絞り込み条件を変更する
検索条件を絞り込む

すべてのカテゴリ

6 件中 1 - 6 件表示
カバー画像

第7話 「離れたはずなのに、離れられない」

教室の空気が、少し変わった。目に見えるわけじゃない。でも、確実に分かる。澪との距離。あの会話のあと、明らかに一歩引かれた。話しかけてこない。目も、あまり合わない。(そりゃそうだよな)自分で壊したんだから。でも。(なんでこんなにきついんだよ)たったそれだけの距離なのに。昨日まで普通にあったものが、急に消えたみたいで。教室にいるのに、やけに遠く感じる。昼休み。澪は友達と話していた。笑ってる。普通に。(あの顔)第3話で見た笑顔。あれが、今は自分に向いてない。それだけで、胸の奥が締め付けられる。(ダサいな)そう思いながらも、目が離せない。視線が合う。一瞬。でも。すぐ逸らされた。(…そっちがそれやるのかよ)昨日までの自分と、同じ。距離を取る側。その立場が逆になっただけで、こんなに苦しいのか。放課後。帰ろうとしたとき。「…待って」声。止まる。振り向く。澪。少しだけ、息が上がってる。「…何」できるだけ平静を装う。でも、内心はぐちゃぐちゃだ。「…さっきの」言葉が止まる。(来るのか)本音。逃げたやつ。「…やっぱりいい」澪が目を逸らす。一歩、距離ができる。(待てよ)体が勝手に動いた。「いや、よくないだろ」声が出る。自分でも驚くくらい、強めの言い方だった。澪がこっちを見る。少しだけ驚いた顔。でも。逃したくなかった。「言いたいことあるなら、言えよ」もう引きたくなかった。ここで終わるのは、無理だった。沈黙。少しの間のあと。「…そっちが先でしょ」返ってきた言葉。真っ直ぐ。逃げてない。(…ずるいな)「…言えよ」もう一度。今度は少しだけ弱く。澪が、少しだけ笑う。でもその笑いは、前とは違う。少しだけ、寂しそうで
0
カバー画像

第7話「言葉にできなかった気持ち」

文化祭の片付けが進む教室。午後の光が窓から差し込み、微かに埃混じりの空気が揺れている。昨日、ついに気持ちを伝えられたはずなのに、胸の奥にはまだ言葉にできない感情が残っている。(どうして素直に言えないんだろう)隣にいるあの人は、普通に作業しているだけ。視線は合わせるけれど、心を完全には開けない。「これ、どこに置く?」短い声に反応して手を動かす。でも、心はまだドキドキしている。片付けの最中、何度も手が触れそうになる。そのたびに、胸が高鳴る。(これ以上近づいたら、どうなるんだろう)言葉にできないまま、微妙な距離を保ちながら作業は続く。少しだけ目が合う。少しだけ笑う。その一瞬で、心は揺れ動く。(昨日よりも、もっと意識してしまう)会話は普通でも、互いの距離や仕草で、感情が伝わる。本当は、言葉にしてほしい。でも、それを言えない。気持ちは膨らむ。胸の奥で大きくなる。片付けが終わりに近づくころ、二人の間には言葉にならない空気が漂う。それでも、少しずつ、心はお互いを意識している。文化祭の喧騒の中、言葉にできない気持ちは、静かに、でも確実に二人を繋げていく。続く。
0
カバー画像

第7話 「離れたはずなのに、離れられない」

教室の空気が、少し変わった。目に見えるわけじゃない。でも、確実に分かる。澪との距離。あの会話のあと、明らかに一歩引かれた。話しかけてこない。目も、あまり合わない。(そりゃそうだよな)自分で壊したんだから。でも。(なんでこんなにきついんだよ)たったそれだけの距離なのに。昨日まで普通にあったものが、急に消えたみたいで。教室にいるのに、やけに遠く感じる。昼休み。澪は友達と話していた。笑ってる。普通に。(あの顔)第3話で見た笑顔。あれが、今は自分に向いてない。それだけで、胸の奥が締め付けられる。(ダサいな)そう思いながらも、目が離せない。視線が合う。一瞬。でも。すぐ逸らされた。(…そっちがそれやるのかよ)昨日までの自分と、同じ。距離を取る側。その立場が逆になっただけで、こんなに苦しいのか。放課後。帰ろうとしたとき。「…待って」声。止まる。振り向く。澪。少しだけ、息が上がってる。「…何」できるだけ平静を装う。でも、内心はぐちゃぐちゃだ。「…さっきの」言葉が止まる。(来るのか)本音。逃げたやつ。「…やっぱりいい」澪が目を逸らす。一歩、距離ができる。(待てよ)体が勝手に動いた。「いや、よくないだろ」声が出る。自分でも驚くくらい、強めの言い方だった。澪がこっちを見る。少しだけ驚いた顔。でも。逃したくなかった。「言いたいことあるなら、言えよ」もう引きたくなかった。ここで終わるのは、無理だった。沈黙。少しの間のあと。「…そっちが先でしょ」返ってきた言葉。真っ直ぐ。逃げてない。(…ずるいな)「…言えよ」もう一度。今度は少しだけ弱く。澪が、少しだけ笑う。でもその笑いは、前とは違う。少しだけ、寂しそうで
0
カバー画像

