい」は、満足ではなく“あなたがいい”から生まれる

記事
ビジネス・マーケティング
今は、いいものがたくさんあります。

美味しいお店。
丁寧な接客。
おしゃれな空間。
便利なサービス。
わかりやすい説明。

探せば、いいものは本当にたくさんあります。

だからこそ、ただ「良かった」だけでは、記憶に残りにくいことがあります。

もちろん、満足は大切です。

美味しかった。
丁寧だった。
気持ちよかった。
安心できた。

それは、サービスとしてとても大切なことです。

でも、似たように良いものがたくさんある中で、お客様がもう一度そこに戻ってくる理由は、満足だけではないのかもしれません。

「また来たい」と思うとき、そこにはもう少し個人的な理由があります。

あの人の説明がよかった。
あの人の選び方が好きだった。
あの人の距離感が心地よかった。
あの人がいるから、もう一度行きたい。

つまり、サービスそのものだけではなく、
“あなたがいい”
で選ばれることがある。

これは、今の時代のしんどさでもあり、嬉しさでもあると思います。

しんどいのは、ただ良いものを用意するだけでは選ばれにくくなっているからです。

価格、便利さ、品質、見た目。
どれも比べられる。

少し検索すれば、似たようなものはたくさん出てきます。

だから、売ることはとても難しくなった。

でもその一方で、自分の人生やこだわりや感性が、そのまま価値になりやすい時代にもなったのだと思います。

「この人が選んでくれたから」
「この人の言葉だから」
「この人のこだわりが好きだから」
「この人から受けたいから」

そうやって、人で選ばれることが増えている。

それは、サービス提供者にとって、とても大きなモチベーションになります。

私にも、忘れられない言葉があります。

退職の挨拶をしたとき、あるお客様に言われました。

「あなたのペアリングのために来ているのに、ここに来る理由がなくなった」

そして、最後の一杯を出したときには、

「これがかさらペアリングの最後の一杯と思うと名残惜しいなあ」

と言ってくださいました。

その言葉は、今でもかなり残っています。

もちろん、料理も空間もお店のものです。
私ひとりで作っていた体験ではありません。

でも、その中で私が考えたペアリングや、言葉や、出し方を楽しみにしてくれていた人がいた。

そのとき、少しだけ思いました。

ああ、捨てたもんじゃないな、と。

「いいサービスだった」ではなく、
「あなたのペアリングがよかった」
と言ってもらえたこと。

それは、ただ嬉しいだけではなく、
自分が大切にしてきたものを、ちゃんと受け取ってもらえた感覚でした。

だから私は、「あなたがいい」と言われたときは、素直に受け取っていいと思っています。

謙遜したくなることもあります。

たまたまです。
まだまだです。
自分なんかよりすごい人はいます。

そう言いたくなることもある。

でも、お客様が「あなたがいい」と言ってくれたなら、それはもう、その人の中で価値として生まれています。

過度に謙遜しすぎると、選んでくれた人の感性まで否定してしまうことがある。

だから、受け取っていい。

その人は、条件だけではなく、あなたの中にある何かを選んでくれたのだと思います。

「また来たい」は、満足だけで生まれるものではありません。

美味しかった。
丁寧だった。
便利だった。

それだけでも十分すごいことです。

でも、もう一度行きたいと思うとき、そこにはきっと、もう少し人間的な理由があります。

あの人にまた会いたい。
あの人の選び方をまた体験したい。
あの人の言葉で、もう一度世界を見てみたい。

そんなふうに思ってもらえたとき、サービスはただの提供物ではなく、その人の記憶に残る体験になります。

だから、サービス体験を考えるとき、私は「満足」だけで終わらせたくありません。

どうすれば、その人らしさが届くのか。
どうすれば、お客様の中に記憶として残るのか。
どうすれば、「またあの人にお願いしたい」と思ってもらえるのか。

そこまで考えて、体験を作りたい。

いいものが溢れている時代だからこそ、
“あなたがいい”で選ばれることには価値があります。

そして、そう選ばれたときは、ちゃんと受け取っていい。

その中に、あなたのサービスの核があるのかもしれません。

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