第7話:距離を取るほど、引き寄せられてしまう

距離を取ると決めた。あの日、はっきりと。それから私は、意識的に蒼さんとの接触を減らした。必要以上に話さない。目も合わせすぎない。仕事のやり取りも、できるだけ簡潔に。「…澪さん、この件ですが」「はい、こちらで対応しておきます」会話は、それだけで終わる。以前なら、もう少し言葉が続いていた。少しだけ空気があった。でも今は、完全に“業務”だけ。(……これでいい)そう自分に言い聞かせる。でも。なぜか、落ち着かない。仕事はうまくいっている。評価も変わらない。むしろ、以前よりスムーズかもしれない。なのに。(……なんでこんなに気になるの)気づけば、無意識に探してしまう。オフィスの中で、蒼さんの姿を。どこにいるのか。誰と話しているのか。そんなこと、どうでもいいはずなのに。「……はぁ」小さく息が漏れる。その時だった。「最近、距離ありますね」背後から、声が落ちた。心臓が、一瞬で跳ねる。振り返る。蒼さんが、そこにいた。「…そうですか?」できるだけ平静を装う。「はい。以前より」視線が、まっすぐこちらを捉えている。逃げ場がない。「気のせいじゃないですか」そう返す。でも、声が少しだけ硬い。蒼さんは、少しだけ間を置いた。「…何かありましたか?」その一言で、一気に心が揺れる。(……やめて)優しくしないで。踏み込んでこないで。「何もないです」即答する。「そうですか」それ以上は、何も言わなかった。でも。その沈黙が、逆に重かった。(……なんで)なんで、そんな顔するの。ほんの少しだけ。ほんの少しだけ、寂しそうに見えた。その日の帰り道。私はずっと、その表情を思い出していた。(……違う)距離を取るって決めた。それが正しい。
0
カバー画像

第7話:距離を取るほど、引き寄せられてしまう

距離を取ると決めた。あの日、はっきりと。それから私は、意識的に蒼さんとの接触を減らした。必要以上に話さない。目も合わせすぎない。仕事のやり取りも、できるだけ簡潔に。「…澪さん、この件ですが」「はい、こちらで対応しておきます」会話は、それだけで終わる。以前なら、もう少し言葉が続いていた。少しだけ空気があった。でも今は、完全に“業務”だけ。(……これでいい)そう自分に言い聞かせる。でも。なぜか、落ち着かない。仕事はうまくいっている。評価も変わらない。むしろ、以前よりスムーズかもしれない。なのに。(……なんでこんなに気になるの)気づけば、無意識に探してしまう。オフィスの中で、蒼さんの姿を。どこにいるのか。誰と話しているのか。そんなこと、どうでもいいはずなのに。「……はぁ」小さく息が漏れる。その時だった。「最近、距離ありますね」背後から、声が落ちた。心臓が、一瞬で跳ねる。振り返る。蒼さんが、そこにいた。「…そうですか?」できるだけ平静を装う。「はい。以前より」視線が、まっすぐこちらを捉えている。逃げ場がない。「気のせいじゃないですか」そう返す。でも、声が少しだけ硬い。蒼さんは、少しだけ間を置いた。「…何かありましたか?」その一言で、一気に心が揺れる。(……やめて)優しくしないで。踏み込んでこないで。「何もないです」即答する。「そうですか」それ以上は、何も言わなかった。でも。その沈黙が、逆に重かった。(……なんで)なんで、そんな顔するの。ほんの少しだけ。ほんの少しだけ、寂しそうに見えた。その日の帰り道。私はずっと、その表情を思い出していた。(……違う)距離を取るって決めた。それが正しい。
0
カバー画像

第7話「言葉にできなかった気持ち」

文化祭の片付けが進む教室。午後の光が窓から差し込み、微かに埃混じりの空気が揺れている。昨日、ついに気持ちを伝えられたはずなのに、胸の奥にはまだ言葉にできない感情が残っている。(どうして素直に言えないんだろう)隣にいるあの人は、普通に作業しているだけ。視線は合わせるけれど、心を完全には開けない。「これ、どこに置く?」短い声に反応して手を動かす。でも、心はまだドキドキしている。片付けの最中、何度も手が触れそうになる。そのたびに、胸が高鳴る。(これ以上近づいたら、どうなるんだろう)言葉にできないまま、微妙な距離を保ちながら作業は続く。少しだけ目が合う。少しだけ笑う。その一瞬で、心は揺れ動く。(昨日よりも、もっと意識してしまう)会話は普通でも、互いの距離や仕草で、感情が伝わる。本当は、言葉にしてほしい。でも、それを言えない。気持ちは膨らむ。胸の奥で大きくなる。片付けが終わりに近づくころ、二人の間には言葉にならない空気が漂う。それでも、少しずつ、心はお互いを意識している。文化祭の喧騒の中、言葉にできない気持ちは、静かに、でも確実に二人を繋げていく。続く。
0
6 件中 1 - 6